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眼炎く倭(まかかやく やまと)  作者: 鈴鹿
序 ―ことのはじめ―
3/67

3.月が満ちる

 掖邪狗の帰国から三年。

 東国の狗奴国くなこくとの戦の準備や魏への朝貢などであわただしく時が過ぎ、そして、その日はやってきた。

 月満ちた夜、台与はその身から流した血で穢れを祓い、少女から女性へ――そして神の妻となる資格を持つ者へと変貌を遂げた。驚愕の連続に、台与は身も心も疲れ果ててしまっていた。

(こんなことなら……おとなになんてなりたくなかった)

 今一番思いだすと辛いのは、三年前の掖邪狗や菜於との記憶だった。大人とはどんなものか、何も知らず、ただ無邪気に生きているだけでよかったあの頃。

 ―――今は違う。何もかも。

(もう掖邪狗とも会えない。ムラの外に出ることは叶わない。一生をここで神に仕えることで終える、それがわたしの使命だから)

「わたしは……あの頃とは違う」

 言い聞かせるように、台与は低く呟いた。

 そう――違うのだ、たとえ時を遡り、あの頃に戻れたとしても。

「何も知らない子供とは違う……知っているもの、自分のことくらい」

 台与にはうすうす危惧していることがあった。年月を経るにつれ、それは確信を伴なってどんどんと大きくなってきている。けれど、決して誰にも言うことはできない。言う事は許されない、大きな秘密。

 それは、あまりに恐ろしい、忌むべき真実。

 忌篭りで入れられた藁の敷かれた小屋で小さくなって、台与は心を抉るように考え続けた。そして、重い決心をした。

(死ぬまで……わたしがお墓に入るまで、誰にも言わない。女王日巫女のあとを継ぐ可能性が、わたしにほんの少しでもある限り……)


それが果たして正しい選択なのか、確信は持てなかったけれど――。

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