19 雪の女王 五番めのお話 小さな山賊の娘
「だからおまえには…」
あたしは山賊、山賊の娘。
奪って生きる、悪党暮らし。
だからおまえにはついていけない。
お日さま輝く光の下で
これまで生きてきたおまえ、
そんなおまえにはついていけない。
大事な友だち探しているって、
きれいな瞳で話してくれた、
そんなおまえにはついていけない。
けれど、代わりにおまえのマフを
もらっておくよ、あたしのものだ。
おまえのマフはあたしのものだ。
だからおまえもあたしのものだ。
勝手に死んでしまうなよ。
遠くはなれてしまっても、
おまえが死ぬのはゆるさない。
生きてカイちゃんに会うんだ。
そして幸せに暮らすんだ。
雪の女王が何だってんだ。
大切ならば奪ってしまえ。
そしたら少しはあたしみたいに、
強く大きくなれるってものさ。
『まっ黒な目をしていましたが、どことなく、悲しいようすが見うけられました。』という一文から、山賊の娘の想いを想像して書いてみました。書き終わって気づいたのですが、この詩は割と好きです。
物語の内容に関して。
前話で王女たちに馬車やお金をもらって旅立ったゲルダですが、今回の話の最初で、山賊たちに襲われ、先乗りや御者や下僕をうち殺されてしまいます。童話なのに、普通に殺すとかいう表現が出てきてビックリしました。もっと追い払う、とかそういうマイルドな表現になるのかなと思っていただけに、これは衝撃的でした。