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アンデルセンの童話  作者: 半信半疑
18/21

18 雪の女王 四番めのお話 王子と王女

「御殿探索」


 森のカラスのつたない言葉。

 -ひとりぽっちで、どこへ行くの。

 ひとりぽっちで、ひとりぽっちで。

 エコーのように響く言葉。

 -カイちゃんを見かけませんでしたか。

 -あれかもしれない。あれかもしれない。

 

   一人の王女さまがいる。それはそれはりこうな人。

   世界中のあらゆる新聞を読んで、それをきれいに忘れてしまうほどの、

   りこうな人。 

   -『どうして、わたしは結婚してはいけないの』

   そんな歌を口ずさむ。

   -いちばんじょうずに話のできた人を、おむこさんにえらぶ、

   新聞にそのような文言。


   だけど、たくさんの人が王女さまのところに行ったけど、


   御殿の門をくぐって、

   銀色の服を着た番兵を見たり、

   階段をのぼって、

   金ピカのお役人を見たり、

   キラキラした広間へ通されたりすると、

   皆は、ぼうっとなってしまう。


   誰もかれもが、

   まるで、かぎタバコをおなかにのみこんだみたいに、

   ぼんやりしてしまう。


   三日目のこと。

   小さな男の子が、馬にも馬車にも乗らないで、

   楽しそうに、御殿に向かって歩いてきた。

   目は輝き、髪の毛は長く、きれいだった。

   着物はみすぼらしいものだったけど。

   背中に小さいランドセルをしょって。


   御殿の門をくぐって、

   銀色の服を着た番兵を見ても、

   階段をのぼって、

   金ピカのお役人にであっても、

   男の子はびくともしなかった。


   -『階段の上に立っているのは、たいくつでしょう。ぼくは奥へ行きますよ』


   広間には、こうこうと輝く明かり。

   そして、顧問官や大臣たち。

   はだしで、金のうつわを持って…。

   それはとてもおごそかな気持ちにさせて…。


   男の靴が鳴る。

   ものすごく高く鳴る。

   男の子はちっともこわがらなかった。


   それから、

   つむぎ車ほどもある大きなしんじゅの上に

   腰かけた王女さまとお話。


   小さな男の子は、

   王女さまのかしこさが知りたかったみたいだけど、

   その子は王女さまを好きになり、

   王女さまもその子が好きになった。


 -ねえ、あたしを、御殿へ連れてってくれない!

 ゲルダは中に入り、男の子のもとを目指した。

 -あたしのすぐあとから、なにかが、来るような気がするわ。

 いいなづけのカラスは言う。

 -あれは、ただの夢なんですよ!

 

 それからそれから。

 王子と王女、二人の寝室まで行って、

 確かめたのだけど、男の子はカイちゃんじゃなかった。

 カイちゃんじゃなかった。

 泣きじゃくったばかりに、おきだした王女さまに、すっかり話す。

 -まあ、かわいそうに!

 

 王女さまたちと一緒にすごした後、

 馬車をもらって、

 また、カイちゃんを探しに行った。


 本当に、つらいつらいお別れだった。

 馬車は、いつまでもいつまでも、明るいお日さまみたいに、

 キラキラしていた。

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