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刃‐ブレイド 悠久ニ果テヌ花  作者: 秋久 麻衣
「介在と裂傷」
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負債の在処

あらすじ



 たった一つの熱を取り戻す為に、《アマデウス》は奔走した。

 少女の必死な手は、果たして届いたのだろうか。

 Ⅲ


 何処で間違えたのか。そう問われれば答えは簡単だ。ぽっかりと空いた空洞……正しくは操縦席に乗り込んでしまった所だろう。だが、どうすれば良かったのか。そう問われると答えに窮する。

 仕方のない事だろう、誰が自分の家にそんな物が降ってくると予想できるのか。誰だってそうだ。自分の家に居る時が、一番安全で安心できる筈なのに。

 それは理屈ではなく本能だ。家が安全などという論理は感覚的な物でしかなく、本質的に見れば安全であるはずの家で死ぬことだって珍しくない。そう考えれば、自分と母の間にあった生と死の境界線は、そこにあったのだろうか。

 地球に住むという事は自然と共生するという事だ。突然の雨に肩を落とし、不意に訪れる地震にひやりとさせられる。自分の住んでいた地域は竜巻が来ないだけ安全ではあったが、そんな不確定さがどうにも理解できなかった。宇宙居住区、つまりはセクションに移住してしまえば、通り雨に泣かされる心配はない。四季を再現したり、ここで言う不確定さを再現したセクションもあるが、そうでない所だってある。そう言うと、母は困ったように笑っていた気がする。

 そう、母だ。何もかも生々しく鮮明に覚えているのに、何故か母の顔だけ曖昧なのは何故だろう。どんな人だったのだろうか、それすらも朧気だ。

 仕方のない事だろう。こんなにも早く、あっさりと、顧みる間もなく死んでしまうなんて。自分はまだ十五歳の子どもでしかなく、人の死すら真っ当に理解していなかった。

 だから仕方のない、どうにもならない事だった。それが偽りでも、そう思い込めば。その内の幾らかは救われると信じて。

「開校記念日なのに、何で学校に行くんだろう。普通は休むと思うんだけど」

 玄関口で困ったように母は笑い、そういう行事だからしょうがないでしょと言う。言っていたような気がする。

「まあいいけど。行ってきます」

 履き慣れた靴をつっかけて、鞄を肩に掛ける。学校に行くと言っても、別に勉強する為ではない。今日は開校記念日の祝典、とどのつまりパーティーだ。

 そんないつもと変わらぬ日々の一歩を踏みだそうとした瞬間だった。

 聞き慣れない炸裂音が、この時には祝典の始まりを告げる空砲に聞こえた。

「リオ」

 母の声だ。背中を突き飛ばされ、つんのめるようにして庭を転がる。抗議の声を上げる間もなく、聞いたことのないような轟音が背後から身体を蹂躙した。それは初めて聞いた悪魔の声で、これから先ずっと聞くことになる音……戦場の音だ。

 倒れている身を起こし、ふらつきながら振り返る。そう、悪魔の声が聞こえたのなら、そこに広がるのは地獄でしかない。

 それは、人だった。巨大な人が、母と自分の家をソファ代わりにして深々と座り込んでいる。濃淡入り交じった灰色の巨人が。

 if……イヴァルヴ・フレームと呼ばれる全長八メートルの人型搭乗兵器。戦場では珍しくもない、ただの兵器が。それが、何故自分の家に座り込んでいるのか。

 そいつがだらしなく脚を下ろしている所に、母の姿はあった。あった筈だ。震えの止まらない足を動かして、一歩近付いていく。いつもと変わらぬ日々の一歩は、もうそこにはなかった。

 母の姿が網膜に焼き付いていく。右手を突き出して、力なく開かれた両の目がこちらを見つめていた。

 多分、ここだろう。リオ・バネットという人間の頭が、許容量を超えて焼き切れていったのは。

 鞄を投げ捨て、母に駆け寄っていく。助けないと、このままでは死んでしまう。死んでいることになってしまう。ifの右脚は重く、押し退けようとぶつかった所でびくともしない。

 視線が次に捉えたのは、ぽっかりと空いた空洞、そのifの操縦席だった。誰も乗ってはいない。ならば、自分が乗って助けないと、この右脚を退けてやれば助かる筈だ。

 家の残骸とifの装甲を辿りながら、その空洞へ這い上がっていった。自分の呼吸音がやけにうるさい。

 そして、ここで間違えた。その空洞に、操縦席に、自分は入ってしまった。シートに腰掛けると、自動的にハッチが閉じていく。様々な表示が灯っては消えていくが、関係ない。操縦桿だろう左右のグリップを握り締める。右脚を退かさないと、母が死んでしまう。このままでは、死んでいることになってしまう。

 操縦方法など、知る由も無かった。そもそもここに座っているのは、頭のおかしくなったただの十五歳の子どもだ。だというのに、ifは動いた。

 右脚をゆっくりと持ち上げ、横にずらしていく。何故操縦出来ているか、何故思い通りに動いているかなどを考える余裕はなかった。

 BFS……バイオ・フィードバック・システムと呼ばれる操縦方法を知ったのは、このずっと先の事だ。BFSを用いれば、知識も訓練も必要とせずにifを操縦できる。自分の頭で思ったように動いてくれるそのシステムは、こうして最悪な持ち主に渡ってしまった。

 右脚を退かして、母の安否を確かめる。もう脚は退いたのだから、安心してそこから逃げてくれていい。もう脚は退いたのだから、これで全て元通りになってくれる。

 そんな事を本気で信じていなければ、自分は一歩も動けなかったのだろう。母の安否など、一目見れば分かる筈だろうに。

 右脚の下には、母だった何かと、最初に見えていた首と右手しかなかった。それしかもう残されていなかった。

 光学処理されて映るその景色は、何処か現実離れしているようにも見える。気付けば止まっていた身体の震えが、全ての終わりを告げていた。

 操縦席に直接響いた警告音も、鈍化した頭にはただの嘲笑にしか聞こえない。それらは他人事のように過ぎていく。しかし、次に映し出されたその姿だけは違った。

 メインウインドウに映し出されたその姿もやはり、巨大な人だった。ifがアーケードを跳ね、こちらに近付いている。ターゲットボックスが起動し、if‐01《カムラッド》と表示された。横に付随する距離計が数字を刻んでいく。

 その姿は、鈍化した頭でも変わりはしない。悪魔がまた、地獄を振り撒きにやってきた。いや、違う。誰も悪くないなんて話ある訳がない。こいつが、この地獄を運んできたのだ。

 警告音が鳴り響き、嘲笑の渦が脳裏を焼いていく。自分の呼吸音が聞こえなくなり、手が真っ白になるまでグリップを握り締めた。痛みなど感じない、震えもしない、泣きも笑いもしない。焦土と化した頭の中には、無駄な物など一切残されていなかった。

 この日がリオ・バネットにとっても、その街にとっても一種の節目となった。それは双方にとって差異のない認識を持って記憶されているだろう。そう、つまり。

 悪魔と悪魔が、平和に解き放たれた瞬間だった。







 浮上していく。粉砕されていた意識が一瞬で冷え固まり、息を吐き出しながらリオは目を見開いた。いつもと変わらぬ悪夢だったが、何処か鮮明でしこりを残してくる。とは言え、もう慣れてしまった事に変わりはない。乱れていた心拍を一呼吸で整え、天井をぼんやりと眺めながら現状を顧みる。

 この天井も見慣れていた。ベッドを囲うカーテンで四角く切り取られた白い天井、ここは《アマデウス》の医務室だろう。脈打つような頭痛が、曖昧な脳に確固たる生を刻んでいた。

 if部隊と交戦し、乗機である《オルダール》を撃破されて宇宙を漂流していた。生命維持装置のバッテリーが尽きて、そこで全て終わった物だと思っていたが。

 結果として、自分はこうして生きている。それこそ夢のような話だが、目の前に広がる世界は紛れもなく現実だった。天井も、頭痛も、悪夢も、いつもと変わらない。

 そう、変わらなかった。いつものように死を振り撒き、我が物顔で生きている。リオ・バネットという名の悪魔は、またこうして死にそびれた訳だ。あの時十五歳だったという事は、もう二年は経つのか。

 頭を振って意識を切り替える。本音と向き合うべきではない。どうせ答えなど出はしないのだから。

「ふふん。死にそびれた人ってそういう顔するんだよね」

 天井を遮るようにアストラルの笑顔が目の前に現れ、びくりと身体が硬直する。いつの間にか近付いていたアストラルが、ベッドの頭側から覗き込んでいた。人懐っこい笑顔は健在だが、顔色はあまり良くないように見える。

「あー面白かった。びくっとしてたもんねえ」

 アストラルは笑いながらベッドの横に回り、腰に手を当ててこちらを見据えていた。患者衣を身に着け、お世辞にも健康そうには見えない。それでも快活に見えるのは、アストラル自身の持つ明るさの賜物だろう。

 しかし、言葉とは裏腹に目はまったく笑っていない。身体を起こし、ベッド横に腰掛ける。これまでずっと眠っていた為か、体調自体は悪くないように感じた。それよりも、こうしてアストラルに詰問の目を向けられている方が堪える。

「ああ、ごめんごめん。ちょっと昔を思い出してさ。責めてる訳じゃないよ? 彼もそういう顔してたんだよね。目が醒めた後、決まってそういう顔を。‘ああ、やっぱり今回も生きてるんだなあ’って顔」

 アストラルが口にする‘彼’という言葉は、特別な温度を持って発せられる。故意ではないにしろ、アストラルを含む多数の民間人を戦闘に巻き込んだ彼。彼の振り撒いた死の災禍から、アストラルのみが逃れた。他でもない彼に助けられて。

 今は亡き彼という存在は、アストラルにとっては複数の意味を持つ。加害者でもあり恩人でもあり、師でもあり同胞でもある。そして多分きっと、それら全てを引っくるめて大切な人だったのだろう。

「申し訳ないです、僕は」

 負い目を感じて謝ろうとするが、そこから先の言葉は浮かばなかった。僕は、何だろうか。死にそびれたのは事実であり、罪に対して何も報えてないことに変わりはないのだ。

「だから責めてないってば。でも、ただ、そうだなあ」

 そう言ってアストラルは隣に腰掛ける。相も変わらず全てを見透かしているような目が、こちらをじっと見据える。

「私達みたいなのは、死ななきゃ人間になれないのかな」

 責めている訳でも、言い聞かせる訳でもない。ただ分からないといった様子のアストラルに、返す言葉が無かった。

「個人的には、違うって思いたいんだけどね。おいしいご飯を食べて、ゆっくり寝て、特別な人と過ごしたりとかさ。まあ、結局私が居ても居なくても彼はそーいう顔してたんだろうし。何が正しいのか分からないけどね。一体どうやったら彼は人間になれたのかなあって。リオ君見てると思うんだよね」

 隣に座るアストラルの目が伏せられ、その温度がぐっと下がった気がした。患者衣からは包帯や止血帯が見え隠れし、肌は色白を通り越して青白くなっている。青く着色された人工血液を使っているとはいえ、この色は異常だ。

「ま、言ってもしょうがないんだけどね。変な話になっちゃった」

 飛び跳ねるようにベッドから降り、アストラルはにっこりと笑ってみせた。僕とアストラル、そして‘彼’との違いは、現状を肯定するか否かにあるのだろう。アストラルはしょうがないと笑いながら肯定し、僕は泣きも笑いもしないのに否定している。そして恐らく、‘彼’も否定していたのだろう。他者も自分自身も許せないというのに、一体何を肯定出来るというのか。

「ま、それはそれとして。身体は大丈夫? 意識を失ってから直ぐにイリアさんが発見したから、脳もダメージ少ないと思うんだけど。どんな感じ?」

 イリアに助けられたらしいが、その時の記憶はない。そういえば、今何がどうなっているのか、現状が把握出来ていない事に気付いた。敵の包囲網を、《アマデウス》は突破出来たのか。

「体調は悪くないです。今《アマデウス》はどうなっているんですか?」

 体調に問題はなく、意識もはっきりしている。ただ時間感覚や現状把握は曖昧であり、自分がどれぐらい眠っていたのかも分からなかった。

「えっと、もう脅威から抜け出して通常待機状態だよ。イリアさんも含めてみんなゆっくり休んでる。リオ君捜索の為に総出で動いたからさ。イリアさんだけじゃないよ、操舵士のリュウキさんもifに乗って出てたし、トワちゃんも出たし。私も出ちゃったりして。確かリオ君が敵部隊と交戦して撃破されたのが六時間前だから、捜索時間やら何やら含めて概算五時間は寝てたって感じかなあ。まあ、何事も無くて良かったよ、本当」

 あの状況下から、結果として捜索、救出までやってのけたイリアの采配はさすがとしか言いようが無い。それでも相当な迷惑が掛かっていたことは間違いなく、《アマデウス》クルー総出で捜索作戦は行われたのであろう。

 拭いきれない負い目を感じながらも、死にそびれたという思いに変わりはない。それを、わざわざ口にする必要はないだろう。そうして宙に浮いた感情は、余計な事を思う訳でもなく、そうまでする価値はあったのだろうかという疑問に変わっていく。

 溜息を一つ吐き、意識を切り替える。答えなど何処にもないのだから、考えても仕方がない。皆の善意を無下にするつもりはないが、これは他でもない自分自身の問題だった。アストラルの言葉を借りるのならば、自分が人間になれないのは自分の所為なのだから。

 今はそれよりも気になることがあった。《アマデウス》クルー総出なのは理解したが、トワも出たというのはどういうことなのか。

「じゃあ、トワも出たんですか? あの《プレア》って機体で」

 あれは使わないようにと、散々イリアに説得されていた筈だ。

「うん。ああ、でもトワちゃんを責めちゃダメだからね。ちゃんとイリアさんの指示の下だし、ああいう状況でトワちゃんが何もしないで待ってる訳がないでしょ?」

 トワの性格を考えれば、アストラルの言う通り大人しくしている訳がないだろう。そこを責めるつもりはなかった。

 だが、トワが《プレア》で戦うという事には反対だ。今回だけで、一体どれぐらいの死者が出たのだろうか。これ以上戦って欲しくないというのに、他ならぬ自分の所為でトワを戦場に引き込んでしまった。あの少女に、死の負債をこれ以上背負い込ませたくないのに。

「それは、そうですけど」

 過ぎてしまった事は、どう悔やんでも変わらない。そう理解していても、この事実を肯定するのは難しかった。口を噤んだ僕を見て、アストラルは申し訳なさそうに微笑む。

「ごめんね。確実な捜索の為にはどうしても三人、外に出られる人が必要でさ。イリアさんにリュウキさん、あと一人がトワちゃんだったんだよね。私が動ければそれがベストだったんだけど、情けない事に一回戦闘機動しただけで傷口開くんだもん。頑丈さが売りの筈なんだけどね。もう本当に情けない」

 そう言ってアストラルは溜息を吐いた。

「イリアさんを助けにこうして宇宙まで来てるのに、いつまで経っても傷は良くならないし。無重力だと傷の治りが遅くて嫌な感じだね。まあ人工臓器と人工血液の不適合が一番良くないんだろうけど。迷惑ばっかり掛けてると、そろそろ交換を考えなきゃダメなのかなあとか考えちゃうよ」

 腹部を摩りながら、アストラルは悲しげに呟いていた。本来なら、まだ安静にしてなければならないというのに。

「アストさんも出て、それでそんなに辛そうなんですか」

 僕を助ける為の捜索作戦で、こうして負傷者も出ている。胸中に燻る感情が何であれ、ふて腐れている訳にもいかないだろう。大人げない態度を取っていた自分が情けない。

「病欠待機だったけど、トワちゃんピンチっぽいから出ちゃった。まあ自業自得の類だから気にしないでいいからね。それよりトワちゃんの方を心配してあげてよ」

「トワが、危なかったんですか」

 俄には信じられなかった。トワと《プレア》の戦闘能力は群を抜いて高い。あまり考えたくはないが、普通のif、普通の部隊でどうにか出来るとは思えなかった。まともに戦ったとしたら、僕やイリアでも勝てないだろう。あの力は、そういう類の力だ。

「完全無欠のスーパーヒーローや、極悪非道のプロフェッサーってのは中々居ない物でね。少なくとも私は会ったことないんだけどさ。トワちゃん、戦闘自体は問題無さそうだったけど、連戦はダメみたいだね。体温の急激な上昇、血圧脈拍の異常数値、伴って毛細血管から出血、鼻血凄い出てた」

 つまり、トワの身体が限界を越えたということだろうか。自分が前回《イクス》に搭乗した時は、出血こそしなかったが戦闘後深い眠りに落ちた。トワの用いる《プレア》と、自分が乗る羽目になった《イクス》。この二機は、やはり普通ではない何かがある。

「トワは大丈夫なんですか? まだ寝ている、とか」

 居ても立ってもいられなくなり、ベッドから降りて仕切りとなっているカーテンを開ける。周囲を見渡すも、医務室には自分とアストラルしか居ないようだった。電源の切られた医療機器が端に追いやられている。そこまで重傷ではないのか。

「寝たら何とかなってたよ。ひどい脱水と低栄養もあったらしいけど、そんな尾を引くような感じじゃなかったし。起きてそうそう布団を蹴っ飛ばしてリオ君探してたんだよね、隣にいた訳だけど。そこでべったりしてたけど、リオ君が起きる数分前に部屋に帰るって出て行っちゃった」

 とりあえず、トワの体調も悪くはないらしい。それを聞いて安心したが、相変わらず何を考えているのかは分からない。

「部屋に帰るって。何で?」

 主立った理由は浮かばなかった。疲れてしまったと考えるのが現実的だが、どうもしっくりこない。アストラルは笑顔を浮かべており、心なしか楽しげだ。というよりも多分、楽しんでる。

「私も分かんなかったよ? でもトワちゃんが部屋に帰って、すぐにリオ君が起きたから、何となくは分かったけど」

 誇らしげなアストラルを見る限り、本当に何となく分かっているのだろう。ここは恥を忍んで聞いてみよう。

「それで、トワは何を考えてるんですか?」

 アストラルはベッド脇の籠から僕の着替えを取り出し、こちらへ放り投げた。両手で受け取り、どういうことかと疑問の目を向ける。

「会いたくてしょうがないけど、会いに行くんじゃなくて会いに来て欲しいのよ。意味分からないでしょ? ちょっとした乙女心と、ちょっとした子ども心って感じかなあ。多分ね」

 人差し指を立てて、ここぞとばかりにウインクして見せたアストラルの答えは、自分にはよく分からなかった。子ども心はまだしも、乙女心となると未知の領域だ。

「はあ。僕にはさっぱりですが」

「すっごく簡単に言えば、とりあえず後を追い掛ければ良いってこと。まあ検査は受けなきゃダメだけどね。そろそろお医者さんが来る頃だし」

 アストラルに促され、扉へ視線を移す。示し合わせたかのように扉がスライドし、医務室の主であるアリサが二人分の視線を受けてびくりとした。

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