侍の得物
「まーね。私は結構好きだからいいけど。気楽だし。うるさーいおっさんとかいないし」
ブリッジから一歩出た所で、壁にだらりともたれかかり喋るイリアの姿は、とても一部隊を任されている艦長には見えないだろう。その言葉を受けている者は周囲にはおらず、ヘッドセット越しの人物以外には存在していない。
『お前が楽しんでいるのなら、それで構わんがね。こっちも大して変わらん。地味な仕事ばっかりだよ。デスクワークよりはマシだが』
BS《レファイサス》の艦長レイ・ブレッドと、イリア・レイスは旧知の仲である。今もヘッドセットを用いて互いのことを話していた。ブリッジへ直接繋げられる通信を使わないのは、聞かれたくない、或いは聞かせるべきではない内容もあるからか。
「えー、私デスクワークでもいいよ。秘書やりたい秘書」
『お前が秘書か。まあ、その事務所は破産だろうな。しかし、気が付けばお前ももう少佐か。落とされたとは言え、教え子に階級を抜かされるというのは、複雑な気分だよ』
その言葉を受け、イリアは少しばつの悪い顔をする。
「まあ、好きで貰った訳じゃないからね。大体、こんな肩書きあってもなくても変わんないじゃん」
ヘッドセット越しに苦笑の声が溢れる。
『昔からお前は階級を気にしない奴だったからな。上官にも平気で噛みつく。俺にもな。だが、お前も今や預かる側の人間だ。そのままで良いとは思っちゃいないだろう』
その言葉を受け、イリアはがくりとうなだれた。それが今、自分にとって一番の重圧であり、拘束であることを知った上での問いだろう。
「分かってるって。それがやーなんだけどね。よりによって私みたいなのが艦長ですからね。ifに乗ってれば死ぬ時は一人だけど、これじゃそうはいかないもん」
『きちんと艦長として、俺はやれていると思うんだがな。俺が言っても、説得力は無いか?』
「うん。まーね」
その言葉は、レイなりに気遣っている証拠だろう。それが分かったからこそ、イリアも笑みを浮かべている。
『自分の好きでクルーを集めたのは分かる。だが少々幼すぎやしないか? これなら、孤児院と言った方が説得力がある。軍艦の景色ではない』
孤児院。あまりに的を射ているその言葉に、イリアは苦笑するしかなかった。リーファにリオ、そして例外ではあるがトワを指しての言葉だろう。
「私だって、したくてしてる訳じゃないもん。向こうが選んだ道なら、何も文句は言えないよ」
それに、とイリアは胸中で付け足す。
「……あんな顔、してたらさ」
最初にリーファを見たときは、何よりもまず自分の無力さを呪った。当時十二歳だったリーファは、その年齢にして世界の在り方を知ってしまった。この世界は自分という芯よりも、その外側にある事象が在り方を決めてしまうと、沢山の死とともに知ってしまっていた。
その出会いはまだif操縦兵だった頃に遡る。実地稼働試験だといってリーファとifがセットで隊に編入されたのだ。後になって知ったことだが、もうリーファは用済みであり、研究所が戦場に寄付したようなものらしい。
AGSの特殊研究所での合法的な非合法実験。そこでは人権など無く、数々の実験が繰り返されていた。結局自分の力では、保護出来たのはリーファだけだった。
凍り付いた表情に、薬物でやせ細った身体。それでもまだまともでいられたのは、彼女が希少価値のある検体だったからだ。
BFS、ifの操縦系統の一つとして提唱された制御システムだ。直感的な機体制御、ifを自分の身体のように扱えるようになるらしいが、それを稼働させることが出来るのは十代二十代といった子どもばかり。本来なら戦場に出るべきではない少年少女達にしか使えないシステムだ。
その技術はあっという間に広がった。戦争の継続は深刻な人手不足と同義である。今では当たり前のように戦場で少年、少女兵を見掛けるようになった。BFSはその後敵対企業であるH・R・G・Eにも広がり、子ども同士が殺し合いをする事すら戦場では日常となってしまった。
そのBFSの検体だったのが、他でもないリーファだったらしい。最初はされるがままについてきたリーファも、いざAGSから解放出来るという段階になってしっかりとした意志を持ち始めた。
BFSの所為で、命を落とした者は少なくない。戦闘とは非情なもので、操縦出来るからといって生き残れるかは保証してくれない。リーファは、自分自身にも責任があるといった。どう償えばいいか分からないが、少なくとも自分だけ助かるわけには、平和に塗れる訳にはいかないと。
リーファに非はない。だが、それを決めるのは他でもないリーファだ。彼女はまだ、取れることのない責任を取り続ける為に戦場にいる。
そしてリオは、そのBFSがもたらした被害者の一人だろう。初めて会った時、彼は牢獄の中にいた。牢獄といっても、最近の物は牢屋みたいに無骨ではなく、強化プラスチックと自傷防止用シートで囲われた小綺麗な場所ではあるが。
リオもまた、自分の責任を果たすつもりなのだろうか。生きることはできず、さりとて死ぬこともできない彼を、助けたかっただけなのに。
「助けたかったんだ。その先は分からなくても、無責任だけど、私は」
無責任、自分にお似合いの言葉かも知れないとイリアは自嘲気味に笑う。
『それも、お前の良さだとは思うがね』
「悪いとこでもあるけどね。まあしょうがないんだけどさ」
そう言って笑みを浮かべたイリアの表情は、もういつもの明るいイリアに戻っていた。
ふとイリアが怪訝そうな顔をする。そわそわと落ち着きのない様子で周囲を見渡す。
「ねえ、なんか」
『言いたいことは分かる。こちらのレーダーに反応があった。敵機だ』
違和感の理由が分かり、急ぎブリッジに戻るイリア。艦長席に腰掛けるや否や、すぐさま周囲に問い掛ける。
「現在の補給状況はどう?」
「まだ六割程度です。どうしたんですか」
リーファが直ぐに答える。まだまだ補給は終わりそうにない。
「敵が来るってさ。索敵は向こうに任せてる。どう、おっさん?」
『敵の数は三機。動きが早いな……恐らく哨戒機だろう』
既にブリッジへ直接通信を繋いでいたのか、レイの声はヘッドセットからではなくブリッジに備え付けてあるスピーカーから聞こえる。
「おっさん、つけられたでしょ?」
『いいや、その筈はない。たまたま網に引っかかったか。運が悪いな』
茶化すような口調のイリアへ、レイは冷静に返す。
「迎撃するしかないよね。そっちはどれぐらい出せそうよ?」
『こちらは二機出せる。急いでこちらの艦に戻ってもらっているが』
「じゃあ、リオ君にも出てもらった方がいいね。リーファちゃん、リオ君に出撃準備お願い」
リーファは短く肯定を示し、通信を行う。
「哨戒機なら、ある程度叩けば帰ってくれるから」
『網に掛かったのなら、その網を食い破るまでだ。敵に大物だと思わせるんだ。動きが慎重になるやもしれん』
イリアは指摘された事が気に食わないのか、むっとした表情を浮かべた。
「もー相変わらずうるさいんだから。じゃあ、速やかに追い返すよ!」
※
補給作業を中断し、ws《ラインパートナー》からif《カムラッド》に乗り換える。どうやら敵襲らしい。
「ミユリさん、装備は?」
ifの状態をチェックしていく。整備は万全であり、何の問題も見受けられない。
『これとこれぐらいでいいだろう』
ミユリが《ラインパートナー》で運んできたのは、大型のライフル銃とSB‐2ダガーナイフ、タービュランス短機関銃とその予備弾倉ポーチだった。
「何ですか、この長いのは」
大型ライフル銃を受け取って呟く。普段は使わない銃器であり、当然名前も性能も分からない。
『VC‐67。高精度で、パンチのある弾丸を撃つ対if用狙撃銃だ。まともに当てれば、ifのTOV複合装甲も貫通させることが出来る。重いのと、値段が高いのがネックだ』
狙撃銃は殆ど使ったことがない。自分は近接戦闘が、特性上どうしても多くなる傾向にある。
『まあ、今回は向こうからも迎撃戦力は出る。こっちは援護射撃して、近付かせなきゃいいって訳だ』
「それはいいですけど。僕は狙撃なんかしたことないですよ」
件のVC‐67を受け取り、残りのSB‐2ダガーナイフを左足に、タービュランス短機関銃を右足に固定し、予備弾倉ポーチを腰に付ける。
『VC‐67は銃本体に演算機能が備えられている。まあ複雑な回避機動をするif相手に的中は厳しいが、ある程度までは勝手に合わせてくれる。難しくはない。敵をビビらせてやればいいだけだし、仮に一発でも当たればそこで終わりだ』
装備を終え、システムをチェックする。新たに装備した武装全てが正常に稼働していることを確認し、下部ハッチから宙域へと落ちていく。
まだ補給物資は漂っており、傍らを《レファイサス》の《ラインパートナー》がコンテナを抱えて通り過ぎていった。
まだ補給は終わってはおらず、急遽中止するわけにもいかない。つまり、敵ifをここに近付かせてしまったらそこで作戦失敗だ。流れ弾一発もここに到達させてはならない。
二隻のBSの盾となるように前へ出て行く。しばらくして後方を振り返ると、《アマデウス》も《レファイサス》も平等に小さく見えた。この位置で戦闘すれば、BSに被害はないだろう。
不意に懐かしい電子音が響く。データリンクの接続音だ。小隊単位で行動する際に、if同士が短距離通信で繋がり、情報共有する為のものだ。
自分は単独行動が多いため、あまりお世話になったことはないが。
繋いできたのは二機、《レファイサス》側のifだろう。機体コードと、操縦兵の名前が表示されている。
件の二機は気付けばこちらに追い付き、ぴったりと両脇に並んでいた。
『こちらはエグラード。リオ君と言ったな、よろしく頼む』
識別名《リセルヴ》。補充兵を意味するその機体は、《カムラッド》をベースにして自己流に改良した機体だろう。《カムラッド》は拡張性に秀でているため、使いやすいように各個人のアレンジが加えられた物も多数存在している。
エグラードが操縦する《リセルブ》は、胸部と脚部に追加装甲が増設されており、堅牢、堅実と言った言葉を連想させる。
『俺はビィル。よろしくな。危なくなったら言ってくれ、いつでも支援すっから』
識別名《アルティ》。砲術士を意味するその機体も、《カムラッド》を独自に改良したものだろう。
ビィルの操縦する《アルティ》は、その名の通り背中を占有しているキヤノン砲が目を引く。両肩から二門の砲身を覗かせているその機体は、本人の言う通り支援戦闘を考慮した物だろう。頭部も演算性能を高めるためか、カメラアイがゴーグル状の物に覆われ、外付けで顕微鏡のレンズのような回転式トライアイと、固定式のモノアイが、不思議と愛嬌のある造形を成していた。
「はい。よろしくお願いします」
敵ifは真っ直ぐこちらに向かってきている。計三機、こちらと同数ならうまく抑えきれるだろう。
『今回の迎撃はこちらがメインで行う。そちらは援護に徹して貰いたい』
エグラードが、丁寧ではあったが釘を刺すように付け加える。
「了解です」
エグラードの操縦する《リセルヴ》と、ビィルが操縦する《アルティ》が互いの位置を確認しながら前に出る。その二機に追従しながら、VC‐67狙撃銃のスコープビューを起動させる。
VC‐67狙撃銃に装着されたスナイパースコープと連動し、メインウインドウは望遠状態になっている。こちらに近付きつつある敵ifの姿も、しっかりと捉えることが出来た。
三機の《カムラッド》が、慣性を利用した無駄のない動きを見せている。装備は三機とも変わらない。両肩を占有している円形の大型装備は、索敵用のレドームユニットだろう。右手は軽機関銃のキャリングハンドルを握っている。腰には大型弾倉の予備が見えるが、戦闘するための装備ではなく、哨戒機としての護身用に近い。
敵ifに動きがあった。両肩に背負ったレドームユニットを切り離し、軽機関銃を両手で保持した。戦闘態勢だ。
「レドーム切り離しました。武装は軽機関銃、来ますよ!」
簡潔に状況を伝え、トリガーを引く。VC‐67が凄まじい衝撃とともに弾丸を吐き出すが、三機の《カムラッド》は冷静に散開する。続けて何発か撃つが、掠りもしない。
『了解した。ビィル、近接信管だ!』
『よし、分かった! そちらもきちんと合わせろよ』
エグラードが肯定し、ビィルもそれに続く。《アルティ》の背中に乗ったキヤノン砲が衝撃で跳ね上がる。敵ifの進路を塞ぐように飛来した砲弾は、敵ifを至近に感知、炸裂する。砲弾に圧縮された人工酸素が瞬く間に広がり、破片と爆炎をまき散らした。
それを敵ifは余裕を持って急制動を掛け回避する。その挙動の隙を狙ってエグラードの《リセルヴ》が、右手に持ったライフル銃を向け数発撃ち込む。
単発で放たれた鉄鋼弾はTIAR突撃銃が使用している物よりも弾速と破壊力に優れる。直撃すればifの装甲に対しても軽視出来ない打撃を与えられるが、敵ifは加速を繰り返してそれを躱した。
『ええい、素早しっこい!』
『チャンスはある、ピリピリすんな!』
後方からその攻防を横目に、こちらもVC‐67狙撃銃で援護を行う。確実な射撃と照準には出るが、複雑な回避機動を行う敵機に命中させることは難しい。すんでの所で回避される。
『妙な動きをしている……。そうか! さっきの奴をそのまま抑えてくれ!』
『お、おい! どこ行くんだ!』
エグラードの《リセルヴ》が、盾とライフルを構えながら一気に加速する。慌てて空いた陣形を、ビィルの《アルティ》は近接信管とキャニスター弾、即ちキヤノン用の散弾で敵ifを面制圧した。
《リセルヴ》が向かった先には敵ifが一機確認できる。こちらの包囲を縫って接近を試みたのだろう。《リセルヴ》が正確な狙いで射撃を行うが、敵ifも機関銃で応戦しつつ下がった。《リセルヴ》は最小限の動きで回避し、左腕に括り付けられた盾でその鉄鋼弾を防ぎつつ射撃を繰り返す。
接近は諦めたのか、敵ifも無理に突破を仕掛けるような真似はしなかった。こちらの力量を測っているようにも見て取れる。
エグラードの《リセルヴ》が空になった弾倉を素早く交換し、陣形に合流し直した。
『突破は阻止したが、抜かれたらどうなっていたことか』
『奴さんも偵察任務ぐらいで死にたかないだろうよ』
スコープ越しに戦況の移り変わりを捉える事しか出来ない。散発的に射撃をして見せるが、どれも当たってはくれない。唇を噛みしめながらトリガーを引く。
また弾丸が逸れていく。的中は望めず、かといって牽制にもなっていないように感じる。今のところ抑えてはいるが、これでは実質三対二だ。
「要は、近付かせなければいいんでしょ」
バーニアを蒸かし、二機と三機、そして弾丸が入り乱れるキルゾーンに飛び込んでいく。突然の乱入に驚く味方の声を無視し、最高速を維持したまま目の前の《カムラッド》に突っ込んだ。
まともな回避機動も取れず、正面から体当たりを受けてしまった《カムラッド》をそのまま蹴り飛ばす。されるがままに回転する無防備なそれに向けVCー67を向けるが、他の《カムラッド》が軽機関銃をこちらに撃つのが見える。断続的に吐き出される弾丸が飛来する。追撃を断念し一旦下がった。
尚も撃ち続けてくる。その火線に追い立てられるように回避機動を取るが、先程体当たりした《カムラッド》がこちらを挟み込むように援護射撃をしてきた。
「後ろの抑えて下さい」
味方に援護を頼み、体当たりした《カムラッド》に狙いを絞る。正面から飛来する弾丸を交わしながら近接間合いまで滑り込んだ。
右肩が直撃を受け装甲が弾け飛ぶが、中身が生きていれば腕は動く。そのままVCー67を左手に持ち替える。空いた右手で右足にあるタービュランス短機関銃を引き抜き、ろくな狙いも付けずに撃った。
数発が装甲を掠めたが、《カムラッド》は健在だ。追撃をしようと考えるが、若干距離がある。直接ナイフで斬りにいける距離ではない。
一瞬の判断から、左手に待ったVC‐67を思い切り振り下ろした。大型の狙撃銃だけあってリーチが長い。バレル部が正面装甲を打ち据え、そのまま吹き飛ばす。大きな隙が生じる。
吹き飛ばした分だけ距離を詰め、その勢いのままVC‐67で突きをかます。バレル先端と《カムラッド》の表面装甲がかち合い火花を上げた。度重なる衝撃にこちらの左腕も悲鳴を上げているようだったが、無視してトリガーを引く。
弾が出ない。サブウインドウの表示を見ると、ifの左腕がレッドアラート、VC‐67はバレルの損傷により発砲禁止になっていた。暴発の危険という意味だ。
これではただの鉄パイプじゃないか。内心で悪態を吐き、右手に持ったタービュランスを連射、小口径弾を至近距離で浴びせる。《カムラッド》の装甲がズタズタになっていくが、とどめを刺す前に逃げられてしまった。
『……無茶をしやがる。あー、後ろのは抑えておいた。君の指示通りな』
気付けば、他の敵機もある程度損傷を受けているようだった。敵三機の動きが、撤退のそれに変わっていく。軽機関銃でこちらの追撃を抑えながら、来た道を辿るように帰って行く。あくまでも周辺偵察が目標である哨戒機が、これ以上の戦闘をするのは無意味だと判断したのだろう。
「あ、ありがとうございます。助かりました」
進路をBS、《アマデウス》と《レファイサス》方面へ取りながら友軍機の状態を見る。エグラードの《リセルヴ》の盾に数十発の被弾がある程度で、こちらの部隊の損害は軽微だろう。
『まあ結果オーライだ。だが……』
言外に漂う沈黙に、苦笑するしかない。作戦無視も良いところだろう。
『気にするなって。見てて格好良かったしな。あれだ、サムライってやつ?』
『……しかし』
何やら驚いたような、呆れたような声でエグラードが呟く。その機体のカメラアイは、こちらの《カムラッド》の損傷を、特に間接がいかれた左腕と鉄パイプと化したVC‐67を見ている。
『整備士泣かせなパイロットだ』
やれやれと言わんばかりの呟きに、ふと気付かされた。見事に軋んでしまったVC‐67について、ミユリはなんと言っていたか。
VC‐67、高精度で、パンチのある弾丸を撃つ対if用狙撃銃だ。まともに当てれば、ifのTOV複合装甲も貫通させることが出来る。重いのと、値段が高いのがネックだ。
値段が高い。とんだ代物を鉄パイプ代わりにしてしまった。
『どうした、サムライボーイ?』
ビィルの問い掛けに応える元気は出そうになかった。少なくとも分かっているのは、あの整備士は泣きはせず、怒るタイプだということだ。
帰還の時はすぐそこまで迫っていた。
その後急ピッチで補給作業は進められ、滞りなく補給を終えることが出来た。多少のアクシデントはあったものの、補給は成功と言えるだろう。
《アマデウス》は当初の目的である中立セクションを目指し、航行を再開した。