表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世界~魔導召着衣師~  作者: 匿名(未定)
試合と知名度編
36/36

魔導召喚 32

 闘技場に出るとそこにいたのは四人組の男女だった。

 とさかの茶髪の青年。剣を背負っている。

 青いバンダナを額にはめた少年。腰にナイフを下げている。

 赤いリボンを付けた身軽な服装の少女。体術が得意そうだ。

 仮面をつけた謎の人物。身長よりも超える杖を握っている。


「さっさと勝つぞー」

「「「おおー!」」」


 あちらさんは気合入っている。

 こちらはセンが抜けた分、前線が足りなくなってしまっている。


「いやー若いっていいですねー」

 呑気そうにゼンが微笑んだ。

「華やかですもんね」

「こちらは男二人組……」

「…ですね」


 なんか、気乗りしない。

 センが抜けるとこうも空気が一変するのだろうか。


「ところで能力は使用できそうですか?」

「んーまあ、先ほどの試合でだいぶ崩れてしまったけど、一応大丈夫ともいえる…多分ね」

 不安げな会話だ。

 むしろ不発な会話か? 手のひらでカギを見つめる。ボロボロだ。さび付いてしまっている。無茶なやり方をしてしまったからだ。

 とはいえ、勝つには仕方がなかったことだが、こうも目の前にある希望が朽ちるのは気分が晴れないものだ。


「がんばれよー!」


 歓声に混じってセンが応援している。

 観客席からセンを見つけるのは大変だけど、彼が見守ってくれていると思うと、なんだかホッとした。


「おいっ! お前ら、お仲間の大男はどうした?」

 背負っていた剣を抜き、こちらに剣先を向けていた。

「ケガしてね、今回は出られないんだ」

「そうか、大事な戦いなのに棄権するとは愚かなことだな」

「お仲間のことを考え場、傷一つくらい、耐えれるものだ」


 そう言って、彼らも体の一部を見せた。包帯をグルグルに巻き、出血がまだ収まっていないのか赤く染まっていた。


「金がないとやっていけなんだ。お互いさまってやつさ」


 金がないからこの試合に出ている。

 確かにそうかもしれない。

 怪我を負ってまでモンスター退治なんて稼げない。闘技場などで武器や技術、体術を振るって観客を賑わせれば大した収入にもなる。でも、ここはギルドを捨てるかの戦いも入ってくる。

 そんな試合に出てまで、彼らは金だけが目的ではないのかもしれない。


「はじめー!」


 司会者の開始の合図とともに試合が始まった。


 茶髪の男が突撃する。

 続いてバンダナの男も後を追う。

 茶髪の男の隣り合わせでリボンを付けた女が駆け込む。

 仮面の人は後ろで詠唱している。


「ゼギア、まずは前線を崩すぞ!」

「オッケー。魔力のことなんか考えなしに片付けるね」


 走りながら鍵を発動しようとしたとき、パキンと亀裂が走った。鍵は砕け、光の粒子となって飛び散る。目の前からカギが消えていき、ハッと気づいたとき、茶髪とリボンが左右回り込み攻撃を繰り出す瞬間にいた。

「ひとりで二人を相手にするなんて度胸あるね、さすが半獣の考え方は違うなー」

 二人の攻撃をきれいに重なるようにして剣で防ぐ。


 ガキンと剣が真っ二つに折れた。

「そんななまくらじゃ、俺らの連携を崩せないぜ! 風神剣!」

 風が剣を覆った。剣を前に突き出すと、衝撃波がカムイを襲い、後方へ吹き飛ばした。

「魔迅拳」

 二つの雷のような黄色い稲妻が地面を走り抜ける。

 リボンの女が地面すれすれに拳を振るいあげた。


 空中でなすすべなく吹き飛ばされた後、地面に転がると同時に稲妻の攻撃をくらった。

 ダメージは大だ。

 変身していない状態で、毛皮がもっさりと減るぐらい摩擦力。


「手加減している暇ねぇーぞ」

 二人が真っ先にゼギアの方へ駆け出した。


 ゼギアはまだ詠唱中だ。

 ここを攻撃されたら、ゼギアを戦闘不能にしてしまう。そうなっては、手遅れだ。

 立ち上がろうとした矢先、バンダナの男が目の前まで来ていたことに気づいた。

 とっさに折れた剣を抜こうとしたが、バンダナの男の方が早い。

 右腕をグサッと刺された。

「ッ……!」

 涙を浮かべるほど激しい痛みだ。

 剣から緑色の液体が零れ落ちた。

 剣を抜かれた後も腕は動かない。ましてや左腕を火やぶりしたかのように痛みが襲ってくる。

(毒だ!)

 武器に毒や麻痺をつけて戦う戦士や剣士もいる。そんな話を聞いたこともある。奴らはモンスター退治に慣れている。人間を殺すことも慣れている。


「こっちは終わったよ」


「ガッ!」


 ゼギアがリボンの女の体術にコテンパンに殴られている。

 詠唱は中断され、地面に倒れてからも女と男の執拗に腹や頭、足、背中と延々と蹴り続けた。


「ゼギア!」


 苦しそうなもがくような声が出た。

 自分よりも仲間が心配。とっさに体を起こし、バンダナの男に動かない右腕を動かし、拳を握りしめ攻撃しようとした矢先、仮面の魔法をくらった。


 氷の息吹が地面から突き抜け、足から体へと全身を覆いつくす。身体の熱気が失われていく。風景が真っ白な世界へと代わり、息が白くなり、音も聞こえなくなっていく。


 アイスブレス。地面から吹き上げることで対象を確実に身動きを封じる魔法


 やっぱり無茶な戦いだった。

 そのときだった―――


『その装備でいけるか?』

『問題ない』

『なわけないだろう。守護神がいるからと言って安心しきっていないか?』

『……』

『一から教えたろ、力の使い方を……だな。まあ、そんなことを言っていると死んじまうか。仕方がないか、俺から少し力を与えてやる。この力を使いこなせるのなら、お前は大した奴に成長したっていうことだ。だけどな、俺は言っておくぞ。”その装備でいけるか”?』

『一番いいもので頼む』

『よっしゃ!』


 氷づいた体をよそに意識だけが新明に戻ってくる。

 目の前に鍵が浮いているのが見える。

 透明で、消えそうだ。湯気で形を成しているような感じだ。

 息を吐くたびに姿を現し、息を殺すと消えてしまう脆い光だ。


 その鍵を手にするかのようにカムイは握った。


『唱えろ。簡単な言葉だ。発動は慎重に選べ。複数の記号をつなげて発動する』


 氷が割れた。

 氷の破片をつかみ、そばにいた青いバンダナの男に向かって右手首を刺す。

「こいつ、しぶといな」

 腰に下げていたもう一方の剣を握り、力強く振りかざした。

 動かなかった這うの手でその腕を押さえる。


「ごいづ くっ!」

 ボキボキと音を立て、地面から立ち上がった時には青いバンダナの男の手首を負っていた。

 男は悲鳴をあげ、倒れる中、目の前に存在する鍵を二本見つめながらゆっくりと囁いた。


「デルタ、オメガ」


 カッと眩い光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ