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新世界~魔導召着衣師~  作者: 匿名(未定)
試合と知名度編
34/36

もうひとつの30

 一瞬小さな星空が覆いつくしているのように見えた。

 それがやがて火球の雨になって降り注ぐとは思いもしなかったほど純粋にきれいだと感想を述べるほどであった。

 闘技場から移る空すべてに火球が密集する。降り注ぐ光景は以前も経験があった蚊のように心の中で気づかされるカムイ。

 あのときは、転移魔法テレポートテーションや絶対障壁などといった高レベル魔法で防ぐなり逃げるなりできたが、謎の黒衣の者たちに力を奪われてからそのような高度の魔法を放出して作り出すといったことができなくなってしまった。

 心の底を振り絞ろうとしても、限界が来てその場で倒れてしまうか身体中が痺れて動けなくなってしまうか、限界を超えるというものは簡単にできるものではないと知っていたが、絶対絶望を直面したとき、勇者や主人公は「うおおぉぉぉ」とか叫びながら、必死に仲間を守ったり自信を強化して運命を変えたりするのだろう。


 そんな主人公たちに昔、絵本を読んだ時、感動したと覚えがあった。

 主人公は平凡な村の出世、特に力も勇気もない。けど、いざ仲間や守るべきものがあれば誰よりも立ち上がり守ろうと必死で足掻き、勝利へと導く。

 そんな主人公に詰めあう仲間とヒロインたち。宿場に泊まったり仲間とじゃれあったり食事の雑談や戦闘中の対話、仲間との連携、魔王との熱い戦い、仲間・主人公の成長といったものを夢見て冒険者を目指したことがあったが、現実を知って夢物語だけだと悟ったのは村を出てギルドに入った後だ。


 主人公は誰にでもなれる特権があるがゆえ、強さはバラツキ。


 仲間と一緒に冒険する機会もあったが、うまくなじめないこともあれば、全滅することもあった。そのたびに自分だけが離れて生きてしまうこともあって、いつの間にか人を遠ざけるようになっていた。

 それを、あの遺跡で守護神と出会い、少しずつ目標が果たせそうに見えていた。

 けれども、力を奪われ、未来という何とも悲しい世界に転生し、そして、目の前にある絶望にでさえ、俺は…カムイは鍵の力をもってしてでも、立ち向かえる勇気はなかった。


「―――まだ、あきらめてはいけませんよ!」

 そう声を荒げたのは、ゼギアだった。彼はあきらめもしない表情を浮かべ、歯を食いしばりながら、目の前から襲う絶望から抗おうとしていた。

 痩せ干せた背中が両手でカムイたちを守る姿勢をだす、ゼギアの背中に今までなかったものが心の底から噴水のように浮き出る何かを感じた。

「勝算はあるのか?」

 額に汗を浮かべつつ、ゼギアに質問を問うセン。

「もちろん、ありません」

「では――」

「ないですが、ここで死ぬという定はありません。なので、ぼくはここであきらめません」

 あきらめない…か。

 どんな絶望の地に立っていてもあきらめないの一言で後退しない逃げない意味をあらわに出す。その声を聞いたとき、カムイは絶望に対して過去の幻想に見つめていた自信を恥った。

 カムイにとってできることは限られている。

 けれど、諦めない。

 そんな言葉をカムイの心に動きをかける。

「諦めない…いい言葉だ」


 カムイは立ち上がりそっと目をつぶった。

 以前夢の中で出会った彼が呼んでいるような気がしていたからだ。

「セン、ゼギアは一旦休んでいて、俺がこの場を収める」

 黒い猛獣のような影がカムイを覆いつくす。

 その光景に目を疑う。が、会場は荒れ、直に見えているものは少ないであろう。センも辛うじて見ているが、カムイが変わっているというものは視界に入らない。魔力が足りないのだろうか。

 敵側も気づいていない。常に笑っている始末だ。

 なら、この姿は何だ。

 いや、ぼくは以前にも見たことがある。

 これは――壁画にあった。邪神の絵にそっくりだ。


 もし、これが事実であれば、カムイは邪神の生まれ変わり。

 もしそうとあれば厄災はカムイ自身から生まれるのかもしれない。もし、回避するとなれば、いまこの場で殺すことが優先だろうか。


 だけど、そうは信じたくない。

 仲間と言え、まだなったばかりだが、カムイが本当に邪神であるのなら、邪神との戦いは再び起きるだろう。けど、もし違うのであれば、ぼくは無関係なカムイを殺したことになる。


 決断はまだ先だ。今は勝利することを優先しよう。


「い殺せ、黒炎ダークフレイム


 カムイが言い放った。

 振りそいでいた火球が一斉に黒い炎に包まれ消滅し、術者もまた、燃やされた。

 術者は黒い炎から逃れようと必死で抗うが、あきらめたのか地面に倒れ、その場から動かなくなった。


「試合終了ーーー!!」


 司会者がそう大声で上げた。

 術者は倒れ、立ち上がっているカムイたちに勝利を称えた。

 試合が終了し、唖然と騒然が重なり、なんだか気が抜けないでいるセンにカムイがゆっくり近づき、背中をたたいた。


「いてぃ」


「試合終了だよ。次の試合に準備しよう」


 突き進むカムイにゼギアが引き止めた。

 ゼギアは深刻そうな顔をして告げた。


「邪神は生きている。この世界のどこかで、高笑いしている。ぼくは見えた。今もどこかでぼくたちを嘲笑っている」


 と、カムイは「大丈夫。そのときは俺が倒してやるから」と自信満々に言った。

 センが近づき、ゼギアに尋ねる。


「邪神は時期に復活するかもしれない。すまないが、俺はすぐに知らせに行かないといけない。悪いが、試合のことはここで終了させてもらう。約束破って申し訳ないが、それなりの報酬は上を通して払わせてくれ。じゃあ」


 ゼギアは慌ただしく、その場から立ち去る。

 カムイに何も言わず、センにだけ告げ。


 次の試合で、人数の問題で結局は勝負することができなくなってしまい、報酬金は最初の試合だけとなってしまった。

 これでは、ルゥイたちに叱られると焦るセンだったが、3日後に届いたゼギアからの贈り物は不安を取り除くほどの資金が送られた。

 これは、喜ぶべきなのかどうなのか、ゼギアが残した邪神。


 あれはおそらく、カムイのことに対して言っているのだろうか。

 確かに、他の人と違う何かを持っている。

 センは迷う。このまま、カムイたちと一緒にいていいのだろうかと。


 資金を持って、ルゥイたちが戻るであろう場所へ向かった。 

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