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一瞬小さな星空が空を覆いつくしているかのように見える。
それがやがて火球の雨になって振りそぐとはわかっていてもきれいなものだとカムイはそう感想を述べた。
闘技場から映る空すべてに火球が密集するかのように振りそぐ光景は前にも似たような経験があったかのようにカムイの心の中で気づかされる。
あの時は、テレポートテーション(転移移動魔法)や絶対障壁などといった高レベル魔法で防ぐなり逃げるなりできたが、謎の黒衣の者たちに力を奪われてからそのような高度の魔法を放出して創りだすといったことができなくなっている。
心の底を振り絞ろうとしても、限界が来てその場で倒れてしまうか身体中が痺れて動けなくなってしまうか、限界を超えるというものは簡単にできるものではないと知っていたが、絶対絶望…そんな場面を見たとき、勇者や主人公たちは「うおおぉぉぉ」とか言いながら、必死に仲間を守ったり自信を強化して運命を変えたりするのだろう。
そんな主人公たちに昔、絵本を読んだ時、感動した覚えがあった。
主人公となったら負ける敵などいなず、可愛くて常に守りたくなるほどの女の子と一緒に冒険したり後からつるむ仲間たちと一緒に魔王を倒すというのを夢見ていた。
だけど、現実を知って、それは絵本や漫画だけの世界だと実感していった。
子供のころは、それはあると信じていたものが、大人になってそれは嘘だった幻想だったと知った時、カムイの心は歪み始めていた。
仲間と一緒に冒険する機会もあったが、うまくなじめないこともあれば、全滅することもあった。そのたびに自分だけが離れて生きてしまうこともあって、いつの間にか人を遠ざけるようになっていた。
それを、あの遺跡で守護神と出会い、少しずつ目標が果たせそうに見えていた。
けれども、力を奪われ、未来という何とも悲しい世界に転生し、そして、目の前にある絶望にでさえ、俺は…カムイは鍵の力をもってしてでも、立ち向かえる勇気はなかった。
「―――まだ、あきらめてはいけませんよ!」
そう声を荒げたのは、ゼギアだった。彼はあきらめもしない表情を浮かべ、歯を食いしばりながら、目の前から襲う絶望から抗おうとしていた。
痩せ干せた背中が両手でカムイたちを守る姿勢をだす、ゼギアの背中に今までなかったものが心の底から噴水のように浮き出る何かを感じた。
「勝算はあるのか?」
額に汗を浮かべつつ、ゼギアに質問を問うセン。
「もちろん、ありません」
「では――」
「ないですが、ここで死ぬという定はありません。なので、ぼくはここであきらめません」
あきらめない…か。
どんな絶望の地に立っていてもあきらめないの一言で後退しない逃げない意味をあらわに出す。その声を聞いたとき、カムイは絶望に対して過去の幻想に見つめていた自信を恥った。
カムイにとってできることは限られている。
けれど、諦めない。
そんな言葉をカムイの心に動きをかける。
「諦めない…いい言葉だ」
カムイはゼギアの横に立ち、「あとは俺が何とかする。その間にセン、ゼギア 後は頼んだぞ」
カムイがなにか秘策を出すような素振りと共に少し真剣で明るい表情を浮かべた。センとゼギアはそれにこたえる。
カムイと交代するかのようにゼギアは一歩後退し、魔法を唱えはじめる。センは武器に念を送り込み、武器が徐々に黒い炎がつつんでいくのが見受けられる。
とは、いっても…あきらめない。
そんな気持ちだけで前に出てきたが、目の前に絶望にどうこたえるべきかな…こんな時、守護神はなんて答えてくれるのかな。
「まあ、回想に言葉を求めても帰ってくるのは自身の声と過去の声だけだ。今は、自分の声だけに頼れよ、俺」
カムイは懐から、カギを取り出す。
自身で作った魔法の鍵だ。
魔力をちぎって形だけの鍵だが、本来の力を出す召喚鍵とは違って応用は効く。
慎重に深呼吸して、言葉を放つ。
「いま、ここに宿りし、カギに名を授ける。それと、同時に手元にある二本の鍵を犠牲に一つの鍵の力として改変する―――」
もう一度深呼吸をして、途切れないように早口で答える。
「無きカギに次ぐ、犠牲となるカギの名は“水”、“土”。二つの意味はそれぞれ青く力があり生命の源“水”、大地から降り注ぎ地の者に栄光を与える恵“土”。二つを犠牲に、新たに生成するカギは『固い土…ではなく、盾を生成する。水で形を整え、土を表に型番を作り上げる。“盾”という名を持ったカギは新たな力となり、ここに示せ!』新たな鍵と新たな防具として生成する“盾”!」
爆発音が地表に落下することなく、落ちる場所が想定していなかった火球たちが一斉に地面に到達する前に近くまできた火球に引火し、爆発を引き起こした。
爆発音は闘技場からはるか遠く離れたエーミたちの方まで鳴り響いた。
この日、爆発音が響いた闘技場から黒煙が噴き出たことで、一次は非難する警告が出された。
爆発と同時に、カギが盾を形成し、カムイとセンたちを守り、爆発や衝撃波を防いだ。盾は思っていた以上に大きく、とても固くそして、盾が張り巡らされた範囲内の地面は削れることもなく、何事もないかのように傷跡を残さなかったことから、盾の耐久度と安心感をカムイは改めて成功したことにほっとした。
カギを生成するという行為は非常に危険であった。
失敗したらカギは二度と言葉や形を言っても生成できないというリスクがある。だけど、噛むこともなく、できたのでそこはそこで良しにしようと胸をなでおろした。
敵の止めをセンとゼギアによって倒されていたことが後に、司会者の宴によって、発表された。無事に2回戦にいけたのはよかったが、失われたカギはもう二度と戻らないというリスクは今後、同じようなことが続けば、創れる鍵の存在は少なくなってしまう。
改変は犠牲を生み。
形成は形と言葉を生む。
犠牲となったカギは次を生み出すことは叶わない。
もし、かなうとすれば相当の魔力がなければできない。




