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あれから、俺たちは色々と策を考えてその魔物と戦った。
(この辺からあいまいで記憶がカスレカスレ…なぜだろう)
だが、結果として得たのは秘密にしたまま勝利したことだった。仮の仲間たちは傷つき、最後まで信頼していた様子だった。俺が使った能力が・・・まさかのものだとも知らずに。
「マサミ・・・君と触れたのはそれから数日も過ぎなかったあの日だ・・・」
魔物と対立し、勝利した2人だけの生き残り。
マサミとカムイだけだった。
マサミは戦闘の際に知り合ったもうひとりの隠れた仲間だった。
自慢話なダイモンは、魔物が放ったレーザーに打たれ即死だった。
相手の位置を把握できるドンピッチ。
着物使いのホル。
銃撃士のエンゲル。
みんな、敵の力に圧倒的な差で敗れてしまった。
「?」
(――まてよ、こんなことがあったか? たしかにマサミさんとあったことが…いや、違う。誰かと会って、俺は思い出そうと…して)
「惑わされるな!! カムイ!!!」
ハッと顔を上げた。真っ白い光が今までの光景が幻だったかのように景色がはがれていく。
その白い中にいたのは、ギルマスのセンと“だれか”がいた。
「セ…ン…?」
「気が付いたか!? だが、心配している暇ではないぞ、目の前にいる敵が危険だ!!」
(目の前にいる敵?)
カムイは真っ白い光の中から、センの他にもう一人の存在の影をみつける。
「だれ?」
「あらら。おかしいね もう少しで行けそうな気がしたのに ごつい男が邪魔さえしなければね」
ごつい男、センのことだろう。しかし、黒くてモヤモヤとした人影にしか見えない。声も雑音を混ぜたような不愉快な声だ。
「こいつが元凶だ」
「あらら 確かに仕掛けたのは私だけど 勝手に記憶の中へ入っていったのは あなたたちなのよ」
「どうだか、嫌な記憶を混ぜ合わせやがって」
現状がよく把握できないまま、2人(?)の会話がただ流れていくだけだった。
「俺たちに幻夢をみせておきながら」
「あらら わたしはただ夢を与えただけよ それなのに、わざわざ目が覚めるなんて」
「あんな、あんな惨めな記憶を見せておきながらなにを言っている!!」
「あらら 視ようとしたのは あなた自身の心よ それを私のせいにするなんて ひどい男」
2人だけの会話が続けられる中、かすかにキーワードらしき言葉が耳に入ってくる。[夢を与えた]、[記憶を見せた]、[自身の心]、[記憶を混ぜ合わせた]。やはり、あれは偽りの記憶…だったのだろうか。
仲間とつるんで一緒に魔物を倒そうと作戦したことも、嫌々に祭りにでたことも、最愛のマサミさんという人と出会ったことも、あれもすべて幻だったのだろうか。
ふと、瞳から涙がこぼれているのに気が付いた。
もう帰ることもできない世界で過去の世界。飛ばされたはいえ、過去の記憶も守護神と暮らした当たりぐらいしかあまり思い出せない。
いや、それも幻影なのかもしれない。
「なんにしてもだ、お前を倒せばここから出られるはずだ!! カムイいくぞ!!」
「あらら 私に剣を当てようとも? そんなやわな剣じゃ 当たらないよ」
「うるさい! やってみないと分からないだろう」
「あらら 私はあなたに興味がないのに 短気な男だね それにしても先ほどからダンマリだね そこにいる半獣」
俺は、俺は―――どれが本当の記憶なのだろうか?
いま、ここにいる俺は俺自身なのだろうか、それとも偽りの記憶を埋められた半獣なのだろうか?
役職:召喚と魔法、着衣を組み合わせたような能力もあれも、偽りなのだろうか?
ただ、強くなったように見えていただけなのか?
ようやく口が開いた言葉が冷たい一言だった。
「俺は偽りの記憶を持った半獣だったのか」
この言葉に反して、センは大剣を地面に突き刺し、カムイにせかせかと近づいていく。そして、パン!! 十と共にカムイの頬に平手打ちするなり、センは怒鳴った。
「お前は俺が認めたメンバーだ。お前は偽りじゃない! 今ここにいるじゃないか!! 相手は偽りの記憶を作る魔導士だ! 惑わされるな!! だから剣を抜け、アイツを倒して早くここを出るんだ。それに、君だって約束くらいあるだろう?」
と、そのときカムイの心の中で何かがはじけた。
それは鎖か糸か、包帯か、封印術か、それはカムイ自身でもわからないものが弾き飛ぶ。
目の前に起きていることにようやくわかったような感じでセンに言った。
「ありがとう。もう大丈夫だ。おかげですっかり目が覚めたよ」
そう言いつつ、手から2本のカギを左右の手で握りながら唱えた。
「我が新しき解放の力よ解き放て、今から新たな契約となる印を刻もう!」
光が周囲に包まれた。
派遣調査ギルドのリメンより。
先月、報告いたしました幻影の問題の結果について。
我々が潜伏中、幻影の者が本日において、なにものかによって打ち消されました。
これは、誰の仕業なのか我々で調査いたしましたが、爆発跡も遺体も斬撃や属性の跡もなかったことから、何者かによって幻影の者をどこかへと連れていかれた可能性があります。
まだ、報告としては少ない量ですが、王子殿が気にしておりました幻影の者の喪失のことで、一応報告いたしました。これにて、消えてしまった幻影の者を探すことと消えてしまった原因を探ります。
以上です。
「報告終わりっと」
キーボードを打ち終え、画面に表示されたかを一通り確認したのうち、送信ボタンをクリックした。
「報告終わり?」
もう一人の男の影が近寄ってきた。
「今終わったよ」
「しかし、ひどいことするよね」
「そうだな」
「ただでさえ、ここは周囲に結界のようなものはなく、砦という名ばかりのものが立っているだけなのに、本来の結界以上の能力を持つ“幻影の者”を連れて行ってしまうなんて」
「さすがに、悪すぎます。しかも、この時期に――」
「これはちと、面倒なことになりそうだよリメン」
2人の影の後ろに他の2人の影が陽の光によって照らされる。その影の正体をのちにカムイたちにとって脅威になるとは知ることはなかった。




