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ただイメージしただけだが新たな召喚獣を生み出すことに成功したことに心の中で歓喜する。
「見たこともない形状だな」
センが軽く褒める。見た形状からして黒い翼を生やした天使…堕天使のような姿をしている。カムイくんが握る赤黒い霧…瘴気を発するあの剣。見た目からして殺しにかかっているようにも見える。末恐ろしい能力だ。
これは、手を抜くとヤバそうだと察する。
「行くぞ、セン」
「おうよ、来な」
挑発する。
2人しばらくの間、戦い続ける。それは朝日が照らされるまで続いていたのかもしれない。それとも誰かが干渉するまでの間、繰り広げていたのかもしれない。
その戦いは互いに傷つきあうものではなく互いに戦力として仲間として誇りとしてゆけるだろうかという、試すかのような戦いだったのかもしれない。
「ハー…ハー…やるな カムイ」
息を切らせ、片手で持ち上げることさえできなくなった剣を地面に傾けて突き刺す。
「そっちこそね、ハーハー…」
カムイも同様に息を切らしながら、意識が消えそうなところを必死でこらえていた。新しくイメージチェンジしたとはいえ、この能力についてもあまりわかっていない状態でやったものだから、消耗が激しい。
それよりもイメージするだけで別の姿へ変えられた点についてはこの能力を経てから初めての実感だったかもしれない。
お互い息を切らしながら、次の一手が最後になるかもしれないというところにいた。カムイは衣装が消えそうになる直前にいた。魔法を使っても一歩前進しようにももう、力が入らない。だけど、ここであきらめたらダメだ。チェンジする気力も技を発動する精力もない。最後の一手に迷いが現れていた。
センも同じような状況だった。最後の一手を決めれば、ギルマスとして誇りが持てるのかもしれない。けれど、今日がギルド復興への旗を立てる日であり、ここで倒れてはギルドの名が廃れてしまう。
また、足がとてもじゃないが歩くという気力でさえもうない。
「次の一手で最後」
「次の一手で終わる」
互いにこの言葉が横切った。だけども、動くにも動けず、そのまま立ち尽くしてしまう。
動けばいいものの、それはルゥイたちに声が掛けられるまま互いに目を気張った姿が見つめあうだけだった。
――――そのあとのことはよく覚えていなかった。気が付いたときには恐ろしいほどにも笑みを浮かべたルゥイと牙をむいたアヤの顔がそこにあった。
「ったく…あのまま、倒れていたらどうするのですか!?」
「す、すみませんでした」
センとカムイは平謝りながらルゥイとエーミに告げた。
あの後、互いに疲労で動けずにいたところ、朝の散歩の日間のルゥイと連れのエーミと出会い、その時の状況を互いにフォローしながら話した結果、2人の気力と体力を回復呪文によってエーミから救ってもらい、ルゥイからはきつい一発をもらった。
セーフルームで戦っていたとはいえ、どこでどのようしてかは不明だが、壊れてしまっていた。それをエーミが発見し、ルゥイに報告したことで発覚したことだが、あのまま無理に一発を与えていたら、今日は動けないでいただろう。
記念すべき1日目を決闘とかいうバトルに行ってしまったことで、最初の一戦目はセンとカムイの2人だけで最初の試練を突破する条件を押し付けられてしまった。
「それでは、お2人にだけ能力の魅了は見せずに、相手を倒してください」
「ちょっ…カムイくんには厳しすぎるものなんじゃ…」
「カムイくんは能力の頼りすぎだと思います。一般の状態でも能力自体を上げた方がいいと思います。それに、私なりの解釈なのですが、カムイくんは能力を使用後、敵から得られる“経験値”というものを得ていないと判明しました」
経験値…。確かに、過去の世界では経験値というものがあって一定数(他者とは獲得量は違う)超えると能力や技の磨きが増すというものがあった。レベルというものやランクというものは存在せず、経験値を得ることで技の磨きを得るというもの。
経験値を得ないまたは戦わずに放置した場合は、経験値は下がって行ってしまう。つまり、技の磨きが乏しくなるといっても過言ではない。
それが、この未来世界にも実在しているのか!?
なら、今まで戦ってきた際に無駄にしていたというのか!?
「その顔、図星ですね」
「うっ…」
「はぁ…、知識を得たとはいえ、こればっかりは早目に伝えた方がよかったのかもしれません。カムイくんの性能は攻撃役職を持たない一般人よりも弱い性能です。変身してようやく力が出るといったもののようですが、それに頼り切っていては弱いままです。いい機会です。試合で2段階に到着するまでの間は、能力を使用しない――つまり、能力を未使用で攻略してください」
「むちゃくちゃなのでは…」
「セン殿。セーフルームが故障したまま戦っていたら、あなたが死んでいましたよ」
センは何も言えなかった。
「カムイくんはそれでよろしいのですか?」
エーミがやさしく問いかけた。このまま無理に言って能力有りで戦ってもいいと説得してくれる様子もうかがえる。だけど、いい機会かもしれない。
この世界のこと、能力のこと、守護神たちの交流のこともなにも知らない。知識とした飴を食べただけだ。経験値という要素もあるのであれば、ルゥイの考えに賛同したほうがいいかもしれない。
「…わかった」
「え!? いいのか? カムイくんのために――」
センを無視して口にする。
「経験値という要素が引き継がれているのならば、俺はルゥイさんの考えに従います。試合で能力〔召喚着衣〕を使わずに勝利してみます」
「試合の前の選手にあらかじめ仕掛けるのは、なしですよ」
「はい、問題ないです」
心の中で、っく、見破られていたか…と。
その国へ入るには途中にある砦をくぐらなければならないのだが、あいにく通行書を発行してもらっていないので、少し迂回して進むことにした。通行書はギルマスへ配布されるものだが、昨日申請したばかりで、通行書が発行してくれるのは最低でも7日はかかるらしく、その時間待っているのはもったいないということ。
それに、前のギルマスが無断で通行書を持って行ってしまったため、2度目の発行にはかなりの大金と名声が必要となることから、7日までには大金と一定量の名声を獲得しておかなければならない。
それを打開できるのが階級戦に出場して報酬を得るという作戦である。
「あ、ちなみに私たちはルゥイさんと同行で、とあるインターと呼ばれる施設へ赴きます」
インター。この世界では技術や遊びなどを充実した施設のことを指す陽で、他に正式名称があるのだが、一般からは“インター”と呼んでいるらしい。
「ぼくたちは、そこで情報を集めてきますので、お2人は負けることなく勝ち進んでください」
そう言って、ルゥイはミルカ、エーミ、アヤを誘ってインターがある町へ足を運んだ。
残されたセンとカムイは都市へ入国するための許可書を得ることができるとされるちょっとばかしの危ない道へ進むこととなった。




