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新世界~魔導召着衣師~  作者: 匿名(未定)
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23

 ギルド(カスまみれの喫茶)に戻るなり、アヤと合流し、先ほどの出来事の相談を得る。しばらく雑談後、結論付けた様子でセンが語った。

 とあるギルド〔楽園戦跡〕の対立を図る戦いの枠に入れられたというものだった。楽園戦跡はセンたちが言うには、〔カスまみれの喫茶〕の元ギルドマスターが設立したギルドで名や地位はかつての〔カスまみれ喫茶〕と比べれば比べることができないほど高いということ。

 そして、宣戦布告に近いそのギルドはセンたちが思うほど遥かに強い軍勢ということ。ギルド式典が近くになるにつれ、このままでは落ちこぼれたままのギルドに対して、見捨てた元ギルドマスターに対して何のお咎めもできないまま終わるかもしれないということだった。

 そこで急きょ、ギルド同士競う闘技場に出場することに決まった。

 年間特別な日以外開催され続ける闘技場で、少しでも名声とお金を得るために、参加するということがセンの口から言い渡された。

 闘技場があるのは〔カスまみれ喫茶〕から少し北西へ行ったところにある〔舞道ぶどう塔レモンシター〕と呼ばれる塔のような建造物。

 塔の上には闘技場があり、階下で暮らす住人たちにとって唯一の楽しみとなる施設である。その場所で毎年開催されている〔賭けデュエル〕。

 勝利すれば賭けられた分だけ大金が入り、勝ち数を踏まえていけば名声を得るという至って単純な構造の試合である。そこに試合をして〔カスまみれ喫茶〕をギルド式典に参加できるぐらいまで上げるという算段である。

 成功すればいいのだが、成功しなかった場合はもう、このギルドは潰れてしまうだろう。

 そうならないように勝利しなくてはならないという念を睨まれた。


 明後日の明朝に出発ということになり、早めに寝ることになった。

 〔カスまみれ喫茶〕は1階建てなのだが、地下に2階ほどある。そのうち地下2階には倉庫となっており、今は誰も使っていないということで、そこに新人のカムイが入ることになった。

 もちろん、男女別で。

 部屋に案内される中、アヤとルゥイは――たちを連れて別室へ向かい、カムイはセンと一緒に寝室へ向かう。

「今日はすまなかったな」

 歩きながら背を向けるセンは謝った。顔が見えないが、今日のことで気に障ったことがあったような様子だった。

「なぜ、謝るのですか」

「いや――なんでもない」

 言いたげそうだったが何を思ったのか口を閉じてしまった。裏切りそうになったことについて焦りを感じる。服の下は汗が噴き出るも、上に着る厚めの服によってその汗はカムイにばれることはなかった。

 張り紙を見て、賞金首に認定されているカムイたちに少しながら賞金に目を眩んでいたと言えば事実である。カムイの仲間をひと事実のように奪い、カムイの戦闘能力を確かめたうえで強制的に仲間に招き入れたことに対しても少し劣等感がある。

 2つのことを本来マスターがやるべく方法ではないのだが、このギルドの解散を目の前にしてはどうしようにもなかった。カムイは嫌がることなく入ってくれたのだが、目を覚ましたあの2人にはどう行動とるのだろうか。それを考えるとどうしても冷や汗と怯える気持ちに包まれる。

「セン!」

 ハッと顔を上げると、目の前には大きな荷物を抱えたアヤの姿がいた。センの体格ぐらいの大きさの荷物を両手で持ち上げるアヤに対して、センは何か怯えたような表情を一瞬だが、見せてしまった。

 アヤに不審がられるそうになるが、「荷物、別室へ持っていくから」と、その荷物を持ち上げながら、センを素通りしていった。その様子からしてアヤ自身はセンの深くのしかかる気持ちに気づいたのかもしれない。

 不安をギルドに持ち込まない。迷ったらみんなに訊くという、先代の言い伝えが頭の中で横切る。だけど、こればっかりは仲間に相談する訳にもいかない内容だ。

 一呼吸をし、背を向きカムイに言った。

「明日の出発前に一つ確認しておきたいことがある」

 先ほどまで無口だったセンが突然、確認を告げてきたことに対して少々驚く。

「俺と勝負してほしい」

「え!?」

「能力を使ってもいい。全力で俺を倒してみてくれ。それじゃあ」

 と、告げるなり再びカムイを背にして立ち去ってしまった。開いた扉から出ていくセンに少しばかりか悩みを抱いているかつての友の姿に重ねあった。

 扉が閉まるなり、あたりは静かになる。

 暗くジメジメした木製の部屋。窓ひとつなくうっすらと灯すロウソクの光によってかすかに部屋が見える程度。壁にもたれかかった絵画と木刀のような武器数本、食料だと思われる絵が描かれた木箱が3つ配置されていた。木箱の上にちょうど一人分が寝ることができるほどのスペースがあり、丁重にそこにシーツが1枚だけ置かれていた。

 つまり、このシーツで今日はあかせということなのだろう。

 シーツを取り、それを布団代わりにして3つに並べられた箱の上へ寝転がる。


 そして案の定、夢を見た。それはかつて守護者と馴染んでいた風景だった。

 いくつかの像を見せてもらった後、守護者からこう告げられた。

「いずれ、辛いことがあった時。名前を呼べば彼らが助けてくれるはずだ。俺はそう信じている」

 顔が見えない守護者はそうカムイに告げるなり、一つの像に手を置く。

「この像には|―|―|(聞き取れない)がある。もし、カムイが気づければ、きっと力を貸してくれるはずだよ。だって、これは俺とカムイくんとの友情の証なのだから」

 そう告げられた時、カムイはふと頬に液体のようなものを感じた。それに触れると、涙だった。もちろんカムイ自身ではなく守護者からの厚い兜に覆われた隙間から流した水だった。

 それから何を話したのか覚えはないのだが、いろいろと守護者とはしゃぎ、会話し、川で魚を釣ったなどと楽しく過ごした。


 ふと目を開けると、うっすら暗い天井が見えた。

 どうやら元に戻ったようだ。あの日、守護者と楽しく過ごした一日が映し出されたことに、少しながら笑った。涙が出ることはなかったが、守護者と触れたとき、象と知り合ったとき、いろいろと理解できたような感じがした。

 ゆっくりと腰を上げ、扉を開け、地上へ続く階段を上っていく。

 長い廊下を渡り、外で待ちわびるセンとの戦いに一つ思いを残す。

(守護者殿、君と出会えてよかったよ。君との思い出と君から託されたカギのことを誇りに思うよ)

 ゆっくりと足を進めていき、青い光が迫った時、そこにセンが太刀を肩に乗せながら待つ姿が現れた。

「セーフフィールドで戦うぞ。これならいいだろう」

 〔セーフフィールド〕。対人戦を繰り広げる際にマスターの判断で発動するフィールドのこと。青白いバリアを張り巡らされたフィールドの中で、1対1の戦いを繰り広げることができる。

 どんなに地表や建物が汚そうが、このフィールドの中ではすべて幻想によってつくられたものとなる。フィールドを解除すれば外のデータが元に戻し、中で起きた出来事はすべてなかったことになる。

 どんなド派手なパフォーマンスや破壊でもこのフィールドの中ではすべてなかったことになる。そんなすごいものはギルドマスターである資格を持つ者にだけ配られる由緒正しきの装置である。

「眠れたか」

「ああ、おかげさまで」

「そうか、俺はいつでもいい。さあ、君の能力の全力を見せてもらおうか」

 センが手を伸ばし、指で合図を送る。カムイは軽くうなずき、能力を展開する。

「使う鍵は黒・刃・具の3本」

 左手に何もなかったところからカギが3本現れる。3本のカギをセンに見せつつ「黒く染まれ『黒剣ブラックソード』」と名を上げながら姿を現れる黒い剣を左手で握りしめセンに向ける。

「後悔しても知らないよ」

「いいぜ、カムイの本気を見せてくれれば、な」

 重い腰を大きく羽のび、大きな太刀を振り上げながら高くジャンプする。振り下ろされるその太刀にすかさず、黒剣で防ぐと同時に金属音がなる。

 そういえば、剣と剣でマジかで戦うのは久しぶりなのかもしれない。そう確信しながらセンの剣を力強くはねのける。剣を振り払え少し後退するも足を強く踏まえ、もう一度高く飛び、太刀を振り下ろす。

(同じ手か)

「ファイアボルト」

(!?)

 太刀が真っ赤に燃え広がる炎に包まれる。その太刀を力強く振り下ろす。

 ドカーンと爆風がおき、カムイは両手で剣を握り、防ぐもダメージは受けてしまう。爆風が覆われる中、そこにセンの剣先が突っ込む。目を大きく開き、その剣を右に回転し避けると同時にブラックソードでセンへ攻撃を仕向ける。

 ガキン! と弾かれる。

 見えない壁がセンの周りを包んでいた。剣がふれたとき、かすかに虹色の光を発したその見えない壁は【加護】による魔法だった。

弾かれ、その隙に戦の太刀筋がカムイの左腕へとむけられた。

(ブラックミスト)と、心の中で唱え、周囲に黒い霧を発生させる。その隙にいったん後退するもセンにとっては目隠しに過ぎないもので、一振りであっという間に霧が晴れてしまった。

「〔ディフェルジェンス〕か!?」

 〔ディフェルジェンス〕。厚い壁を全身に包む重力を纏った壁魔法。身動きが通常よりも鈍くなる代わりに多少ながらの致命傷になるダメージを遮断する魔法。

「ほう、良く知っているな」

「ルゥイから教えてもらったんでね」

 そう告げておく。本当はルゥイにギルドの経費から買ってもらった知恵飴によるものだけど。どのみち教えてもらったことに違いはない。

 しかし、先ほどの〔ブラックミスト〕を晴らす一振りがやばいと焦らす。ブラックソードの技は癖があって、〔ブラックミスト〕で隠すからこそ威力を発揮するものが多い。その技も通用しないとなれば…。

「どうした?」

 動かないカムイにセンが問う。

「替える(チェンジ)」

 剣を握りしめ想いを込める。剣の本質と形状、形とカギ。それぞれをイメージし、元のカギの形状へ戻すイメージをひたすら思い浮かべる。

 うっすらと剣先から塵になり、徐々に剣の形状となっていた物体がカギへと変質していく。元の3本のカギへと姿が戻ったとき、握っていたカギのうち2つを握りこむ。すると、別の形状をしたカギが握られた手が開かれたとき姿を現す。手に持っていたカギには〔翼〕と〔飛〕と書かれていた。それを見て何かを決心したかのように言葉を発する。

「使用するカギは3本。黒・翼・飛」

 そう断言し、3本のカギを頭上へ掲げ「3つの力が1つになるとき」。

3本のカギが黒い渦を生む結晶へと変わる。

「黒く覆われた漆黒の天が告げる」

結晶を片手で力強く砕く。

「はばたけ『天黒翼ガイ』!」と、呼び叫ぶ。

 黒い翼がカムイの背中から生え、赤黒い約120センチの剣が右手の元へと出現する。その剣を掲げながら「できた…」と思わず口にする。


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