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シーンとした中、2人仲間以外とゲームをしていたルゥイ以外が口を開けて笑い出した。
「ぶはははは!!!」
「だっははは!!!」
入り口で笑いをこらえながら口にしてしまうアヤの姿と机にバンバンと手でたたきながら笑っているセン。2人は大笑いしたようだ。
笑われてもおかしくはない役職だ。ましてや、名前からして魔法で服を出現させて、装着するような役職名だ。笑われても仕方がない。ましてや召喚した者を服に代えて着るなんて、チート過ぎる名前になるのも問題なのだが、ある意味、これで良かったのかもしれない。
だけど、ここまで笑われるのは初めてで人生最大的に恥ずかしいと心に沁みていた。
しばらくして笑いすぎて疲れ切った2人がようやく口を開きだした。
「いや~ここまで新種の役職名を聞くのは4年ぶりだな」
「私も生まれて19年だけど、こんなに盛大に笑ったのは初めてなのかもな~。いやあ、役職名で“魔道召着衣”とは、かなり変わったネーミングね、それ、キミが決めたの? カムイくん」
笑いすぎて涙の一粒を目からあふれていたアヤさんがカムイに尋ねた。
「いえ…ギルドの受付の人がそう言ったので…決めたので」
カムイはそういった。顔を赤くしながら。
「そうかそうか。いや、名前からして“魔法で作った服を出現させて着衣させるような”試着師に似た感じの役職だよな。正直言って、戦闘向きに聞こえないんだが」
もう、勘弁してと思い込むカムイ。まあ、そう思われても仕方がないもしれない。
「で、どうだアヤ。聞いた感想で、見込みがあるメンバーはいるか?」
センはアヤに尋ねた。
「そうだね、見込みと言えば“暗殺者の役職を持つミルカ”と“癒魔導士のエーミ”の2人だけだね。後のカムイくんはとてもじゃないけど、今回はダメということでね」
「そうかそうか、これで2人が了承すればギルドはしばらく安定だな」
センがそう言ったのは事実である。ギルドを営業していく中で最低メンバーは6人以上なのだが、例外をはめれば5人以上であれば期間以内のだが営業することはできる。
その期間以内にメンバーが最低である6人を突破できればギルドは解散されずに済むのである。
もちろんそのことはあの資料によって知ったことなのだが、この世界ではギルドは一つの施設のようなものの集団で家族であり、パーティでただ冒険するような昔の勇者気取りでは生きていけないように設定されている。
これも邪神が打ち取られたあたりで勝利した勇者が法律に乗っ取って建てたものである。
しかし、これは聞き捨てならないことだ。
ミルカとエーミと旅してきた(あまり日にちは少ない)が、ここでカムイたちのメンバー解散の危機もある。この力を知らされるもの自体は防ぐことができるがすでに知ってしまった2人が、このギルドに入ってしまうかもしれないという存続の危機がある。
カムイにとってもいま、仲間を奪われてしまうと、自分が知りたい知識が得られなくなってしまう。それ以外に自身の能力の取引、文字が分からない、魔法を使うのは危うい。この3拍子がとくにやばいこと。
知識に関しては文字さえ読むことができれば、知ることも書き残すこともできる。だけど、いま、エーミや見る形を手放してしまったとき、カムイはこの3拍子を永久的に失う可能性も高い。
ここは引き止めなくてはならない。
「あのさ、エー…」
重要なことを言い出す直後に、エーミとミルカが用紙に印を押してしまう。ミルカとエーミは黙ったままでそのギルドの所属するのを選んでしまった。
「これで、決定ね。んじゃ、最後のカムイくんはここでサヨナラだよ。さよならー」
「待ってくれ!?」
先ほどまで明るかったアヤさんの態度が変わった。
「なに? 私に指図するの!? 半人獣のくせに。わたしはね、あなたはこのまま黙って出ていけば、通報しないと決めているの。私たち知っているのよ、“道楽から逃走したエルフの娘ミルカと施設を破壊しけが人を出した狂暴の魔獣カムイ”のことを。もし、このまま黙って出ていけば、私たちは何もしない。けれど、歯向かえば私たちはあなたを捕まえて、道楽たちに売り飛ばすわ。そうすれば、私たちのギルドはしばらく安泰ですものね」
アヤはそこまで説明しを得ると、「んじゃ、帰ってね」と、バカにした表情で脅した。
カムイは悔しさからして、アヤを引き留めた。
「ちょっと待ってください!」
「なに!?」
「俺と勝負しろ!」
「はぁ!?」
「俺と勝負して、勝ったら2人を開放しろ!!」
「何言っているの!? 2人は承諾した。もう引き返せないわ」
「なら、俺を仲間にしろ!!」
「ふざけたことを言うね、そんな役職。とんだ拾い捨てものよ。屑のクズよ」
アヤは冷たく言い捨てた
「へー、面白そうじゃないかアヤ」
見ていたセンが拳を顎に載せるかのようにしていた。
「な!?」
「アヤと君と戦って君が勝利したら、君はギルドに入れてあげるよ。それで、役職の力と君の理由を図ることもできるからね。それに、アヤは強いよ。俺よりもね」
センは意味深に笑いを上げ、この勝負を許した。
勝負する場所は喫茶の外で行うことにした。
「勝負はいたって単純。『参った』と言ったら負け。魔法・科学・技術・道具の使用条件はどれもOKだよ」
勝利する条件はどちらかが『参った』といったか。
この勝負では魔法も科学も道具の使用もどちらもOK。
(先ほど、アヤは強いといった。もし、それが真実なら力を隠すして戦うのは難しい。それに試したいものもあるし…)
カムイなりの戦略でアヤに勝とうとしているようだった。
一方で、アヤはカムイは戦力外と思っている。クズ役職だし、なによりも性能からしてあのメンバーでは最弱と見た。魔導士であるエーミよりも最弱と言えば一般人以下であることもありえる。
状況次第で一発で急所を得れば、簡単に勝てるものだと称賛していた。
時は同じく、遥か東の先にある大陸で一人の男が動き出す―――
――—その名は、竜殺しと噂される王子。名はレーディ・A・フィアンが今動こうとしていた。
「王子殿」
かいらいしく声を上げる側近の娘。王子に使える従者で、王子が6歳の頃からお世話をしている。王子の趣味ではなく、役職にあった服装を毎日同じ服をつかさず着ているのも有名な娘であった。
彼女の名はリンユ。人間とエルフの間に生まれ落ちたハーフエルフ族である。
ハーフエルフは魔力の才能と自然に満ちた志のエルフの血筋と長年における受け継いできた富と知恵を受け継いだ人間のなかで生まれた。
両親はすでに他界しており、リンユはひとりで皇子のもとに訪れ、何かの縁により、王子の元で使えることを許された数少ない人であった。
「王子殿!!」
つかつかと足音をたて、滑りゆく鏡のように反射する通路を容赦ない急ぎ足で進む。
そのあとを呼びかけながら追いかけるリンユ。
「王子殿! 何故、お急ぎを――」
「我が父から手紙が贈られた」
「贈られたとは、いったい…」
「我を遥か彼方から存在する騎士団ギルド“黒ノ銀影騎士団”に招待するというメッセージだ」
“黒ノ銀影騎士団”。その名を口にする者は数少ないとされ、貴族であり王族であっても口にすることは禁句とされているほど強者の巣窟化となったギルド名だからである。
その名を安易に口に出せるものはその脅威を知らないか、または脅威をしっており自身に自信を持っているという根拠がある程度だろう。
だが、“黒ノ銀影騎士団”の名を安直に語るものは、“黒ノ銀影騎士団”と名乗るものによってひそかに暗殺されるという噂もあるほどだ。
そんなところから申請が来るとは思えないものだ。だけど、ひそかに思えていたこともある。幾多のドラゴン族を殺し、その肉塊を束ね、肉塊からあふれ出す赤い液体を自身の体に注ぎ、笑え超えるほど快楽を得る王子だ。いつ、どのようなことで“黒ノ銀影騎士団”から申請が来てもおかしくはない。むしろ実力をすでに世に知らしめている。
「ついたぞ、リンユ。この扉の先が“黒ノ銀影騎士団”の幹部の一部がいると聞く。もし、どのような態度で襲ってきても、手出しはするな。それに、リンユに被害でも出したときには我が守ると誓う」
ガンと睨む姿勢の王子に対して、リンユは表こそ出さなかったが緊張はしていた。この扉の先にどのようなバケモノが待ち構えているともわからないからだ。




