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ギルド申請には中立する立場にある【学術国丙】と呼ばれる組織が存在する。ギルドの設立や加入などの審査をこの場所で行われる。
【学術国丙】は種族関係なく平等で、「ギルドを立ち上げたい」と申し入れれば、条件を踏まえたうえで設立することができる。今までの申請では人間に対するギルド率が高く。他の種族に対するギルドは少ないとエーミが教えてくれた。
今あるギルドでは条件的に無理で、ほとんどのギルドは初心者歓迎がないのである。ほとんどが経験1年以上を必要としているからである。
ギルドに入っていないものなどおらず、それは人間が作った法律によって定められている。
“種族問わず、生者には必ずギルドに所属すること。所属しないものには罰則されよう”とまである。
そのため、ギルドに入っていないものなどはほとんどいないのである。例外で世界の管理局や政務関係、奴隷などが所属していない。
カムイとミルカは奴隷扱いで登録されているため例外である。
一方で、エーミは特別な理由があったようで、所属はしていなかったようだ。
このパーティでは誰一人、ギルドの経験者はいないのに、ギルドを設立しようとしているのである。
別の世界で例えるなら、何も知らない未経験者が会社を設立するようなものである。
「ところで、エーミは俺らのギルド(仮)に入ったということだよな」
おもむろに尋ねた。
「そうだニャ」
「(仮)って…」
「なら、ギルド名は何になるの? それにギルドマスターは誰が?」
ミルカのツッコミを無視してカムイは疑問を打ち明けた後、すんなりとエーミは答えた。
「ギルドマスターはもちろん、カムイニャ。他に適任はだれがいるニャ」
まさかの発言をした。いきなりとは言えないが1晩過ごしただけで仲間になって、ギルドマスターに指定されるとは思わなかった。少しだけ嬉しそうに微笑むカムイ。
「私もカムイがマスターだといいな」
ミルカにも指名された。
二人してギルドマスターに指名されるとは思わなかった。カムイは2人に表情がばれないように背を向け、満面なく微笑んだ。うれしかったようだ。
「さておき、ギルド会館である【学術国丙】に向かわニャければニャ。登録する前に自分たちの役職後損じかニャ」
「はい、心得ております」
ミルカは頷きながらそう言った。
一方で、カムイは力を奪われ、この時代に飛ばされたため、自分の役職は知らない。答えることができず、黙ってしまった。
「えーと、カムイさんは…不明ということですね」
「…はい」
「それでは【学術国丙】に行って、役職を確認してきましょうニャ」
エーミの提案でとりあえず頷くことにした。
【学術国丙】はギルド会館のなかにあり、そこで予約・種族関係なしで申請する人たちの役職や能力、性能を確認しているのである。
適任か不適任かを調べるのである。
ちょうど、到着した頃には数名の男女が並んでいるだけだった。その男女のうち1人は大剣を背負った人間と他種族が残りの人数といったこところである。
人間だけがこの列で唯一、浮いているようにも見える。
「どうしたの?」
心配した後席にいたミルカが尋ねた。
「いや、何でもないよ」
心配させまいととぼけ面した。
しばらくして前にいた人は人間とエーミだけとなった。人間である男がギルドの受付で何か問題になっているようで声が聞こえてきた。
「どうして、ダメなんですか!?」
「それがよ、あなたの経験は高いことは評価しますよ。けれどね、いまどきこんな役職で活動しているのが珍しいものですよ」
【学術国丙】のものと人間と対話している声がよく聞こえる。人間の方の役職がどうやら不適合らしく喧嘩に近い状況になっているようだ。そこにエーミが男に近づき、優しく申し上げた。
「すまにゃいが、後ろがつっかえているのでニャ」
というと、男は照れ臭そうにしながら【学術国丙】の者に対して指をさしながら「文句はこいつに言ってくれ」と言った。指をさされた【学術国丙】の者はとくに相手にしないように、エーミに向かって口を開いた。
「あなたの詳細を確認しますのでどうか、この紙にてお書きを――」
手渡された紙にはそれぞれの項目に書き込むための空白がいくつかあり、それぞれに質問が書かれていた。
エーミはとりあえず受け取るなと、隣にいた男が舌打ちし、【学術国丙】に向かって「ふざけるな!!」と叫んだ。なんだなんだといった感じで受付をしていた【学術国丙】の他に奥から数人の男たちが駆け寄ってきた。
今の騒ぎを聞きつけてきたようだ。
「どうした!?」
「何があった!」
受付の人に近づく2人の制服姿の男たちは聞いた。文句を言っていた男は2人に対して受付の対応の問題について文句を言いつけた。
それに対応するかのように2人の男は文句を言っていた男をどこかへ連れ出していった。
辺りは静かになる中、残されたミルカとカムイはエーミのもと、紙を手渡され、そこに書くこととなった。
「ここは、こうですね」
と、つぶやきながら紙に一行ずつ書いていくミルカ。エーミも最後の行までいったようで、紙の端を左手で止めながら書いていく姿が見えた。
カムイも受付の人から手渡されたペンをもって、その紙に書き込もうとすると、なにやら質問と思わしき項目がなんて書かれているのかわからない文字で書かれていた。
カムイは無言で汗をかきだす。
(やばい、どうしよう。そういえば、この世界に来てから文字のことをすっかりと忘れていた…)
この世界に来てから文字のことをすっかり飛んでいた。過去から未来にこれば、文字も変わるもの。それを筆記の状態で、過去の文字で書くわけにもいかない。それに、現代の文字が読めないことも災いしてどのようにして書き込めばいいのかわからない。
戸惑っていると、ちょうど書き終えたようで、「できたー」と、ミルカが紙を両手で広げながら頭上へ持ち上げた。
エーミも「できましたニャ」と言い、それを受け付けの人に手渡す。
ミルカもエーミの姿を見て、同じように受付の人に手渡した。
「残りはカムイだけニャ。どうだニャ? できたかニャ」
「え~と…」
白紙のままなにも書けていない。チラッとエーミが見てきた際に、小声で「どうして書いてニャいの」と、耳のそばで聞いてきたので「文字が分からない」と、伝えるとエーミはその紙に書かれた文字に指をさしながら説明をしたうえで代わりに書いてもらった。
「そうニャら、そうとはっきり言ってほしかったニャ」
エーミは目をつぶり両手を腰に当てた。
エーミはカムイに紙に書かれた文字を代わりに読み取っていく。
「① あなたはギルドでの経験は何年以上ありますか」
と、あった。
「ここは嘘でも2年以上と記入しておくのニャ」
と、エーミが小声で教えてくれた。エーミに従い『2年以上』だと告げるなり、エーミが代わりに書いていってくれる。それを繰り返しながら書き込んでいく。
「② あなたの役職を教えてください」
『ここは、不明で』
『不明ニャ』
「③ あなたは以前、所属していたギルド名を複数で良いので書いてください」
『い…いくつって…』
『そこは、ギルド名は適当で、すでに解散していると記入しておくのニャ』
『そ、そこうか』
「④ ギルドに所属してあなたは、どれほどの名声・称号を得ましたか」
『特になし』
『記入はしないニャ』
「⑤ あなたはこれまでにギルド試験に何度受けましたか」
『これは?』
『ギルドに入るまで、入った後に試験を何度パスしたかということニャ。この試験をパスしたのなら、パスした試験名を記入して、パスしていないのなら、これからしますと』
『これからするで』
『わかったニャ』
あとはエーミが答えてくれたため、記入して終え用紙を受付に手渡した。
「以上で?」
再度の確認で受付の人が尋ねた。
「以上です」
それをエーミが答えた。
受付の人は用紙を束ねて、奥の部屋の中へと入っていった。
残された3人は、結果が来るまでは外で待機しようかと話している最中に、先ほど受付してくれた人が戻ってきた。
「すみません。これからカムイ様、エーミ様、ミルカ様にギルド試験を受けていただきたいのですが、お時間はありますでしょうか」
互いに顔を向け、とりあえず「大丈夫です」とだけ伝える。受付の人が頷いた後、手を上げると3人に魔法陣が展開された。それは頭上と足元のそれぞれに現れ、カムイたちが声をかけることもなく光に包まれ姿を消した。




