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いろいろと話し合った結果、猫人族から出された案は、このまま故郷に帰るかギルドに申請して人間を反対する者たちを集うギルドを立ち上げるかの2つのどちらかの提案が出された。
この世界について、カムイはほとんど何も知らない。
カムイは過去人だ。未来世界である(と、思わしき世界で)カムイの力は能力値は低い。また、カムイは何者かによって力を奪われているため、普段の能力は確かめてはいないが、一般人程度だと以前に言われていたため、モブと同等の力しかないのだろう。
「カムイさん、私も一緒に同行してもいいかニャ」
猫人族の方は同行したという提案だった。
「別にかまわないけど、どうしてですか」
カムイは猫人族に訊いた。猫人族は昨日のことが脳裏にすれ違った。カムイには関係ないのに当たった。そのまま自分の任務を放ってしまった。
でも、それとこれとは関係がない。ただ、カムイとミルカと久しぶりに話し合ったのは懐かしいような気持ちが揺らいでいたのもあった。その意味がよく分からずに、カムイにぶつけてしまったが、この気持ちがカムイとなにか関係していたのかもしれないと少しながら思っていた。
それで、猫人族はカムイと同行したいと志願したのだ。
「私は、いままでこの宿場でいろんな人を見てきたニャ。けれど、私ができるのはお客さんをゆっくりできる部屋を提供するだけ。たとえ、人間の横暴な態度や喧嘩があっても、手だすことはできずに遠目で見てきたニャ。昨晩、お泊り予定だったバンさんたちが死んだと聞かされて動揺したのニャ。それで思ったのニャ。ここで宿をしていても結局は誰一人をゆっくりとできないことに…」
猫人族はそこまで語ると、黙り込んでしまった。
過去のことをふと思い出してしまったのだろう。けど、カムイたちは簡単に了承するわけにはいかない。
カムイは、元は人間の生まれ変わり。別種族とはいえ、同じに近い種族でもあり放っておくわけにはいかないのだが、カムイはどうすればいいのか正直悩んでいた。
そこに、ミルカが答えを出した。
「わかりました。カムイさんは、動揺しているようで、代わりにわたしが了承します」
「本当ですか!?」
(え…)
ふさぎ込んでいた猫人族は顔を上げ、喜びに満ちた明るい目をしていた。
「私は今まで道楽たちの金儲けの下部でした。外の情報はよくわからないまま、私は生きてきました。カムイさんも同じ場所で知り合い、脱走してきました。けれど、カムイさんは他の国の人のようで、この国についてよく知らないと言っておりました。それで、あなたにぜひ、情報役として私たちに教えていただけないでしょうか」
ミルカはお辞儀をし、交換条件を出した。
ミルカの意見ではこの世界では知らな過ぎるとのことで、猫人族を仲間に加える交換条件として知識能力者を加えるという案を出したようだ。
カムイも『もちろん』と思った。
「よいニャ。私が宿場主として得た知識であなたたちのお役になればと思いますニャ」
そう言って快く交換条件を飲み込んでくれた。
この日、旅立つときにこの宿の扉に【しばらくの間、留守にします】と、立札をのせ猫人族は宿場に手を振った。猫人族の表情からは寂しいようでなお明るい笑顔でいた。
カムイはその表情に対して「いいのか」と聞くと、「はい、私はまたここに戻ってきますニャ。その時は、邪神を倒した後でニャ」と、猫人族は満面の笑みを浮かべていた。
「あ…そうだ!」
と、猫人族は突然、その場に立ち止り再度「今後ともよろしくお願いしますね。カムイさん、ミルカさん」と、猫人族はそういった。
「ああ、よろしく。えーと…」
「私の名はエーミ・ミフィト。エーミと呼んでくださいニャ」
「ああ、エーミさん。今後ともよろしくお願いします」
3人目の仲間が加えた。
ギルド申請をして、この地区を旅立つ予定を立てた。
ごった返しにあふれかえるほどの大人数。そこはギルド会館の目の前。ギルドを申請する者たちが集い、ギルドを作るもの、ギルドに参加希望、ギルドの名望を探すものとすべての種族が集まる。世界8番目に人々で集う場所。今日は、ここで新しくギルドを立ち上げるつもりで、この地にやってきたカムイたち。
「ここが、ギルド会館…でっかいなー」
カムイが驚くのも無理はない。カムイがいた世界にはギルド会館というものはなく宿屋や砦、町といった集落のようなものがあり、そこで集まる形でギルドと呼んでいた。
実際に、こんな大きな場所で申請したりすることはなく、誘われたら『はい/いいえ』の2通りの選択肢であった。
ギルド会館は幅600メートル、奥行きは570メートルだとエーミがそう伝えていた。ギルド申請については、この場所に来るまでの間、エーミからいろいろと情報をもらった。
そのほかにも、アイテムのことや食物のこと、文化、歴史、魔法、科学といったあらゆる分野で聞ける範囲まで聞いていた。
この世界ではどうやら、カムイが知っているようで知らないものがかなり多いとわかった。
まず、この世界には魔法というよりも科学というものが存在し、魔法といったものが時代遅れだと言われているほどだと。魔法は邪神を討滅した後、打倒した勇者によって魔法の全面的な撤退を言い渡された。なによりも魔法よりも高度な科学が発達してしまい、精神的に苦痛が来る魔法といったものが捨てられてしまったようだ。
一方で、科学だと体力の方が消耗するという理由でなぜか、魔法を捨てたのだという謎の解説が来た。
もちろん、反対する者もいたがそれが魔法を使ったものを殺害する<魔法狩り>というものが行われたそうだ。魔法を使った者、使ったと噂された者、魔法を見た者すべてに共通して<魔法狩り>が決行されたのだという。そして、その恐怖支配によって魔法は使わなくなり、科学が進展したという。
その話は数百年前の話で、現在は魔法を使っても特に処罰はされないのだが、ただ時代遅れや知識遅れだと非難されるという。
ここからはエーミの説明。
「魔法は、私にでも使えるニャ。宿場で休んでいるお客さんに<睡眠/スリープ>と<永続治療/リジェネヒール>を使っていたニャ」
「そんなことをして大丈夫!?」
「ええ、宿屋主になって4年だけど、1度もばれずにいたニャ」
威張れることではないと思うのだが。
「それで、カムイとミルカはどうなの? 私に訊いて情報を得るだけでなく私にも情報を教えてくれないと不満だニャ」
これまでの経由をルミカが話した後、カムイは力が奪われたことと邪神を倒そうとしていた過去のことは話さず、能力値が一般人程度のことを話した。もちろん、多少の魔法が使えることも加えて。
「へえー。カムイさんはユニークニャ魔法ニャのですニャ。私が知る限り、そのように組み合わせて使うという発想はなかったニャ。とくに属性を複数に組み合わせて使うニャんて」
と、少し驚いた表情を見せた。それに対してカムイが少し照れた。
「それで、ミルカさんは魔法というのもは…」
「経験ありません。ただ、カムイさんが言うように私はエルフの出身ですけども、昔の自分のことは思い出せず、ただ自分がエルフで生きていく術しかしらなかった」
としか、言わなかった。
カムイがいた時代にはエルフは四季属性で風>土>水という順番で得意だったと聴く。また、魔法も高度な3種類以上組み合わせた魔法で邪神に荒らされた森林を立て直していたとも聞いていた。
「そうですか…ということは実戦的に、私以外は特に使えないということですかニャ」
エーミにはカムイのアレのことは伝えていない。
というよりも、あの時なぜ使えたのかはよくわからないことや無闇に話してはいけないような気がしていたからだ。それもミルカは了承していた。
「……。エーミは状態と治療以外に何が使えるのさ?」
カムイはエーミに訊いた。
「私には、攻撃系は一部だけなら使えるニャ。風属性ニャ」
そういうなり、エーミは呟いた。
「突疾風/シーブルフェイ」
手を差し出した瞬間に、正面に見えないものが勢いよく飛んでいった。それは地面に舞い降りた落ち葉を拾い上げ、回転しながら一直線に前方へ飛んでいく姿が見えた。それが何だったのかはわからない。
「これが私の攻撃系の魔法ニャ」
エーミはそう告げるなり、額に汗をかいていたのがうっすらと見えた。
どうやら、魔法の消耗が少し多いようで、エーミでもこの魔法は連発することはできないと悟った。
魔法に対しての説明はここまでとされ、カムイたちは目的であるギルド会館へ向かうこととなった。




