1-1今日も僕は忙しい。
その日は、桜も満開の日。春の日差しも暖かく絶好の情報収集日なのにも関わらず僕は、クライアントに情報を売るために駅前の喫茶店に来ていた。
「で、どうなんです?うちの旦那。浮気してたんでしょうね?慰謝料のこと相談するならいい弁護士の情報売ってちょうだい!」
このダイヤのネクレスを見せ付けていかにも貴族っぽい中年太りした下品な女が僕に言う。唾が飛んできそうでいやだ。
鼻の付け根を挟んでいかにも慌しい。
「僕は情報屋ですよ。浮気捜査を依頼するなら探偵にでも相談してください。まあ、物はつかんでますけど。」
「じゃあ、売ってちょうだい!私がそれを使って旦那から慰謝料たくさんもらうから!確か報酬は慰謝料の3割でよかったですわね?」
また鼻の付け根を刺激する。
人が嘘をつくときは、目が泳ぐとか言われているけれど嘘を真実にするような捻じ曲がった嘘つきはそうならない。自分が嘘をついているつもりなんてないんだからね。
でも、こういう種類の嘘つきは嘘をつくとき特定の行動を無意識にする。この女は鼻を触るのがそうらしい。
「僕も売りたいのは山々なのですが実は情報を確信に変えるためにもう一調べ必要なんですよー。」
「ふんっ!いいわ。あと1週間待ってあげる。それまでに連絡がなかったら契約は破棄よ。」
「わかりました。一つお尋ねしたいんですが、今年のクリスマスにケーキは食べましたか?」
「?もちろん食べたわよ。三ツ星のショートケーキでしたわ。それがなにか?」
「いえ、僕個人貴方のような気品のある方はクリスマスにどんなケーキを食べるのか知りたかったんですよ。」
女が喫茶店を出てから僕は追加でコーヒーを注文した。
少したってスーツ姿のいかにも幸薄そうなサラリーマンが入店してきた。時間通りの到着だ。
「こっちです!」
男を呼び寄せる。
「待ってましたよ~。はい、ご要望にお答えして確かな情報です。やはり奥さんは黒でしょう。」
幸薄そうな顔があえていうなら幸無さそうな顔へと変わった。