議会開始
ここはとあるレイドギルドのギルドキャッスルの地下にある大きな会議室。
集まったギルドは6ギルド。部屋の中にいるのは12名。半分はギルドマスターで、もう半分は各ギルドのNo2クラス、又は補助を担っているメンバー。
「それでは、〈七頭議会〉始めます。」
席を立ち、会議の開始を宣誓したのは、このギルドキャッスルのギルドマスター蒼剣。
いつものように蒼黒い鎧を装備し椅子の後ろに彼が好んで使用している大剣<大輝剣>を地面に突き立てている。<守護戦士>としては日本サーバー名の知れた人間である。
彼の後ろには<施療神官>の優が立っている。
所属ギルドは<BLUE-Raiders>/戦闘ギルド。
「では、私達を招待したSin君。起立」
「ほいよ。今日の会議は現状の情報整理と共有が目的なんだけど、話ある奴いますか?」
指名されたので起立。正直このメンツを集めるのはめんどくさかった。
「特に居なそうなので、オレが引き続き話すぞ」
第一に提案したのは目下最大の問題である食糧問題である。
一通りの話をした後、一つ隣が手を上げる。
「何です? 灯心さん」
灯心はレベル60の<召喚術士>/<調剤師>。
連れてきているのは朝斬。88/<暗殺者>/<カースブレイド>。
所属ギルド<白杖組>/生産系。
「僕らのメイン事業分かっていってるよね」
「水薬」
「そうだよ、それで素材アイテムが残ってると思うの?」
「もちろん、余ってると思ってますよ」
そして、現実と同じ様に胃痛が加速したようで、その場でうずくまっている。
<白状組>は基本的に北に本店を構えている。そして五大都市全てに一応支店と言う形で店や倉庫を所持している。そういう訳で。素材貯蔵量は此処に居るギルドでは最大量である。それをあてに今回の提案をしている。
「うちの財政が破錠し……」
「素材は俺らが請け負おう」
そこで言葉を遮り、支援を表明したのは力神。レベル85/<武闘家>/<交渉人>。所属ギルドは<碧蛇>/生産系(たまに戦闘系)。メインの事業は売買や素材集め。と多岐にわたる活動をしている。連れてきているのは素材取集部隊の副隊長。鳥丸/レベル90/<武士>/<鬼殺し>。
「俺らの所は素材に余力がある。リストは後で送りつけてやる。覚悟しとけ」
「遠慮……」
「今更遅い。二度言わせて貰うぞ。覚悟しておけ」
「えー……、もうないでしょうか……」
テンションはダダ下がりである。
恐らく、この後ギルドに相当な額の請求書が飛んでくることは間違いない。
そして、その後どうなるかの結末まで見えてきた。
「そういえば、提案程の事ではないのですが。一つ、新規フィールドについて報告を」
「早すぎでしょ」
まさかの数日で新規フィールド開拓をするとは……。
流石は廃人共だとしか思えない。<BLUE-Raiders>のギルド方針は '実力主義' '常駐戦陣' '24時間営業' その他。とやらた圧倒的に規則が多い。ただ守られている規則は数少ないらしい。
「良い大規模戦闘場所を見つけたんですよ」
そこから、蒼剣の報告を聞いた。個人感想は'かなり面白そう'だ。
現実世界の鶴ヶ城に当たる土地。資料まで用意しているところを見る限り、完全に攻略に行こうとしている。そこで、弱々しく灯心が手を上げる。
「ちょっと待ってくださいよ……。ただでさえ、この世界に来たばっかりでそんな事してる場合じゃ……」
「もっともな意見です、灯心さん。ですが、だからこそです」
要するに、目的を持とうという事だろう。確かに、今は大した目的や目標がない。
暫しの沈黙の後、再度、蒼剣が口を開く。
「では、いつも通り多数決って事でいいですか」
結果、賛成6反対0になった。
「では、希望者を募って攻略に行きましょう」
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会議後、蒼剣に呼び出され彼らの会議室に呼び出される。
「さてと、Sin君。彼がいない事は何かあるのかな」
「あー……と、拒否されました」
「ほう」
今日の議会に参加しなかったのは 'BB工房' こと<黒刀之茶屋>。
元々、協力的ではない感じはあった。と言うのも会議への出席率がダントツで悪い。
参加したとしても、常に1人でしか来ない。おかげで、彼らの現状はわからない。
ギルドマスターは影蛙/90/<暗殺者>/<人斬り>。
フレンドリストにはレベルの情報等が全く載っていない為、直に合わないと情報の確認が難しい。
「彼らには後々、十分な懲罰を与えましょう」
「ま、その辺は任せておきます」
ギルマスのサブ職が<人斬り>と元PK大好きマンである為、何かと嫌な噂が身内でも絶えない。
「ミナミには角南。ナカスには左門さんが居ますので適度に情報貰える体制はあります」
「期待しても良いのか」
「どっちも腕はいいすよ」
「さて、問題はまだ山積みですね」
「自分たちで問題起こして何言ってんすか……。全く」