訓練
【Grki波】
ETと酷似した現実に招かれてから7日ぐらいが経った。
今日はSin達が会議に出ている間、俺とメンバーの数名は<BLUE-Raiders>アキバ支部のギルドキャッスルに来ていた。目的はこの世界での戦闘方法を身に着ける為である。彼らの敷地は俺らのと同じように一部で戦闘行為が解禁されている。そういう訳で、どんなに派手に立ち回っても衛兵が飛んでくるようなことはない。
「おーす、Geki波」
「久しぶりっすね、Castleさん」
声を掛けてきたのは同じ<守護戦士>のCastle。
現在の<BLUE-Raiders>の大規模戦闘部隊の二枚目盾を担当している。
彼と会うのは1年以上ぶりである。
「あんまり振るわないっすね」
「そりゃ、そうだ。<BLUE-Raiders>は言うなればゲーム廃人の集まりだ。現実で運動してるのなんて、そんなに居やしねーさ」
Sinからの情報では、彼らの中でも勇猛な者(又は、無謀な者)はこちらに招かれてから早々に外で戦闘して死んだり復活してきたらしい。だが、やはり現実と仮想は違うようでSin達と同じように戦闘にはまだ不慣れとの事。特定モーションから特技につながることも先日知ったらしい。
「更に、その中でモンスターと正面切って戦える奴なんてもっといないぞ」
「そう言いながら、ちょっと遠征したみたいすね」
「何で知ってんだ」
「優さんから聞きました。で、レイドゾーン見つけたとかなんとか」
「そうなんだよな……。しかもそこに行く気満々なんだよ、うちの総隊長は」
「考えそうなことっすね」
<BLUE-Raiders>は規模がでかいギルドである。ヤマトの大手戦闘系ギルドと言えば、東では<D.D.D>/<黒剣騎士団>、西では<ハウリング>など。名だたる戦闘系ギルドのどれとも違う意味でだ。
本拠地はシブヤ。ギルマスは<守護戦士>の蒼剣。その下に各都市のリーダー計4名のが存在する(Castleはアキバ担当のリーダー)。要するに、一地点に本拠地を構えるのではなく支店を構えている。
そして、彼らを中心にヤマト全土に存在するレイドを余すことなく遊んでいた。合計人数は正直分からないらしい、常時減るし増えるからだとかなんとかで。
「北のメンバーが見つけたってことっすね」
「そう言う事、奴らどういう訳か初日っから『南下政策』とか言いながらアキバに来ようとしたらしい」
「ねじ飛んでますね」
「まぁ、結局準備不足で全滅したわけだけどな」
D-ragoが居れば『阿呆ですね』が飛んできそうだ。
だが、その根性と発想は……たぶん素晴らしいモノだろう。
「まぁ、一番ねじが飛んでるのはギルマスだ」
「否定はしませんよ」
彼の装備する<黙する隕石鎧>は入手困難な所謂<幻想級>金属鎧アイテムである。当時解放されて間もない、大規模戦闘でのレイドボス勝利報酬であり、憶えが正しければ解放されて1週間後には装備していたような記憶が……。そういう意味で彼らは十分に廃人である。
「さてと、近況報告はこの辺にして……」
「俺らも始めますか……」
Castleさんは自慢の剣と盾を、俺は愛槍<三叉戟-渦潮>を構えて訓練を始めた。