迎えに向かえ
ゲーム終了。どのゲームにも置いてこの内容のボタンは必ずと言っていいほど存在している。これを押すことでゲームを終了する事が出来る。ないゲームは恐らくソシャゲぐらいだろうな。
それがないという事は現在の状況に於いては、
「帰宅できないみたいだな」
「言わなくても皆分かってますって」
「さてと、如何したもんだかな……」
要するに振出しである。人生ゲームでの最悪ゴールパターンの一つだなこりゃ。
何か策を講じる必要が新たに出てきた。七つの頭全員をアキバに呼ぶできだな。
この案件はオレらみたいな零細ギルド以上中小ギルド未満じゃ解決不能だ。
そんな時に<念話>が飛んでくる。唯一合流の遅れていた雹Joからだ。
「もしもーし。オレですが~……。何してんだお前。わあった。すぐに行く」
<念話>を切り、窓を開ける。そのまま落下し<念話>。
「雹Joがアキバの外で戦闘を始めやがった。T-basaとSikaついてこい」
「どの方向に行くんだ?』
「ここから数km先の北側フィールドに出る。異世界初の戦闘だ」
地面に当然打ち付けられたが、痛くもかゆくもない。素晴らしきかな冒険者の身体能力。
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「で、どう成ってんだ」
「状況は数体の<緑小鬼>に囲まれてるだ、なんだ言ってたな」
「雹Joってレベル80前後でしょ。この辺の敵なら瞬殺のはずだけど」
「それはゲームだった時の話だ。いい加減その辺、はっきりしとかないと後々面倒だぞ」
この2人を連れてきたのはただただ連携の確認がしたいがためである。
T-basaは<武士>/<筆写士>。死花は<神祇官>/<料理人>。
そして向こうに居るのは<妖術師>の雹Jo。
一般的なパーティは即時組める。森を走り抜けると自覚で爆音。その場所の付近に到着。
苦戦しているようだ。ゴブのHP場は殆ど削れていない。
(ゴブ×3か。エンカウントまで変わってたらきつかったけど問題ないな)
「通常戦闘。1-1-2で展開」
「『了解』」
「で、思ったんだが。どうやって特技使うんだ」
『逆に聞きたい!』
意外と楽勝だろうと思っていた。戦闘時間が予想に反して若干伸びてきている。
このままだといずれジリ貧になる。アキバに撤退する手もあるが恐らくそれは危険だろう。
「タンクが機能してる当たりヘイト機能はあるな」
『間合いはもう掴んだ。後は特技が使えれば……』
「その辺のアニメ見たく技名叫んでみるか」
『勝手にしてろよ』
「そーかよ……」
「<アサシネイト>!!」
武器攻撃職最強<暗殺者>が放つ必殺技とも言える特技。固定ダメージ+階級に応じた追加ダメージの技はこの辺の敵にはオーバーキル気味だろう。これを撃ってみたくなったのはただの気分だ。
「あっ、発動した」
『それが正攻法か。なら此処からは俺の独壇場だ』
Tbasaは<武士の挑戦>から入りゲーム時代と変わらず壁役をこなしてくれている。
あとは死花と雹Jo。後ろを振り返ると数体のADDゴブに攻撃されている。その間に割って入るように<アクセルファング>。
「まあ、弱いの狙うのは戦の鉄則だわな。だけどな……」
ここ数日前から溜まっていたストレスを晴らすように、特技を連発。
「身内に手ェ出すのは、盾と剣をへし折ってからにしろよ!」