翌日②
「阿呆か、お前は」
また、どつかれる。今度は<武闘家>/<竜殺し(ドラゴンスレイヤー)>D-ragon。
「痛いっての……だから、半信半疑だっ……」
「どうした」
「ふーむ。どうにも気になっていた事があるんだよな」
「何がだ?」
「感覚がリアルすぎる」
先程の爆走中もそうだった。何と無い状況を割と「ゲームだから」で片づけていたがここまでくると確実にゲームではないだろう。あり得ない話であるが、現代技術ではまだ、仮想と現実を繋げる術はこれと言ってないはずなのだが。
「ま、追々考えるか」
「考えるの投げたな」
「良いじゃないすか。このままだとオーバーヒートしそうですし」
「やはり、度し難いほどの阿呆だな」
「んだと。後で覚えときやがれ」
恐らく日本人プレイヤーの大半はこんな感じだろうな。現状を受け入れている者とそうでない者。
ある程度現状を整理する為、全員を2階の広間に集める。アイテムはそのまま残っているので全員が適当な位置に座っている。
「さてと、状況が全く理解できていない者、挙手!」
7人中5人が挙手。Geki波は年長者だからなのか理解が速い様だ。
「まぁ、そうなるわな。では、現状の打開策を提案できる者。挙手!」
1人手を挙げている。<森呪遣い(ドルイド)>/(現在)<見習い徒弟>の翡翠。
恐らく此処に居るメンバーの中で一番賢い奴である。
「ホールの外に行きませんか?」
提案なモノしては、全うなモノだろう。
オレは'すぐにアキバを出て戦闘しよう'を提案しようとしてたからな。
「採用。具体的な策は」
「それはギルマスの考える事でしょ」
「何故にそうなる」
「だって、攻撃職でしょ」
「職は関係ないよな、この状況で!」
相も変わらず可愛げのない後輩だ。確かにオレは提案してみろと言っただけ。
具体策まで出せとは言っていない。しゃーなし。
「メンバーを2つか3つに分けて情報収集。数時間後に再集合。以上」
満場一致で「異議あり!」が飛んでくる。
「何でだ!」
「相変わらず、指示が雑過ぎる。細かく出せ」
「そんなこと言って良いのか? 全員にここで毒瓶を投げつけるぞ」
と言って魔法鞄から数本の毒瓶を出す。本来は<暗殺者>の特技にある毒の威力を上げる為のモノ。
数名が臨戦態勢であったが、すぐにそれを解いた。そこで数名があることに気付いたようだ。
「魔法鞄が使えた。なら、普通にメニュー機能が使える」
「ログアウトか……」
「バカマス、どうやってメニューを開いたんですか」
「額に何かを集中させるような感じ……」
「阿呆だな」「ですね」
「喧しい。事実だ」
数名がそれを実践している間に、友人帳を確認する。幸いにも知り合いは殆どログインしている。
この時間でログインしているとは。戻れたら終わってない課題でも片すか……。
(いや、でも……。戻るには結構惜しいな。いやでもアプデなら今後もこう言う事が可能なわけで……)
一人で勝手に葛藤していると後ろが騒々しい。ログアウトでもして消えたか。こう弾けて、ティウンティウンしたか。
「ログアウトの項目がないだと……」