剣VS剣
【蒼剣】
ガイアドレイクを撃破し、彼の居た<地の間>はセーフゾーンとなり、ここを中心にと幻獣中心の探索を行っている。と言ってもモブの属性が変わったせいで攻略に時間がかかっている。
「中々、上手くいきませんね」
「しょうがないですよ。それが大規模戦闘の常識ですから」
だが、時間はあまりかけられない。
敵サイドからすれば恐ろしいのは'相手が不死である'こと。
此方サイドが恐れているのは'相手が無限である'こと。
どう攻略しようが必ず復活される。それではただ時間と物資を消費するだけだ。
確実に攻略をしなければならない。
「ふーい、総隊長さん。第二の間を見つけた」
「ご苦労様です。道は」
「これから書き起こす。それよりも厄介そうだよ」
「問題ないでしょう」
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【Sin】
「問題大ありだろうがー!」
到達したフィールドは現在進行形で炎上している。
踏み入れば確実に<炎上>の状態異常が入る。
「こいつは俺らにとってHP管理が……」
「言うな浅桐。オレ等のHPは後方に丸投げだ」
「延々と炎々し……」
「はい、そこの氷上黙りなさい」
正直、結構離れているここでも熱い。HPが減っているわけではない。
現代の引きこもり日本人にはつらいモノが在る。
『特攻は不味いですね』
「とにかく被害軽減だろ」
とにかく全員で攻略の手立てを立てていく。
防御パターンは〈施療神官〉と〈森呪遣い〉の<エナジープロテクション>を中心の属性耐性強化。
<エナジープロテクション>は周囲の味方に特定属性ダメージを軽減するオーラを付与する強力な支援魔法。オーラの色は属性によって変わる(火炎なら赤、冷気なら青など)。持続時間は5分間。
「後は……与攻撃パターン」
遠方に見える敵の武器は発生している蒸気や黒煙で全く見えない。
『全員に反応起動と障壁を付与。MP全回復完了後。攻略開始です』
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「ちくしょー。クソ熱い」
近づけば近づくほど熱い上に<炎上>のダメージが入る。精神も肉体も磨り減る。
例えるなら炎天下の元でコンビニ行くときみたいな感じだ。しんどい。HP管理は後ろに丸投げ。
思考が纏らない。フラフラする。
「<フリージングライナー>!」
後方から冷気の雪崩が襲い掛かってくる。直線状に解き放たれた、敵を押し流す冷気属性の範囲攻撃魔法。威力の高さと同時に特徴的なのが、直線的な効果範囲と「範囲内の敵を“下流”に押し流す」という特性である。これにより近寄ってきた敵を遠くへ追いやったり、前衛のいる方向に強制的に移動させたりと応用範囲が広い。
「ったく、あの近接魔術師……」
【氷上】
「おいコラ。何勝手に前に出てんだ。敵愾心集まるぞ』
「大丈夫、消火活動させてもらうぜ」
効果は抜群だ。地面の炎は確実に鎮火している。今回の盾役のCastleさん達が一気に進軍してくる。
そして、鎮火した地面の上にいるメンバーの<炎上>のステータスがキャンセルされている。
つまり、水や氷で鎮火が出来る。なら……
「<ブレイジング>……」
『辞めろ、バカ。とにかく消せ』
「え~」
<フリージングライナー>は再使用時間が長いモノに分類される。ここでは<フリジットウィンド>で短時間/狭範囲で鎮火活動に努める。奇策は大当たりだ。
『大地の炎を消し去ったか……<冒険者>』
『バフを氷上に集中』
「出し惜しみはなしって話だ。強雹杖。'解刀'」
<大災害>以前から使用していた仕込刀の杖刀。性能は氷/水属性魔法の効果上昇。使用する炎属性魔法攻撃の弱体化。第二の性能は刀を解き放つことで追加特技が入る。縛りは氷属性のみになるが、この戦闘に於いては諸刃の剣だろう。
「<氷結界>発動」
ゲーム時代と同様に体が徐々に白くなっていく。同時に自らの体温が下がる感覚を覚える。
灼熱の大地相手なら適温だ。巨人はその巨体のせいで足元に攻撃できない。この隙を活かして懐に近づき、地に手を付け魔法陣を重ねていく。
「<積層型魔方陣>展開」
『第二前衛気を付けろよ。全体攻撃が足元から出てくるぞ』
「とっておきの<フロストスピア>だ!」
本来、敵単体の氷の柱が、巨人の足もとから大量発生し巨人の体を貫いていく。
「これって……」
『驚くな、夕暮。Sin、解説を』
「あー……。簡単に言うと単体攻撃<特技>を全体攻撃<特技>に変換したって感じだな」
巨人の下で氷上が行ったのは<妖術師>の必殺技:<ラミネーションシンタックス>。
次に使う単体攻撃魔法の効果を拡大、範囲攻撃化する積層魔法陣を展開する自己強化魔法。
範囲化することで20%ほどの威力減衰が発生するが、元々単体魔法は高威力なものが多い。
減衰してもなお充分な威力を発揮する。ついでに<氷結界>で冷気属性関連は底上げされてるから効果はあるはず。雹joのMPが切れたのと同時に地面が再燃。巨人は脚を上げ、踏みつぶしにかかる。
「下がれ雹jo」
「あー、無理っぽい」
解刀状態では火炎/打撃属性にめっぽ弱くなる。簡単に言うと体が氷になる。
そんなわけで、踏み潰され溶かされた。
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雹joの残した情報を統合すると、やはり冷気属性に弱いだけ。
更には先程の巨人よりHPが低い上に防御力も低めの様だ。
「相手の耐久値が低いなら……」
オレの持つ幻想級の強力な武器。妖刀:絶耐絶命。<暗殺者>専用装備であり入手は非常に困難。
柄頭に押し込むタイプのスイッチが在る。これを押し込むと見慣れたウィンドウが開かれる。
「消費量はいつも通りでいいな。全員サポートよろしくな」
『「了解」』
「そんじゃ行ってみようか。妖刀:絶耐絶命。オレの命を持ってけよ」
消費量は残りHP1にする10000と少し。絶耐絶命の特徴は高い物理攻撃力とHPの攻撃力変換性能である。
自身のHPをこの刀に食わせることで、攻撃力をさらに上乗せする。持続時間は食わせたHPに依存する。
10000食わせて10分。と非常に燃費が悪いが……
(紙装甲相手なら問題なし)
「対属性強化。脈動回復。障壁。とにかくオレにつぎ込んどけ」
バフ総数10。この瞬間だけなら<七頭>最大出力のDPSを叩きだせる。
<守護戦士>も裸足で逃げ出すブレードである。
「<デッドリーダンス>」
秒単位で攻撃できる<デッドリーダンス>でダメージを重ねていく。
これだけで結構削れている。ここまでくれば……
「<絶命の一閃>でドン!だ」
頭からズバッと切って、巨人は溶岩のようにドロドロ崩れていった。
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「意外とさっくりしてたな」
「だな……」
ここまで弱いと正直疑わしい。予想はまだ正しい方向に向いている。
根拠は<地の間>と同じ状況になっていない。
『中々の強さがまだ足りない。<爆裂蒸気>』
「何処だ……」
地面が振動し足元が赤く光り始める。そして<炎上>のバステ。
復活するのだろうが、どこから出てくるのかがわからない。
「何処で復活する……」
思考能力が低下した脳で考えろ。どのような現象で復活してオレらに攻撃するか。
紅く光るのはフィールドゾーン中央。だが、次は入り口。
次に天井が光り、そこからひびが入り大量の水が流れ込んでくる。
「何かやばいぞ」
『全員流されないように構えろ』
イヤ、無理だろ。水量は恐らく<フリージング・ライナー>の倍以上。
当然耐えることは不可能。全員が壁際まで流される。




