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第49話 ついて行く

 祭りも終わり、すっかりと日常の風景へと戻ったベラーシの街。

 その中央通りをギルドに向かって僕たちは歩いていた。

 思えば貴族の一件以来、ギルドの依頼を全く受けていない。

 現在のギルドランクはFランク、そろそろEランクくらいには昇格したいものだ。

 その為には、やはりこまめに依頼を受けるしかない。 


「うう〜っ。あの人今見てたの。きっとばれたの」


「アリア気にしすぎ。大丈夫だよ!」


 帽子を深くかぶりなおすアリアにミウがツッコむ。

 ミウとアリアはすっかりと打ち解けていて、昔からの親友のようだ。


「アリア。心配だったら留守番してても良かったんだよ」


 僕の問いかけに、アリアは帽子を押さえながら首を横に振る。


「ううん、私もついていくの。平気なの」


 やはりその意志は固いようだ。






「留守番は嫌なの。私もついて行くの」


 スラ坊と供に留守番をお願いした時のこと、アリアはそれを明確に拒否した。


「いや、だって外は危ないよ。ましてや僕たちは危険な場所に行くこともあるんだ。ここはスラ坊に家事を習って――」


「ミウちゃんも戦っているの。私も戦えるの」


 真剣な眼差し、その目の奥に宿る真っ直ぐな意思に思わず頷きそうになるが、ここはぐっと堪える。


「……試してみたら。……そうしないと終わらない」

 

 ミサキの助言に大きくため息をつき、「実力不足だと思ったら連れて行かないよ」との約束を取り付け、しぶしぶ了承する。




 そして、僕たちはアリアの戦闘能力を見るために別荘の庭へと出た。


「これを使うの」


 アリアが腰につけた小さな箱から取り出したのは、彼女の背丈と同じくらいの大きな弓。

 そのマジックアイテムも気になるが、今大事なのはそれでは無い。


「狙いはあそこなの」


 その弦を難なく引き絞り、少し離れた大きな木に狙いをつけた。

 その矢の先には何かの力を感じる。


「てやぁっ!!」


 アリアの気合と共に、矢は青白い光を放ちながら、的である木の幹に深く突き刺さる。

 するとその場所から冷気が発生、数秒後には木は完全に氷で覆われていた。



「アリア、凄ーい!」

 

 ミウの驚きの言葉が、呆気にとられていた僕を再起動させる。

 アリアはじっとこちらを上目使いに見て、僕の答えを待っていた。


「まだ何か出来るのかい?」


「雷と闇ものせられるの」


 風と闇の属性もを矢に乗せて放つ事が出来るらしい。。

 使いどころによって有効ではある。


「――ふぅ、わかったよ。ただし、危険だと思ったら別荘に帰すからね」


「やったね、アリア!」


「うん。ありがとう、ミウちゃん」


 2人で飛び跳ねて喜んでいる。

 何だかんだで、また後衛が増えてしまった。

 バランス悪いなぁ。




 ――以上がアリアを連れて行くこととなった事の顛末だ。

 何がアリアをそこまでさせるのか。

 単に置いて行かれたくないという理由だけでは無い様な気がするが……。

 そんな事を考えていると、いつの間にかギルドの前まで辿り着いていた。



「あら、カナタくんじゃない。久しぶりね」


 中に入ると、カウンター向こうのマリアンさんから声がかかった。


「えっ、この前会いましたよね?」


 僕はカウンターに歩み寄る。


「ギルドがって意味よ! まったく。いつからお姉さんをからかうようになったのかしら」


 マリアンさんは頬を膨らませる。

 いや、そんなつもりは無かったのだが……。


「まあいいわ。依頼を受けに来たんでしょ。とっとと選んでらっしゃい。……あら、その子は?」


 マリアンさんの目線の先には、僕の後ろに隠れるように立っていたアリアがいた。


「ああ、この子ですか。まだ冒険者見習いなんですが、僕たちと一緒に行動することになりまして……」


「よろしくなの」


 アリアは僕の服の裾を握りながら、帽子が落ちない程度の軽いお辞儀をした。


「へえ、女の子なのね。こんな小さい子が冒険者って、大丈夫?」


「こう見えても僕とそんなに変わらないんですよ」


 同い年というと疑われそうだったので、あえてそこは濁す。


「そうなんだ。てっきりカナタくんが何処かから攫ってきたのかと思ったわ」


「そんなわけ無いじゃないですか!」


 まったく、その手の冗談は一回で十分だ。


「まあそれはそれとして、その子、冒険者登録はまだなんでしょう。やってく?」


 ……たしか登録って種族とかが表示されちゃうんだよな。

 別に僕とミサキで依頼を受ければ良いわけだし、ここは登録無しでいこう。


「いえ、今回はやめときます」


 そんな僕を見て、マリアンさんが目を細めた。


「ふ〜ん。何か訳ありなのかしら?」


 ぐっ、鋭い!

 僕はなるべくポーカーフェイスを心掛けながら答える。


「……まさか、そんなんじゃ無いですよ」


「…………まあいいわ。登録したくなったら声をかけなさい。ギルドはあくまで中立だからね」


「はい、ありがとうございます」


 誤魔化しきれたかは疑問だが、とりあえずこの場は切り抜けた。

 僕たちはカウンターを離れ、奥の掲示板へと向かった。





「とりあえず今回は様子見って事でこれにしようか」


 アリアの初同行とあって、危険そうな依頼を見送ることにする。

 僕が選んだ依頼は、おなじみのワイルドウルフ討伐。

 どうやら南の方で大きな群れが発見されたらしい。


「……良いと思う」


 3人の同意を取り付け、カウンターに向かう。

 受け取ったのは毎度のことながらマリアンさんだ。


「はい、受付完了よ。行ってらっしゃい」


 マリアンさんの見送りを受け、僕らはギルドを出るのだった。



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