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第4話 魔法習得

「はっ!」 「だあっ!」 「どりゃあっ!」


 掛け声と共に振るわれるロングソード。

 しかし、その全てがいなされ、すかされ、受け止められて掠りもしない。

 少しでも攻撃の手を緩めようものなら容赦なく反撃され、息つく暇もない。

 その事がじわじわと僕の体力を削っていく。

 僕はどうやら転生して地獄に迷い込んだらしい。

 そう思わせるには十分な特訓が、ダグラス邸の庭先で行われていた。


 この特訓で実際に手に持っているのは真剣だ。

 「当たったら危ないのでは?」とダグラスさんに言うと、「はっはっはっ、当ててみろ」と笑われてしまった。

 それでも初めは恐る恐る振り回していた剣も、今では全力で当てにいっている。


「おらっ! それが全力か? もっと底力を出してみろ!」


 気力が萎えかけたところにダグラスさんからの発破がかかる。

 鬼教官との特訓は、それから小一時間ほど続いた。




「だいじょうぶ?」


 その場でへたり込んでいる僕を心配して、ミウが駆け寄り声をかけてくれる。


「……ああ、何とか生きてるよ」


 僕はミウの頭を撫でながらそう答えるのが精一杯だ。


 この特訓で確信したことは、前の身体よりはかなり体力があるということ。

 以前の身体だったら、おそらくこの特訓に数分もついていけないだろう。

 もし体力が増えていなかったらと思うとゾッとする。


「坊主! 明日からは本格的に特訓するからな!」


 だが、以前より上がった体力がはたして異世界基準で高い方なのかはわからない。

 それは機会があったら検証しよう。

 どう考えてもダグラスさんは基準外のような気がするので当てにならない。


「ダグラス、そんなにへばらせてどうするの。この後魔法を教えるから、程々にしておくように言ったわよね」


 笑顔のまま向けられたアリシアさんの言葉にたじろぐダグラスさん。

 その額には、特訓の時には微塵も見せなかった汗が滲む。


「い、いや……、ついつい熱が入ってな。でも体力は残っているはずだぞ! 坊主、問題ないよな?」


「……は、はい」


 先程とは打って変わっての懇願するような眼差しを向けられ、流石に駄目ですとは答えられなかった。

 ただ、少し休ませて……。


「ふぅ……、まあいいわ。魔法については午後からにしましょう。カナタくん、無理そうなら言ってね」


 先程ダグラスさんに向けた笑顔とは雰囲気の違う優しい笑顔が僕に向けられた。


「はい、わかりました」


 立ち上がる体力も無く、僕は地面に寝ころんだまま返答した。







 午後になり昼食も済ませ、いよいよ待望のアリシアさんの魔法講義が始まった。

 剣術特訓の時とは違い、僕の隣ではミウがやる気を出している。


「あら、ミウちゃんも勉強するのかしら?」


「キュ〜!(もちろん!)」


 ミウは小さい手をちょこんと挙げてそれに答える。

 言葉は通じなくとも意味は分かったのか、アリシアさんは僕だけでなくミウにも魔法の基礎を教えてくれた。


 

 それによると、魔法の属性は、火、水、風、地、聖、闇、無の七属性があり、それぞれ使えるかどうかは個人の適性による。

 一属性しか使えない人もいれば、多い人で三属性を使える人もいる。

 四属性以上使える人は未だかつて聞いたことが無いとの事。

 ちなみに、アリシアさんは、水、風、聖の三属性を使えるらしい。


 また、使える魔法については、適性のある属性であれば、一番基本となる初期魔法(火属性でいうとファイアボールのようなもの)はすぐにでも使えるようになる。

 その上の魔法を覚えるには、その基礎の魔法の熟練度がある程度必要らしい――というのが、この世界の通説である。

 書物で上位魔法を覚えようとしたとき、その下位魔法をよく使っていた人とそうでない人で、前者のみ覚えられた。

 その結果論が通説の元となっているとの事だ。


「さて、説明はここまでにして、適性を調べましょうか」


 アリシアさんが、何やら丸い物体を取り出す。

 よく占い師が使う水晶玉に似ている。


「先ずはカナタくんね。これの上に手を置いてくれるかしら」


 言われるがままに、その青白い水晶玉の上に手を置いた。

 すると、その水晶の色が目まぐるしく変わる。


「えっ!? すごいわ! カナタくん、貴方すべての属性に適性があるわよ!」


「本当ですか!?」


 一応驚いたふりをしておいたが、何となくわかっていた。

 女神様が才能チートと言っていたからね。


 続いてミウも水晶に小さい手をちょこんと添える。

 すると、僕の時と同じような現象が再度起こった。


「嘘……、ミウちゃんも全属性……」


「えっ!?」


 これには僕もびっくりした。


「キュ〜♪(やったね♪)」


 結果を受け、ミウは嬉しそうだ。

 ピコピコと短い尻尾が左右に揺れる。

 僕に向けるドヤ顔が可愛かった。



 その後、それぞれの属性の初期魔法を教えてもらい、今回の授業は終了となった。

 ちゃんと火の玉とかを出せたのにはちょっと感動した。

 異世界に来たなら魔法を使う、一つの夢が叶った気分だ。



 

 間借りさせてもらっている部屋にミウと供に戻ると、僕の頭の中でメッセージが響いた。


『魔法使用の条件を満たしました。魔法ステータスを表示します』


 その声と共に、目の前に透明なスクリーンが映し出された。



 カナタ


 火 ファイアボール

 水 ウォーター

 風 カッター

 地 石つぶて

 聖 ヒール LV1

 闇 ダークボール

 無 グロース LV1


 スキルポイントは 残り6ポイントです。


 ※女神ボーナス 一属性の極大魔法をどれか一つ取得可能


 


 何だこれ? ゲーム?

 表示に現れている魔法は、先ほど覚えた魔法だ。

 しかもポイントって……。

 ひょっとして、新しい魔法を覚えるのはポイント制なのか?


 属性の横にボタンのようなものがあったので、それを試しにクリックしてみる。

 すると、その属性の魔法が別窓でズラリと並んで現れる。

 ただし、ほとんどが灰色の文字になっていて、一部のみ白抜き文字、これは取得可能な魔法って事かな。

 魔法名の横には括弧で数字があり、恐らくはこれが必要スキルポイントだろう。

 また、窓の右端にはスキルポイントが1ポイントから順に表示されていて、クリックするとそのポイントで丁度取得できる魔法のみの表示になった。

 どうやらソート機能もついているらしい。


「さて、どうしようか?」


 他の属性魔法の中身もみて、検討した結果、四つの魔法を覚えることにした。


 火 ファイアアロー   2ポイント

 地 ストーンニードル  2ポイント

 聖 ヒール LV2   2ポイント

 水 アブソリュートゼロ  ――


 


 ちなみに、ミウにもこの表示が現れ、僕にもその画面が確認できた。

 ただし――


「う〜っ、ポイントが無い……」


 ミウは新しい魔法を覚えられなかった。

 どうやらポイントが無いらしい。

 ひょっとして、僕のスキルポイントって、あの狼を倒したからか?

 それならば、ミウのスキルポイントが無いのも頷ける。


「う〜っ! ミウ、頑張ってポイントためるよ!」


 新しい魔法が一つも取れなかったのが余程悔しかったようだ。


「ああ、一緒に頑張ろうな」


 決意を新たに、僕はミウの頭を優しく撫でた。


魔法使用条件を変えてみました。

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