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第42話 迎え撃て!

 薄暗い檻の中に閉じ込められていた。

 そこには絶望以外、何も存在していなかった。

 仲間たちはもう口を開かない。

 ただ座して死を待つ、それしか出来なかった。




 何人かが連れて行かれた。

 その後に目の前に現れたもの、それは狂気としか思えなかった。

 その男が連れている怪物、その腕には見慣れた痣があった。

 ある者は激高し、またある者は泣いた。

 その様子を白い服を着た人間は薄ら笑いで見つめている。

 ………………

 


 

 数日後、また新たな仲間が檻に入ってきた。

 3回目の調査隊、今回もまた失敗に終わったようだ。




 妻と子は元気だろうか。

 出来る事ならあの地を諦め、別な場所で静かに暮らしてもらいたい。

 これと係わりを持ってはいけない。

 しかし、それを伝える手段は私には無い。




 仲間は既に半数に減っていた。

 既に覚悟はできている。

 思えば、最後以外はそれほど悪い人生では無かった。

 家族との幸せな日々、子供の成長。

 最後まで見届ける事が出来なかったのは残念だが……。

 

 どうやら迎えが来たようだ。

 いつもと違う人間だが、そんな事はどうでも良い。


 怯えている仲間たちを後ろに庇うように前に出る。

 遅かれ早かれだが、今の私にはそれ位しか出来ない。

 さあ、私を連れていけ。









 しかし、女神様はどうやら私をお見捨てにならなかったようだ。


 


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「魚人の集落の方たちですね。トーマスさんに依頼されてきました」


 檻の中に入っている魚人たちに声をかける。

 魚人たちの反応が薄い。

 どうやら憔悴しきっているようだ。


 檻の鍵を壊し、念のため魚人たちに治癒魔法をかける。

 魚人たちは抵抗することも無く、ただ身を委ねている。


「……君たちは、本当に助けに来たのか……」


 魚人の一人がようやく口を開き、僕に話しかけてきた。


「はい。ただ、いつ追手がくるか分かりません。疲れているところ申し訳ありませんが、急いで下さい」


「……わかった」


 その魚人が率先して仲間に声をかけていく。

 少しだが魚人たちの目の色に生気が戻ったような気がする。


「さあ、時間が惜しいです。行きましょう!」


 魚人たちを守る様に、僕たちは出口へと向かった。






 ……静かすぎる

 僕はミサキに目配せする。

 ミサキは無言で頷いた。


 あの男は僕が魚人たちを取り戻したいのを知っている。

 それなのに、あまりに簡単に救出できた。

 恐らくこのままでは終わらない。

 



 何事も無く階段まではたどり着いた。

 魚人たちは黙ってついて来ている。


「大丈夫。上の部屋には何もいないよ」


 ミウの言葉を受け、階段を上がる。

 何もない部屋もそのままで、罠の類は無さそうだ。


 

 僕らはそのまま建物を出る。

 すると、そこには予想通りあの男が僕たちを迎えた。



「くくくくっ……。あれを倒すとは中々やりますね。私のゴーレムも倒されていましたが、あれも君たちが……」


 相変わらず自信ありげに話す男を見て、魚人たちの目に怯えの色が浮かぶ。

 僕の答えを待たずに男は話し続ける。


「ゴーレムを倒した君たちにあの合成魔獣では少し力不足でした。だが、安心してくれたまえ。とっておきを用意させて貰ったよ。くくくくっ……。助かる希望が断たれた後の魚人たちの絶望。実に楽しみですよ」


 魚人たちを見回し、嫌らしい笑みを浮かべる。


 その為にわざわざ魚人たちをここまで逃がしたって訳か。

 相変わらず悪趣味な男だ。

 でも、裏も無く正面から対峙してくれるのは有り難い。

 自分の勝利を信じて疑わない自信過剰さの成せる技なのだろう。


「古代の知識とこの私の頭脳の融合、解くとご覧あれ。さあ出ませい! 我が忠実なる僕よ!!」


 建物の一角が破壊され、その何かが現れる。

 胸部分は赤、その他は銀色のメタリックボディー、両手にはサーベルを持っている。

 背丈は成人男性程だが、その迫力はゴーレムに勝るとも劣らない。


「ピピピピッ。キドウシュウリョウ。ゴメイレイヲ」


「メタルゴーレムよ! 奴らを倒せ!!」


 機械的な単眼が視界に僕らを捕え、電子音を発する。


「ピピピピッ。メイレイスイコウ、ハイジョシマス」


 まるで地面を滑るように前進し僕らに迫る。

 速い!

 その速度はゴーレムの比ではない。


「後ろを頼む!」


 2人にそう声をかけ、僕はメタルゴーレムの刃を受け止めた。




今回、話が短くて申し訳ありません。

次回はいよいよ戦闘パートです。

ご意見・ご感想お待ちしております。

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