表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/213

第29話 アイテム入手!?

 暗くなってからが本番とばかりに、次々と魔物が出現する。

 霊体には魔法、実体のある魔物には剣と魔法、時折聖水も織り交ぜて使用しながら倒していく。

 おかげでアイテムの数はかなり増えたのだが、それほど価値のあるものはまだ手に入っていない。

 ガローニたちがどれくらいの物を手に入れているかが分からない以上、このまま地道に倒していくしかないだろう。

 しかも、リミットが明日の日没までということは、夜間での戦闘は今日一日のみ。

 疲れと相談しつつ、ここから朝までの戦闘コースが確定だ。


 エルドアの墓場はとにかく広い。

 現在、面倒くさくなって直線的に歩いてはいるが、未だに端が見えない。

 戦士たちの墓場ということを聞いたが、いったいどれだけの人が亡くなったのだろう。

 その時代に放り込まれなくて良かったと思ってしまう僕は果たして不謹慎だろうか。


「来たよ、カナタ!」


 この墓場に来て気付いたことだが、魔物の感知能力に関してはミウが一番優れているようだ。

 こうして一番先に魔物の接近を教えてくれる。


 程無くして、スケルトンがアイテムへと変貌する。

 スケルトンの相手もだいぶ慣れてきた。

 パワーも無い、かといってそれ程速いわけでもない。

 聖属性の魔法さえ持っていれば、わりと楽に倒せる魔物だ。


「――って、油断してると何かあるんだよね」


 僕が冗談めかして言ってみる。


「……カナタ、大正解。商品はレアアイテムです。但し、倒せたら……」


 ミサキの発言と共に正面から感じる怪しい気配。

 かなり嫌な予感がするんですけど……。


 地面に横たわっている白い墓石がゆっくりと横にずれる。

 さらに濃くなる禍々しい雰囲気に僕は息を呑んだ。


「出てくるよ!」


 穴の淵に魔物が手を掛ける。

 濃い紫色に変色した手、いや、骨だ。

 その持ち主は、穴から這い出すように僕たちに正体を見せた。

 スケルトンより一回り大きい体躯に、全身紫色の骨格、何よりその禍々しさが段違いだ。


「……スケルトンロード。……大当たり?」


 当たりかどうかは微妙なところだ。

 そりゃあ良いアイテムを手に入れなきゃならないけど、倒せるのかが問題だ。

 この勝負を発案したギルドマスターの『お前らなら問題ないだろう』というセリフを信じたい。


「キュ〜!!」


 先ずはミウが先制攻撃。

 聖なる矢をロード目掛けて放つ。

 しかし、ロードは慌てず、背中に背負っていた大きな盾を手に取り身構える。


 バシュッ!! と音がして、矢が盾に弾かれる。


「くそっ!」


 僕はロングソードで足元目掛けて斬りつける。

 その太刀をロードは難なく剣で受け止めた。


「……カナタ」


 ミサキの合図に僕は後ろに飛び退く。

 その直後、小爆発がロードを中心に発生する。


 足はそのままに、膝から上のみを仰け反るように倒れていたロードは、再び膝を支点に、上半身のみを勢いよく起こす。


「うわっ、何て器用な……」


 その不気味さにちょっと引いてしまった。

 いや、そんな事を考えている場合じゃない。

 あの防御を崩さないと……。


「ミウ、ミサキ!」


 二人に短い言葉で作戦を告げる。

 その作戦を受け、二人はその場を散開した。

 ロードの正面に僕、その斜め後ろに二人、それぞれが三角形の頂点の位置になるようにロードを取り囲む。


「いくぞっ!!」


 気合を入れてロードに迫り、剣を振りかざす。

 もちろんその剣が受け止められるのは百も承知だ。


 案の定、ロードはその剣で僕の剣を受け止め、力で押し返そうとする。

 スケルトンとは比べ物にならない衝撃にふらつきながらも、力を振り絞り、弾き返されないように踏ん張る。

 耐えるのは一瞬だけで良い。

 なぜなら――


 スケルトンの斜め後方から放たれる魔法の矢。

 ロードは左手方向のミウの魔法は盾で受け止めるが、ミサキの魔法を受け止める手段は無かった。


 大きな衝撃音とともにミサキの魔法が直撃、僕もその爆風に後方に吹き飛ばされる。

 慌てて立ち上がった僕が見たものは、左半身がえぐれているロードであった。


「――――――――ッ!!!!」


 ロードはこの世のものとは思えない叫び声を上げ、ミサキに向かって突進する。

 表情こそないが、怨念というには優しいくらいの恨みがこちらにも伝わってきた。


 僕は慌てて駆け出す。

 間に合ってくれ!!


「ギィィィィン!」


 当たりに響いた金属音を聞きながら、僕はロードにとどめを刺す。

 ミサキはというと――。


「……平気。少しすりむいただけ」


 後ろに倒れこんだ時の擦り傷のみで済んだらしい。

 そう、ロードの剣を受けたのは女神様に貰ったスタッフ。

 思いのほか頑丈に出来ていて、ロードの剣を受けたにもかかわらず傷一つ見当たらない。


「ミサキ〜!」


 ミウも慌てて駆け寄ってくる。

 ミサキが大丈夫な事が分かると、そのままミサキの胸に飛び込んだ。


「すっごく心配したんだよ!」


「……これ位では私は倒れない」


 二人のやり取りにほっこりとした空気が流れる。

 ただ、僕は反省しきりだ。

 今回はたまたま無事だっただけ、魔法職を前面に押し出した作戦には無理があった。


「ごめん、ミサキ。今回のは僕の作戦ミスだ」


 その言葉に、ミサキは首を横に振る。


「……これまで多く戦闘した。……あそこで消耗戦になったらそれもきつかったと思う、結果オーライ」


 ミサキはそう言ってくれたが、怪我してからじゃ遅い。

 後悔はしたくない、もっと強くなろう。


 そういえば、ドロップアイテムは何が出たんだろう。

 すっかり忘れていた。

 探そうと立ち上がったその時――、


「こいつはこちらで頂くとするぜ。悪く思うなよ」


 声のした方向へと振り返る。

 そこには、ロードが落としたであろうアイテムを片手に、ニヤついた笑みを浮かべる冒険者の姿があった。 

 

 

 

 

ご意見・ご感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ