第27話 勝負方法は?
忙しくなってきてしまい、とうとう毎日更新が途切れてしまいました(涙)
何とか2日に1回更新の時間は確保したいと思っています。
「うむ、集まった様だな」
集まった僕たちを見てギルドマスターが一言。
ギルド前には僕たち三人と、例の貴族が部下を引き連れ集まっていた。
貴族連中の中には、熟練冒険者らしい人も含まれている。
おそらくは助っ人として雇ったのであろう。
例の貴族が不正を行うのを嫌って、勝負方法はこの場でギルドマスターが伝える事になっていた。
一応体裁として、僕にも今日初めて教えていることになっている。
ギルドマスターには初耳って顔をしておいてくれとこの間の話の時に頼まれた。
「では、勝負の方法を言い渡す。勝負方法はエルドアの墓場にて行うドロップアイテム勝負だ!」
一応、驚いた顔をしているつもりだけれど。うまく演技できているかな?
「期限は明日の日没まで。魔物たちが落とすドロップアイテムでより価値のある物を取ってきた者の勝利だ」
「ちょ、ちょっとまて! 私はこいつを叩きのめしにやってきたのだぞ! そのような勝負では納得できん!!」
例の貴族の怒鳴り声が響く。
「ならば、貴方とカナタの一騎打ちにしますかな? そこにいる助っ人はもちろん無しですぞ。それに、彼を何らかの暴力で叩きのめしたとして、はたしてマリアンの心が靡きますかな?」
「くっ!!」
貴族が悔しそうに黙った様子を見て、ギルドマスターは話を続ける。
「分かってくれたようですな。もちろん他所で買うなどしてアイテムを手に入れたら即失格なのでそのつもりで。助っ人は三人まで。よろしいですかな」
「はい!」
「くそっ! 仕方がない!」
「では、勝負開始!」
ギルドマスターの宣言とともに勝負が開始される。
「いくぞ、お前たち!! ぐずぐずするな!」
ガローニは悪趣味な馬車に乗り込み、部下たちに罵声を浴びせていた。
「さて、僕たちも行こうか」
「うん!」
「……了解」
「待って!!」
出発しようと馬車を乗り込んだその時、僕たちを呼び止める声がした。
マリアンさんだ。
「私の為にこんな事になってしまってごめんなさい」
マリアンさんが僕に向かって頭を下げる。
そして、可愛く包装された何かを渡された。
「これ、良かったら食べて――ひっ!! これはみんなの分よ! 決してカナタくんだけに作ってきた訳ではないの!!」
どうやら責任を感じて昼食を作ってきてくれたらしい。
後半、ガタガタ震えながら誰かに弁解していたが、あえて気にしない事にした。
マリアンさん、ごめんなさい。
ふと見ると、ガローニ(もう呼び捨てで良いよね)たちはすでに出発していた。
でも慌てる必要はない。
僕たちには強い味方がいるからね。
「どうした? もう出発して良いのか?」
「ああ、ユニ助。お願い」
街を出た僕たちは、猛スピードでエルドアの墓場へと向かった。
エルドアの墓場。
それは、ガルド王国建国の為に礎となった戦士たちの墓場。
そこには群雄割拠の時代を駆け抜けた多くの戦士たちが眠っている。
戦士たちの中には未練を残して散っていったものも多く、現在、その思念が呼び寄せる亡霊やアンデットの類が多数出現、人々を悩ませていた。
冒険者ギルドでは定期的に依頼を出して亡霊を倒すことにしているが、近年、聖属性の魔法使いの減少に伴い、亡霊たちは増加の一途を辿っている。
また、エルドアの墓場の亡霊たちは、魔物のように素材を残さない代わりに、アイテムを落とすことでも知られている。
そこでしか手に入らないアイテムもあり、危険を承知で乗り込むパーティーも中にはいるらしい。
馬車の中で僕はため息交じりに呟く。
「上手く乗せられた感じだね」
ギルドにとっては、亡霊たちの増加に歯止めをかけたいところに、僕と貴族との勝負事が持ち上がった。
僕たちが回復魔法を持っているのは、ギルドには既に知られている。
ならばこの機会に聖属性を持った僕たちに亡霊を始末して貰おうという意図が簡単に透けて見えた。
「……仕方ない。精々報酬を弾んでもらう」
「うん。それで美味しい物、い〜っぱい食べようよ!」
今回の戦闘は恐らく魔法メインとなるので、二人にもかなり活躍して貰わなければならない。
ちなみに、亡霊には聖属性には劣るが火属性も有効だ。
今回はミサキの広範囲魔法のお世話になることもあるだろう。
「何をやっておるか〜!! 抜け! 抜き返せ!!」
外を見ると、いつの間にかユニ助が成金趣味の馬車を抜いていた。
何やらガローニが喚き立てているが、距離が一気に離れていくので瞬く間にそのセリフは聞こえなくなった。
皆で昼食を馬車の中で取り終えた頃に、タイミングよくエルドアの墓場の入り口に到着する。
普通の馬車ならば到着は夕方と聞いていたので、かなり飛ばしてきたことになる。
馬車を降り辺りを見回す。
そこには無数の白い墓が碁盤の目のように規則正しく並んでいた。
西洋タイプというのだろうか。
墓は四角く寝そべっている形状だ。
日も明るい為、今のところ亡霊の気配は感じない。
「早く来すぎたかな?」
早速、墓場の中へと踏み込もうとしたとき、ユニ助から悲鳴にも近いツッコミが入る。
「こら、どこに行くつもりだ! まさかまた我を置き去りにするつもりではあるまいな!」
どうやらワームの一件がトラウマになっているようだ。
「やだなぁ、ユニ助。忘れている訳無いじゃないか!」
ジト目で睨むユニ助と馬車を別荘へと戻し、改めて墓場の中へと踏み込んだ。
ジメッとした空気が肌に張り付く。
辺りは霞がかっていて視界不良、2メートル先はもう見えない。
しかも亡霊がどのように現れるか分からない僕たちは、一瞬も油断できない。
いきなり現れたらすぐ魔法を撃てるのか?
僕は一秒以内で寝られる何処かのガンマンじゃないんだけどなぁ……。
「カナタ! 来たよ!!」
ミウの感知した方向にぼやっとした薄明かりがかすかに見えた。
感覚で分かる。
どうやら人とは違うようだ。
「ホーリーアロー!」
迷っている暇は無い。
先制攻撃とばかりに魔法を放つ。
「ギャアアアアッ!!」
耳を劈くような悲鳴とともにその光は消滅する。
慎重にその場所に近づくと何やら透明なフラスコのような瓶が……。
「……聖水ね。……あまり珍しくない」
ミサキがそれを拾い上げ僕に渡す。
僕はそれをまじまじと見つめた。
「しかし、本当にアイテムを落とすんだな」
「へ〜、凄いね!」
話に聞いてはいたが、まるでゲームのような設定に感動を覚える。
かつて、ゲーム内でアイテムコレクターだった僕としては、俄然やる気が出てきた。
「よし! もう少し奥に行ってみるか!」
「お〜っ!」
「……おー」
ミサキの棒読みの気合とともに、僕たちは更なる奥へと足を踏み入れた。
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