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第21話 強欲

今回、カナタたちの出番は少ないです。

「どうしたの? あなた達」


 猛スピードで村に入ってきた僕らを見て、シアラさんから「何があったのか?」という疑問と驚きの声が掛かった。


「はい。実は森で発見をしまして……」


 少し迷ったが、この際シアラさんも巻き込むことにした。

 時間が無い事を考えると、探す人数は多い方が良い。

 



「そう……。本当にそんな建物が森にあるのね」


「はい。森に住んでいる人がいて、宝玉を村人が盗んだと言っています」


 流石にオークが言ってますとは言えない。

 それについては言葉を濁す。


「森に住んでいる人? 聞いたことが無いわ」


「何でも祠の管理をしている人みたいです。詳しくはわからないですが……」


 一応、嘘は言っていない。


「そのわからない人の言う事をどうしてカナタくんは信じたわけ?」


「感? ですかね」


 そう言うしかない。 


 それを聞いたシアラさんは、無言で考える仕草をする。

 数秒後、僕の目を見て一言、


「……わかったわ。協力しましょう。先ずはメンバーに話してくるわ」


 そう言うよりも早く、シアラさんは村の奥へと駆けて行った。




「ふぅ……。何かを隠しながらの話し合いって苦手だな」


 僕の独り言にミサキが反応する。


「……別に悪いことを隠している訳じゃない」


 それは分かっているんだけど、どうもね。




 それから僕らは独自に聞き込みを行い、どうやらここ最近で森に入ったのは六人だけであるという事が分かった。

 そこまでわかった所で、シアラさん達と合流する。


「なるほど……。そこまでわかれば十分だ。その人達を集めよう」


 緑の旅団のリーダーのジンさん号令のもと、名前の挙がった村人が村長宅に集められる。

 僕みたいな若造の号令では、こんなにスムーズに集められなかっただろう。

 そこには例の村長もいた。

 自宅だから当たり前か。


「何かね、こんな所に集めて。それよりも早く魔物を殲滅してくれないと困るんだが、まだ出来んのかね」


 村長が不満顔でジンさんに詰め寄る。


「今回はそれに関連した事で集まって貰いました。少々お時間を頂きたいと思います」


「……ふん! 手短に頼むよ」


 ジンさんは、集めた村人たちの方に向き直る。


「この中で森の中にある祠に行ったことのある者はいるかね?」


 村人の何人かがお互いの顔を見合わせる。


「どうやら行ったことがあるようだね」


 それを見たジンさんは確信したようだ。

 その時、顔を見合わせた村人の一人がジンさんに質問する。


「ああ、見た事はあるだ。それがどうかしたんかの?」


 一呼吸置き、ジンさんが続きを話す。


「その中には黄金色の球体があったはずだ。それがいつの間にか無くなっていて、それが理由で現在魔物が暴れている事が分かった。その球体について何か知らないかね?」


 村人たちがざわつく。


「そういえばザジ、お前、途中で消えた後に何か抱えてたな」


 一人の村人の発言によって、視線が一斉にある男に注がれる。


「し、知らねえ。おら、知らねえ!」


「そうだ、確か丸っこいもんだったぞ!」


 ジンさんが、ザジと呼ばれた村の若者にゆっくりと近づく。

 しゃがみ込んでその顔を真正面に見据え、軽く肩に手を置いた。


「今、村は窮地に立たされている。あと数回魔物の襲撃に遭えばこの村は壊滅だろう。だが、もし君が球体の在りかを知っていれば、君も含め村の皆が助かるんだ。……教えてくれるかい?」


 ジンさんの説得を受け、ザジはぽつりぽつりと話し始めた。


「……おらは、……もう持ってないだ。……借金の形に取られただ」


「ほう、ではそれは誰の元にある」


「…………村長さんだ」


 皆で一斉に村長の方を見る。

 視線を一手に受けた村長は怒鳴るような口調で喚く。


「な、何だ、その目は! あれは私が正当な権利として貰ったものだ。何の文句がある!」


 村長は悪びれることなく自分の正当性を主張する。

 村長はさらに捲し立てた。


「第一、そんなもので魔物が大人しくなるとは思えん。お前たちがとっとと魔物を殲滅すればそれで終わりではないか!」

 

 村長の怒鳴り声を受けながらも、ジンさんは冷静な口調で対応する。


「私たちは無駄な犠牲を払いにここに来ている訳ではない。犠牲が最小限に抑えられて解決する方法があるなら迷わずそちらを選ぶ。第一、それは元々、森の祠の物であり彼の物ではない。借金の形に取ること自体が間違っている」


「う、五月蠅い! 一度手に入れた以上、あれは私の物だ! 絶対に渡さんぞ! もう話は終わ、ぐわっ!!」


 逃げ出すかのように立ち上がった村長が、僕たちの目の前で急に前のめりに倒れこむ。


「ふぅ……。ジン、こういう輩は言っても無駄だよ。こうするに限る。ちなみにこれがその球ね」


 村長の真後ろにはいつの間にかペールさんが立っていた。

 ペールさんは村長の懐を探り、ボールのようなものを僕に投げてよこす。

 ソフトボール大の球体は黄金色に輝いていた。

 これは……、宝玉か!


「あ、ありがとうございます!」


「お礼はいらないぜ。君の為にやった訳じゃない。時間が無いんだろう? 後処理は僕らに任せて早く行ったらどうだい」


「はい!!」


 僕たちは緑の旅団のメンバーに頭を下げ、急ぎ村長の家を出る。

 そこには既にユニ助が待機していた。


「ユニ助! 頼む!!」


「まかせておけ!」


 僕たちはユニ助に飛び乗り、猛スピードで祠へと向かった。



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