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第198話 怪しい光

明けましておめでとうございます。

漸く再開、長らくお待たせいたしましたm(__)m

「女神様、我らをお守りください……」


 騎士たちがそう呟くと、虹色の光が発現しその身体を包みこみ、やがて消える。

 恐らくは何かしらの防御UPの魔法だろうが、随分と派手なエフェクトだ。

 まあ、味方がパワーアップしたわけだから特に文句を言うつもりはないけどね。

 そして僕は彼らと共に襲撃者を迎え撃った。


 どこか異常な目をした男たちが奇声を上げながら曲刀を振りかざす。

 大振りのそれを躱して、こちらも反撃とばかりにこちらも剣を振るうが、目の前の男たちはまるで曲芸師のような身のこなしでバク宙しながら後方へと飛び退いた。


「おい、こいつらまさか……」


 彼らの尋常では無い様子を見た騎士の1人が呟く。

 しかし、それを気にしている余裕はない。

 ふと相手の馬車を見ると、フードを被った男たちがこちらに杖を向けて何かを唱えている。


「不味い!」


 声を上げつつ咄嗟に身を引いた僕の元いた場所に鋭い氷の矢が突き刺さる。

 どうやら向こうには魔術師もいるようだ。

 しかし狂戦士さながらの連中の相手をしながらこれに対処するのは厄介極まりない。


 僕が後方に視線を向けると、ミサキと目が合った。

 そして、問題ないと言った風に頷いた彼女がスタッフを魔術師の乗る馬車へと向けた。


「……煉獄の炎」


 その呟きと同時に発現した炎がまるで生き物のように渦を巻き、馬車という獲物に絡みつく。

 慌ててそこから飛び出した魔術師たち。

 その体制の整わぬ状態をミウの魔法、アリアの矢が狙い撃つ。


 うん、あちらの対処ははどうやら心配ないようだ。

 彼らの相手はそのままミサキたちに任せ、僕は改めて目の前の襲撃者たちに集中する。

 怪しい光を宿した真っ赤な目、更には猿のような身のこなしでこちらの剣を回避する集団。

 魔術師たちの援護射撃が無くなった今でも、そのトリッキーな動きに思うように反撃が出来ない。


「上手く当たらないです〜」


 ポンポもダメージを負ってはいないものの苦戦を強いられているようだ。

 騎士たちも今は何とか踏ん張っているものの、戦況は危うい。

 ましてや相手の方が多勢、この状況をどう打開するか……。


 男の剣が僕の腕を軽く掠める。

 目の前には3人、手数の違いはどうしようもない。

 そんな時、僕の脳裏にある言葉が浮かんだ。




「いいか。致命傷を与える為に相手が狙う箇所なんてのは限られているんだ。いかに相手がフェイントや変な動きで惑わそうとしても、こちらは腰を据えてじっとその時を待てば良い」

 

 落ち着きを取り戻すため、僕は大きく息を吐く。

 かすり傷は無視、後で治療すれば良い。

 特にこの世界は治癒魔法で簡単に治るのだから。

 そして致命傷になりそうな攻撃にのみ対処する。

 そうすることで随分と手数的に楽になった。


 僕の放った斬撃が初めて相手をまともに捉える。

 すぐさま反撃してくる襲撃者、恐らくは痛みもあまり感じていないのだろう。

 だが、その動きはダメージの影響からか明らかに鈍い。


 相手の剣が頬を掠めるのにも構わず踏み込む。

 1人に接近することにより、他の2人の攻撃手段は限られてくる筈。

 そしてついにその時が来た。


 男が放つ大振りの攻撃、僕の喉元を狙った突きを躱し、身体が伸びきった相手の胴に一撃を入れる。

 崩れ落ちる襲撃者、これで残りは2人。

 

 真正面から突っ込んでくる男の刀を剣で弾く。

 その影から更に1人、上からの襲撃だ。

 だが、3人であれば兎も角、2人しかいない場面でもう片割れの行動はしっかり把握済みだ。

 回避行動がとりにくい空中に飛び上がったのが運の尽き、幾つもの魔法の矢が相手を襲う。

 只でさえ多対一、馬鹿正直に剣だけの勝負をするつもりは無い。


 そして数分後、僕を襲った3人は地に伏していた。

 だが、まだ終わりでは無い。

 僕はそのままポンポへの救援に向かう。

 その頃にはミサキたちも魔術師たちの対処から騎士たちのバックアップへと仕事を移していた。


「ポンポ、こちらは任せろ」


「助かるです〜」


 ポンポが相手をしていた襲撃者の内から1人を奪う。

 対処する敵が1人となったポンポの動きがあからさまに良くなった。

 あれなら問題ないだろう

 僕は目の前の男の攻撃をいなしつつ反撃に転じる。

 そして、とうとう襲撃者たちの鎮圧に成功したのだった。




「グローデン、サムス、エンドリー、ご苦労様でした」


「「「ははっ」」」


 聖女の労いに騎士たちが片膝をつき頭を下げる。


「実は1人も倒しきれてないんだけどね」


「ミウ、しっ!」


 僕は慌ててミウの口を塞ぐ。

 幸いなことに聞かれていなかったようだ。

 また要らぬ対抗心で険悪になるのは御免被りたいからね。


「カナタさんたちもありがとうございました」


「……仕事をしただけ」


 ミサキのそっけない態度に騎士たちが睨んでいるが、ミサキはどこ吹く風だ。

 正直、戦闘で疲れているのだから勘弁してほしい。

 

「時に、聖女様。この者たちなのですが……」


「ええ、わかっています」


 騎士の言葉に頷くミレニアーナさん

 そのいつに無く真剣な表情を見て、僕は嫌な予感しかしなかった。







最後まで読んで頂きありがとうございました。

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