第197話 妨害!?
大変お待たせいたしましたm(__)m
今回、初めての朝方投稿かも^^;
不定期、不規則で申し訳ありません。
霊峰ロナクルト。
ミュール王国にそびえる霊峰として、その国民であれば知らない人は居ない程に有名な山。
だがその有名さとは逆に、頂上まで登ったことがあるという人間はほんの一握り。
それは神聖な山に対して、人々が登ることを敬遠しているというだけでは無い。
登頂を困難にさせている原因、それは中腹辺りに発生している深い霧。
いつまでも晴れぬそれが侵入者の視界を遮り、行く手を阻むのである。
しかし、それはあくまで一般人に限っての話。
ほんの一握りの人間、即ちフリード教会に属する数人の司祭とその供は登頂に成功している。
それは全て女神様への厚い信仰によるものである――というのが一般的に世に知られている知識である。
ガタゴトと馬車の中で揺られながら、僕たち一行は目的地へと進む。
今回の馬車はフリード教会で用意したものなので、当然いつものユニ助の姿は無い。
普段あの速さに慣れていると、現在の進行速度が途轍もなく遅く感じる。
この分だと到着はまだまだ先。
まあ、それは仕方の無い事なのだが――。
「そういえば、今回はいつもの護衛の人は居ないんですね?」
そんな中、僕はふとミレニアーナさんに疑問を投げかけた。
「ええ、色々ありましてね。向こうに信用のおける者を何人か残しておかなければいけないの」
これも例の権力闘争云々の関連か。
組織ってのも大変そうだなぁ、とつくづく思う。
「聖女様、ご安心ください。我らは3人という少人数ではありますが、しっかりとお役目を果たして見せます!」
護衛の騎士の1人が恭しくミレニアーナさんに頭を下げた後、キッ!とこちらを睨む。
いや、そんな対抗心ありありの視線を向けられても……ねぇ。
騎士の誇りというやつだろうか?
僕らはあまり歓迎されてはいないようだ。
「……そう。……なら任せても良い?」
そんな彼に対し、先程まで黙って外の景色を見ていたミサキが口を開く。
「任せて、とは?」
その意味がわからず、騎士はミサキに質問で返す。
「うん、何か変なのがつけて来てるよ」
代わりに答えたのはミウ。
それを聞き、僕は馬車の窓から顔を出して後方を見やる。
そこには何の姿も見えない。
だが遠方まで気配を探ると、つかず離れず3つのかたまりがこちらと同じ方向に進んでいるのがわかった。
速度からして恐らくはこちらと同じ馬車。
人数にして十数人といった所だろう。
「むう。何も見えないではないか? まさか我らを謀ろうとしている訳ではあるまいな?」
「……そんな事をして何の得に?」
ミサキがほんの少しだけ額に青筋を浮かべる。
こちらは依頼されて護衛を引き受けた身。
別に好きで引き受けた訳では無いのにその言われ方は僕にとっても心外だ。
「やめなさい」
悪くなりかけた空気を察してか、ミレニアーナさんが割って入る。
「彼女たちの言っていることは恐らく間違いは無いでしょう。問題はどう対処するかです。ミサキさん、おおよその人数はわかりますか?」
「……12人? そのくらい?」
「13人だよ!」
ミウがすかさず訂正する。
「なるほど、どうあっても私たちを行かせたくないということですか……。このまま霊峰の中腹まで辿り着けば何とかなりそうなのですが、どうやらそこまでは間に合いそうもありませんね」
何やら考え込むミレニアーナさん。
「聖女様、我らは貴方様の盾であり矛、見事悪漢どもを蹴散らしてくれましょう!」
「「応!」」
そんな気合十分の騎士たちに向かい、彼女は優しく微笑んだ。
「グローデン、サムス、エンドリー。貴方たちの力は十分にわかっています。そして大いに頼りにしています。ここはカナタさん達と協力して、撃退することを望みます」
「「「ははっ!」」」
そこには今まで燻っていた不満の欠片も見えない。
なるほど、これも聖女と呼ばれる人間のカリスマ性か、と僕は素直に感心する。
「ということで、カナタさんたちもお願いします」
「はい。元々その為に同行している訳ですから、仕事はきっちりとやりますよ」
但し、それが人間相手だとは思わなかったけどね。
「そうだよ、任せといて!」
ミレニアーナさんはミウの力強い宣言に微笑みつつ、再度僕らに「お願いします」と頭を下げた。
御者が指示に従い、馬車を停車させる。
馬車から降りて身構える僕たち。
今までつかず離れずだった気配が近づいてくるのがわかる。
そしてとうとう、僕らの視界にその姿を現した。
何処にでもあるような庶民的な馬車が3台。
いや、逆に何も特徴が無さすぎる事こそが不自然な気がしてならない。
何か怪しい動きはあるか?
僕らは注意深くその動向を見守る。
いっそ確実に敵だとわかればこのまま魔法を放てるのだが……。
接近を止めない3台の馬車。
それに対して、グローデンとかいった騎士の1人が一歩前に出て大声で叫ぶ。
「止まれぇい!! これ以上の接近は敵対行動とみなし、応戦させてもらう!!」
だが、黒いフードを被った御者は、馬車を止めるどころか鞭を打った。
流石にこれ以上の接近は不味い。
僕はアリアに合図を送った。
アリアの大弓が限界まで絞られる。
ヒュッ!という音と共に3本の矢が放たれる。
足元への突然の攻撃に、馬が大きく嘶いてバランスを崩す。
その直後、馬車から大勢の人間が飛び降りてこちらに向かってくる。
それぞれの手にはサーベルとも呼ぶべき大きな曲刀。
どこをどう考えても友好的な集団では無いのは明らかだ。
「いくぞ! 接近させるな!」
「言われるまでも無い!」
僕がかけた言葉に仲間は頷き、騎士たちは当たり前とばかりに返す。
かくして、見渡す限りの広大な大地の上での戦闘が今始まった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!




