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第191話 カナタの提案

大変お待たせいたしました<(_ _)>

「パパ!」


 ピリピリとした雰囲気の店内に突如響いた少女の声。

 飛び込んできたのは誘拐されていたはずのロゼであった。

 それに気づいたカルロさんが入口に向かって駆けだす。

 勢いよく抱き着いてきたロゼをその胸に受け止めると、そのまま抱え上げて抱きしめた。


「うん、感動的な再会だね」


 その声に振り向くと、そこにはいつの間に入ってきたのかミウたち3人の姿が。

 なるほど、そういう事かと僕は納得する。


「ミウ、アリア、ポンポ。怪我とかしてないよね?」


「もちろん、大丈夫だよ。何でカナタがここにいるかは知らないけど、探す手間が省けてラッキーかな」


 そんなミウのセリフに、僕は微笑み返す。


「まあ、僕とミサキがここに来たのは偶然だからね。しかし、ロゼが攫われたってことだから、てっきりミウたちと別れた後のことだと思ったんだけど……」


「うん。でも別れてすぐだったから気づけたんだよ。街の外まで追いかけて行ったから結構大変だったんだから」


「……ミウ、偉い」


「えっへん!」


 ミサキに褒められ、まんざらでもない様子のミウ。


「ポンポも頑張ったです〜!」


 その間に割って入るように自分も頑張ったと主張するポンポ。

 アリアはそれを温かい目で見守っている。


 そんなやり取りをしていると、カルロさんがロゼを抱きながら僕たちに近付いてきた。


「嬢ちゃんたち、ありがとうな。聞けば嬢ちゃんたちがロゼを悪漢から助けてくれたそうじゃないか。礼を言わせてくれ」


 カルロさんがミウたちに深々と頭を下げた。

 相手が子供でもしっかりと頭を下げられるところからも、カルロさんの誠実さが窺える。


「ううん。ロゼは友達だから、助けるのは当たり前だよ」


 そんなミウの答えに頷くアリアとポンポ。


「ははっ、そうか。ロゼ、お前は良い友達を持ったな!」


「うん!」


 カルロさんがロゼの頭をくしゃくしゃに撫でまわした。

 それに対して、ロゼは満面の笑みで返事をする。

 そんな穏やかな雰囲気が流れる中、僕はその空間を壊さぬようにこっそりミウに話しかけた。


「それで、その連中は?」


「1人だけ街の警備兵に突き出したよ」


 僕の問いにミウも小声で答える。


「そうか。ならば、ひとまずはこれで安心なのかな?」


「いや、それは無いな」


 話が聞こえていたのであろう、カルロさんが僕たちの会話に割って入る。

 そして神妙な面持ちで続けた。


「ミルウォーク商会はこの街では誰もが知る有力商会。当然この街の貴族とも繋がりが深い。こちらが声を大にして訴えたところで相手にされんし、もみ消されるのが落ちだな」


「それじゃあ……」


「ああ、その男一人突き出したところでどうにもならん」


 カルロさんが言い切る。

 どこか諦めにも似た表情から察するに、以前にも同じようなことがあったのだろう。


「酷いです~!」


 気持ちが真っ直ぐなポンポが真っ先に憤慨する。

 そんなポンポの頭をカルロさんはポンポンと宥めるように叩く。


「この街に住んでいる以上は仕方が無いさ。だが、ロゼまで狙われるとなれば、そろそろこの街での商売も潮時なのかもしれん」


 カルロさんの口からため息と共に嘆きが漏れる。

 それほどこの街に愛着があるのであろう。


 権力に物を言わせての横暴な振る舞い、これが勧善懲悪の時代劇であったなら正義の味方が現われてあっと言う間に粛清、ハッピーエンドなのだが、現実はそう甘くは無い。

 ミウたちから「何とかならないの?」という純な視線が僕に集まるが、そうはいってもこればかりは……。 いや、まてよ。

 

 ふと頭の中をよぎった何か。

 僕はそれを落ち着いて思考の中心に手繰り寄せる。

 そうか、そういった力だったら今の僕も――。


 そして意を決した僕は、改めてカルロさんに向き直り、提案する。


「カルロさん、この街での商売を諦める前に、僕に任せて貰えませんか?」


「カナタ、どうするの?」


 ミウが僕に問いかける。


「うん。権力を振りかざすなら、その権力を無くしてしまえば良いってことさ」


「……全て破壊、叩き潰す」


「いや、流石にそれは……」


 ミサキの過激発言を制しつつ、僕はカルロさん含め、皆に説明を始める。

 さあ、ここから長い戦いの始まりだ。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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