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第188話 決意

 空はオレンジ色に染まり、羽ばたく鳥の群れが地上に長い影を落とす。

 あと数時間もすれば森は闇に覆われ、待ちに待ったとばかりに魔物たちの動きが活発になる夕暮れ時、ミウたちはポンポを先頭にして森の中を進んでいた。


 アリアは注意深く周囲を観察、目的の場所への目印を探す。

 聞きだした情報によると、それは天高くY字に伸びる大木とのことなのだが、ここは似通った木々の多い森の中、何となくそれっぽい木は見かけるのだが確証には至っていなかった。


「グガアッ!!」


「甘いです〜!」


 高い木の上から飛び降りるように姿を現したヒョウのような魔物をポンポが危なげなく切り捨てた。

 そして、返す刀で地面から飛び掛かる一角兎を切り伏せる。


「きりが無いです〜!」


 森に入ってから約1時間、同じような場面の繰り返しにポンポの口から愚痴が出る。


「まだあっちにもいるね。それと向こうの木の上にも」


「夜になると更に多くなるの」


 なるべく明るいうちに人攫いのアジトを発見したいとの思いからか、少々焦りの色を顔に浮かべるアリア。

 だが、その行動は慎重そのもの。

 大きな弓を引き絞り、木の枝からこちらを狙う魔物を逃さず狙い撃つ。


 そしてミウは迫りくる狼の魔物の群れに魔法を放つ。

 早々と群れの頭を失ったそれらの中で無傷なものは、統率が崩れて尻尾を巻いて逃げ出していく。

 

 襲いくる魔物たちを蹴散らしつつ進む3人。

 今のところ疲労の色は見えないが、それでも限界はある。

 更には、ロゼに何かあったら……という思い、それが思わぬところで足元を掬う可能性もあった。


 そんな時、ふと何かを見つけたミウが急に立ち止まる。


「何です〜?」


 ミウが拾った何かを覗き込むポンポ。

 アリアは周りを警戒しつつ、同じくそれを見る。

 それが何であるかわかった2人の目が見開かれた。


「うん、やっぱり! これ、ロゼのブローチだよ!」


 ミウの掌の上でキラリと光るハート形の赤いブローチ。

 地味だったロゼの服装に不釣り合いなそれは、ミウたちの記憶にはっきりと残っていた。


「方角は間違ってないの」


 見るからに代わり映えのしない景色を進む中で、こういった物的証拠を見つけた事は3人の気持ちの上でも大きい。

 そして更に発見は続く。

 程無くしてアリア見つけたもの、それは周囲の木よりも2周りは大きい大木。

 そして、その太い幹は低い位置で大きく二股に分かれていた。


「何か目印があるです〜!」


 大木に駆け寄ったポンポが、幹に彫られたマークのようなものを見つける。

 それを見たアリアは、この大木が探していたもので間違いないと確信した。


 大木のY字の股の部分から覗き込むようにして一直線に視線を伸ばすと、微かではあるが人が草を踏みしめたような跡が地面に残っている。

 それらの草がまだへたっているところを見ると、それほどの時間は経過していないことがわかる。


「よし、近いよ! 行こう!」


「ミウちゃん、待ってなの!」


 急ぎ先に進もうとするミウをアリアが止める。


「ん!? 何、アリア?」


 何で止められるかわからないといった風に首を傾げるミウ。

 だが、ミウを見るアリアの目は真剣であった。


「恐らくロゼちゃんは身動きが取れないの。そして、相手はロゼちゃんの命を道具くらいにしか思ってないの」


「うん、そうだね」


 頷くミウ。

 アリアは続ける。


「今回は無力化だけでは済まないかもしれないの。ミウちゃんにそれが出来る?」


 真っ直ぐにミウを見つめるアリア。

 そう、アリアが心配していたのは、ミウが本当の意味での対人戦闘が出来るかといった点であった。

 今まで盗賊などを無力化してきたことはあったのだが、それはこちらにまだ余裕があっての事。

 今回のような人の命がかかった救出劇では、一瞬のためらいが惨状を引き起こす事態になりかねない。

 簡単にいってしまえば、悪人とはいえど、ミウが人に止めを刺せるかということであった。


 一瞬の沈黙。

 そして、そのアリアの強い眼差しに対し、ミウははっきりと答えた。


「大丈夫、ロゼは大事な友達だよ。もしミウが手加減したせいで……なんてなったら、後悔してもしきれないよ」


「……うん、ならいいの。さあ、急ぐの!」


「ありがとう、アリア」


 ミウはアリアの心遣いに小さな声で感謝を述べる。

 その声がアリアに届いたかは定かでは無い。


「何してるです〜! 置いて行くですよ〜!」


 少し先で後ろを振り向いたポンポが2人に向かって抗議する。

 ミウ、アリアはお互いを見合わせ、ポンポの元へと急ぐのであった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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