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第16話 パーティー結成

 あれから数日が過ぎ、僕たちは定期馬車でベラーシの街へと戻った。

 先ずはギルドへ行って依頼を完了させないといけない。

 街の門をくぐった僕たちは、そのまま一直線にギルドへと向かった。


「うわっ!!」


 ギルドの扉を開こうとしたとき、中から飛び出して来た何かに弾き飛ばされる。


「気をつけろ!!」


 どうやら飛び出してきたのは人の様だ。

 まあ、当たり前か。

 細身の男はこちらを「キッ!!」と睨む。

 その男のキツネ目はこれでもかという位に吊り上っている。


「何だ? キルギス? 騒々しい」


 後ろからぶよぶよの肥満の腹を抱えた男が気怠そうに扉から出て来た。

 成金趣味丸出しの服装にガマガエルをさらに醜くした顔。

 うわっ、何か面倒くさそう。

 相手にしたくないな。


「いや、こいつがぶつかってきましてね」


 ぶつかったのはお前だろ!

 心の中でだけ突っ込みを入れる。


「ふん。冒険者というのは野蛮だねぇ。よいよい、相手にするな。下品がうつる」


「はい、ガローニ様!」


 男たちは僕たちを見て鼻で笑う。

 その後、もう興味は無いと言うかのように、金ぴかの馬車に乗り込み足早に去って行った。


「……豚の丸焼き」


「ミサキ、駄目だからね!」


 ミサキが馬車に魔法を放とうとするのを慌てて止める。

 どこまで本気なんだか……。





「あら、カナタくん。依頼はもう終わったの?」


 僕より先に、マリアンさんがこちらを見つけ、声をかけてきてくれた。


「はい、お願いできますか」


 マリアンさんのカウンターに駆け寄る。

 今日のマリアンさんの服装はいつもよりセクシーで、胸元がざっくり開いていた。

 ちょっと目のやり場に困る。


「……敵?」


 ミサキが何やら呟いたが、聞こえなかった事にしよう。


 依頼品であるルコラの実を取り出し、カウンターの上に置く。

 それをマリアンさんが、数量と品質をチェックする。


「え〜っと、…………、うん、全部で三十五個ね。はい、銀貨1枚と銅貨10枚」


 どうやら品質は問題無かったようだ。


「はい、ありがとうございます。あと、パーティー申請もしたいんですが良いですか?」


 マリアンさんは僕の後ろをちらっと見ると、顔にいやらしい笑みを浮かべる。


 うっ……、あの顔はからかう気満々だな。

 からかわれない様になるべく無表情を貫く。

 無駄かもしれないが……。


 その時、一歩前に出たミサキがマリアンさんに挨拶する。


「……どうも、嫁のミサキです。うちのカナタがいつもお世話になってます」


 ミサキの爆弾投下によって、僕の無表情計画はもろくも崩れ去った。


「えっ!? カナタくんもう結婚してたの?」


「してるわけないでしょ!」


 その後、しばらくドタバタが続き、ようやく登録手続きに入ることが出来た。




「え〜っと。ミサキちゃんはGランク、カナタくんと一緒ね」


 僕と同じランクとはびっくりした。

 もっと上かと思ってた。


「……私も最近入った。同い年だからそんなに変わるはずない」

 

 僕の顔を見て言いたいことが分かったらしい。


「いいな〜。ミウも入りたいな〜」


 ミウが不満を口にする。


「ギルドの登録は無くてもミウはパーティーの一員だよ」


 マリアンさんに聞こえない位の小声でミウに話しかける。


「うん。ありがとう、カナタ!」

 

 ミウ様のご機嫌は直ったようだ。




 パーティー申請は滞りなく進み、後はパーティー名を登録するのみとなった。

 パーティー名か。

 考えてなかったなぁ。

 

「……カナタ・ミサキのラブラブ同盟」


「却下!」


「ミウもいるのに〜」


 ミウは自分の名前が無いことにご不満だ。

 そういう問題では無いんだけどね。


「……カナタ・ミサキ・ミウの愛欲の日々」


「あいよく?」


 ミウさん、覚えなくて良いです。

 いつまでも純粋でいて下さい。


「ミサキさん。ミウの情操教育上よろしくありません。発言の停止を求めます」


「……反省」


 本当に反省してる?




 さて、冗談はこれ位にして、本当にどうしようかな?

 中々良い名前が浮かんでこない。


「カナタくん。決まらないのなら後からでも名前の申請は出来るわよ」


「本当ですか!?」


「ええ。でもいつまでも名無しでいられると困るけどね。ランクが上がるくらいまでに考えてくれれば良いわよ」

 

 僕はマリアンさんの提案に乗っかることにした。




「そういえば、さっき冒険者らしくない人が来てませんでした?」


 ちょっと気になったので、先ほどの成金貴族についても聞いてみた。

 マリアンさんはその質問に露骨に嫌な顔をする。


「ああ、あの豚貴族でしょ。しつこいったらありゃしない! 悪いことは言わないわ、関わっちゃ駄目よ」


 どうやらあまり話したくない内容らしい。

 僕はこれ以上聞かない事にした。




 手続きも一通り終わった後、掲示板に移動し依頼を探す。

 もちろん討伐依頼優先で探している。

 だが、相変わらず良さそうな依頼が無い。


「……これはどう?」


 ミサキが手に持っていたのはベラーシの南にある森の調査依頼。

 近くの村で魔物の目撃情報があったようだ。


「うん、これにしよう!」


 他に目ぼしい依頼が無かったので即決だ。

 僕たちは早速カウンターで受付を済ませた。




 ギルドを出た後は、以前と同じ宿を取り、食事はいらない旨を伝えて部屋へと入る。

 そこから鍵を使い、別荘へと移動する。

 面倒だが、いざ何かあった時に、何処にも滞在した形跡がないと色々怪しまれる可能性がある。

 宿代は勿体ないが、そこは必要経費と諦めよう。

 ただ問題なのは、借りる部屋が一部屋だということ。

 食事もいらず部屋の中で男女が閉じこもり。

 宿の人にどう見られているのか、ちょっと不安だ……。


 ちなみに今回の冒険から、スラ坊には別荘で待機してもらう事にした。

 一通り基本的なことは教えたので、うまく管理してくれることだろう。


 さて、明日は早いのでもう寝るか。

 夕食と風呂を済ませた僕は、ドアにしっかりと鍵をかけてから眠りについた。


「……残念」

 




  

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