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第15話 別荘と管理人

「あったよ〜!」


 ミウの呼ぶ声が聞こえる。

 僕はその声がした方へと向かう。


「ほら、これでしょ」


 ミウがもぎ取った赤い実の一つを見せてくれる。

 うん、間違いない。


「さすが採取のプロのミウ先生、見つけるのが早い」


「えっへん♪ 感謝して良いのだぞ」


「ははっ。感謝のしるしをこちらに。お受け取りください」


 僕はミウの目の前に蓋を開けたお弁当を差し出す。


「うわ〜。カナタ、どうしたのこれ」


「アリシアさんが朝早くから作ってくれたんだよ。ミウはまだ寝てたから知らなかったんだね。そろそろいい時間だからお昼にしよう」


「うん。早く食べよう、カナタ!」


 僕が皆が座れる広さの布を地面に敷き、ミウがミサキを呼びに行く。

 スラ坊も腕から離れ元の姿に戻った。


「……おまたせ」


 ミサキがルコラの実を抱えながら現れた。

 ミウの発見した分と合わせると余裕で三十個は超える。

 これで依頼は達成だ。


 お弁当を広げ皆で食べる。

 異世界とは思えない、何だかピクニック気分だ。

 でも魔物だけには注意しないとね。



「そうだ。皆、これを見てくれる」


 食事も終わったところで、僕は女神様にもらった鍵を皆に見せる。


「なあに、それ?」


「……鍵? 何の?」


「女神様に貰ったんだ。ちょっと使ってみようと思って……」


「カナタさん、女神様って――」


「スラ坊、後で説明するよ。とりあえずここを片付けよう」


 敷いていた布を仕舞い終えた所で、皆の目が僕に注目する。

 さあ、始めよう。


 鍵を持ち念じることにより、正面に両開きの扉が現れた。

 その扉の鍵穴に鍵を差し込み、そのまま鍵を回す。


 ガチャッという音を確認した後、鍵を抜き、扉を開く。

 そこには――



「……これは……家?」


「うん。別荘をくれるって事だったんだけど……」


 正面にあるのは二階建ての家。

 しかも、どう見てもこの世界の住居の外観ではない。

 言うなれば、前の世界で建売り住宅として売られているような外観である。


 皆がこの空間に入ったと同時に、先ほどの扉はもう消えていた。

 試しに鍵をもって再び念じてみると再度扉が現れる。

 うん、閉じ込められたって訳じゃないね。


「とりあえず中に入ってみよう」


 玄関の鍵は掛かっていなかった。

 そのまま扉を開くと、前世で見慣れていた下駄箱つきの玄関が目に飛び込んできた。。


 靴を脱ぎ、そのまま正面の廊下を歩く。

 廊下の左側には襖、右側にはドア、正面には階段があった。

 

 左側の襖を開けると、思った通りそこは和室。

 押入れ付きの八畳の部屋が二つ、その二つの部屋も障子で仕切られているだけなので、部屋をつなげることも出来た。


 次に右側のドアを開ける。

 そこにはテーブルが中央に置いてあり、その周りをソファーが囲んでいた。

 さらに奥にはシステムキッチン、何と冷蔵庫まで置いてあり、中には米や調味料などが既に入っている。

 完全にこの世界ではオーバーテクノロジー、他の三人は何が何だか良く分からない様子だ。

 あとで一通り詳しく説明しなければならないだろう。


 正面の階段の脇にはトイレ、もちろんウォシュレット付き。

 階段の奥のガラス戸を開けるとそこは脱衣所、洗濯機も置いてある。

 さらにその奥にはすりガラスの扉が、そう、向こう側はもちろん風呂だ。

 大浴場と言っていいほど広い風呂はお湯が出っ放し、これはもしや温泉か?


 階段を使って二階に上がると、そこには3つの部屋があり、部屋には全てベッドが備え付けられていた。

 どうやら寝室らしい。

 ベランダもあったので出てみると、その下には庭が見える。


 早速、庭にも出てみた。

 特に何もなかったが、ここに花や野菜を植えてみるのも良いだろう。


 家と庭の周りは柵で囲まれていて、その柵より向こうへは行けなかった

 何やら見えない壁があるみたいだ。


 空には太陽? が輝いていた。

 どういう仕組みなんだろう? さすがに本物ではないよね。

 その答えは恐らく女神様しか知らないだろう。


 

 僕は使い方などの必要事項を一つひとつ丁寧に三人に説明した。

 何となくだが分かってくれたようだ。

 後は慣れてもらうしかない。



「……カナタは何でこんな事を知っているの」


 聞かれるとは思っていた。

 この3人には説明しておかなければなるまい。


「いや、実は――」


 僕は三人に説明した。

 今までは違う世界で生きてきた事。

 この世界に来てまだ間もない事。

 前の世界からこちらの世界に来るにあたって、女神様と知り合いになった事。

 女神様からチート能力を貰った事。


「ごめんな、今まで黙っていて……」


 異世界からの異分子、この世界の人にどう反応されるかが怖かったので自分1人で抱え込んでいた。

 だが、話す機会が出来た今、この3人になら話しても良いと思った。


「何処から来たってカナタはカナタだよ! 別に何も変わらないよ!」


「……大丈夫。私とカナタの絆はそんな事では壊れはしない」


「元々私は種族が違うので特には……」

 

 3人の反応は僕にとって拍子抜けするものだった。

 自分はいかにちっぽけな悩みを抱えていたのかと思うと、ちょっと恥ずかしい。


「うん、……ありがとう」


 この3人が仲間で良かったと心から思った。



 その後、この家を僕たちの拠点にすることに決定。

 早速寝室の部屋割りを決める。


 僕とミウが同じ部屋、ミサキ、スラ坊が一部屋だ。

 ミサキが僕と同室を主張したが、当然、却下しておいた。


 次に待望の風呂に入った。

 ちゃんと内側から鍵がかけられたのでゆっくりとくつろぐことが出来た。


 更なる探索はまた後ですることにして、僕たちは再び元の場所へと戻る。



「あの、カナタさん。良いですか」


「ん!? 何だい? スラ坊」


 珍しくスラ坊から話しかけてきた。


「先ほどの住居なんですが、管理する人が必要ですよね。それを私にやらせてもらえませんか?」


 話を聞いてみると、どうやら自分だけ戦闘に参加できない事に負い目を感じていたらしい。

 そこへ突如降ってきた自分でも出来るかもしれない仕事。

 それに飛びついたという訳だ。


「教えて貰わなければならない事はたくさんあると思います。頑張って覚えますのでお願いします!」


 僕の腕から離れ、元の姿に戻ったスラ坊が懇願する。

 戦闘の事はそんなに気にしなくても良かったのに……。

 でも管理人が必要なのは確かだ。


「ありがとうスラ坊、助かるよ。管理の仕方は後日教えるからその後で良いかい」


「はい、もちろんです」


「皆もそれでいいよね?」


 ミウとミサキの了承も取り付け、管理人見習いのスラ坊がここに誕生した。

 スラ坊がどこまで出来るか分からないけど、出来る所だけ管理してもらうのでも良いだろう。

 


 ちょうどバレン村も見えてきた。

 考えるのは明日、先ずはアリシアさんの美味しい食事をご馳走になりますか。





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