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第10話 バレン村の危機

お気に入り100件突破、ありがとうございます。

――ということで、久々の連日投稿です。

「やったわね、カナタくん。これでGランクに昇格よ!」


 冒険者登録から約10日、ようやくGランクへと昇格する事が出来た。


「でも油断しないでね。ランクが上がるにつれて討伐系の依頼が増えるわ。冒険者は常に危険と隣り合わせだってことを忘れちゃ駄目よ」


「はい、ありがとうございます!」


 これまでHランクの依頼のみを受けていたが、Hランクの依頼は、採取系は良いとしても、草むしり、荷物の搬入の手伝いなど、おおよそ僕の予想していた冒険者の仕事とは言い難い依頼が多かった。

 Gランクについても、それほど仕事内容に違いは無かった。

 しかし、Gランク昇格になれば、これからはFランクまでの依頼が受けられる。

 Fランクからようやく討伐系の依頼が加わってくる。

 そこで冒険者としての真価が問われる訳だ。


 だからといって、別にHランクの仕事を馬鹿にしている訳ではない。

 これらの仕事も社会にとっては大事な仕事、もちろんそれで食べている人もいるのだから。

 そういった人たちの事を、造語だが街冒険者というそうだ。

 街からほぼ出ない冒険者という意味らしい。

 危険が少ないのでそちらを選択、もしくは初めから街冒険者になるつもりでギルドに入る人もいるらしい。

 

 僕は、何回か採取系とかをやってみた限りでは、あまりそちらの仕事は得意ではなさそうだ。

 適材適所、……良く出来た言葉だと思う。




 早速、ギルドの掲示板で貼られている依頼に目を通してみる。

 商隊の護衛――これはDランク、駄目だ。

 リザードマンの討伐――Bランク、論外。

 迷宮探索――Cランク以上必須、う~ん。

 

 他にも色々見てみたが、Fランクの討伐依頼は現在無さそうだ。


「そんなに討伐に拘らなくても良いんじゃない?」


「それもそうだね。そうすると何か無いかな……」


 ミウに言われた通り、僕は討伐依頼を今回は諦め、他に何か無いかと探してみる。

 おっ、これなんかどうかな。


「ミウ、これなんかどう。また採取系だけどね」


 文字の読めないミウに依頼内容を説明する。


「良いんじゃない。それにしようよ」


 ミウの了解も得たので、その依頼を掲示板から剥がし、カウンターへと持っていく。

 そこには待ち構えたようにマリアンさんが……。

 他にも受付の人はいるのだが、何故か何時もマリアンさんに当たる。

 まあ、別にいいけどね。

 多少知っている人の方が気安くていい。


「あら、また採取系なの? てっきり討伐依頼を受けると思ってたのに」


 どうやら僕の思考は見透かされていたようだ。


「探したんですけど無かったもので……」


「そう、残念ね。ただ、気持ちを切り替えてこの依頼をしっかりね。えっと、ルコラの実の採取、期限は一ヶ月ね。場所が遠いけど大丈夫?」


「はい。大丈夫です」


「じゃあ確かに受け付けたわ。気を付けて行ってらっしゃい」


「はい、行ってきます!」


 何時もの様にマリアンさんに見送られながらギルドを後にした。









「いや〜、カナタさんも立派な冒険者になられたようで何よりです」


 馬車に揺られながら、お喋り好きな御者さんとの会話を楽しむ。

 現在、僕たちはベルトさんの定期馬車に揺られてバレン村へと向かっている。

 ルコラの実はバレン村の近くで採れるもので、僕もバレン村滞在時に食べさせてもらったことがある。

 今回は依頼ついでということで、ダグラスさん夫妻に無事冒険者になったことを報告に行くつもりだ。

 どちらかというと依頼がついでのような感じだが……。


「あれから魔物は出てないですか?」


「ええ、まだあれから一往復しかしてないですが、静かなもんですよ。もうあんな経験は二度とごめんですね」


 ベルトさんは首をすくめる。


 しばらくして、例の中継地点の小屋に着いた。

 辺りはもう暗く、物音一つしない。

 上を見上げれば、満面の星空が空いっぱいに広がっている。

 そういえば、前回はゆっくり星を見上げる余裕なんて無かったからなぁ。 

 星は宝石より綺麗とは、こういう星空を見て言ったセリフなのだろう。


 しばらく何も考えずに星を眺めた後、例によって毛布に包まって就寝する。

 もちろんミウも一緒だ。

 今回は特に襲撃の不安もない。

 僕たちはぐっすりと寝る事が出来た。



 次の日の道中も何事も無く、ただ馬車の走る音だけが耳に入る。

 ぼーっと景色を眺めていると、なにやら周りの風景が見慣れたものに変わった。

 どうやらそろそろバレン村に到着する様だ。


 空が赤みがかる頃、馬車の旅は終わりを迎え、僕らは村の入り口付近に降り立つ。


「ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」


「はい、また帰りもお願いします」


 今日中に馬車は街に向けて出発するので、次に乗る時は一週間後だ。

 採取を早めに終わらせてダグラスさんの家にしばらく泊めてもらおう。

 もちろん、気持ちとして宿代は払いますよ。


 そのまま村の門を通り抜けようとした所で、門番と思しき若者が俺たちの行く手に立ちふさがる。

 ダグラスさんと違い、「ただの村人がちょっと武装のコスプレをしてみました」って格好だ。

 見るからに様になっていない。


「お前、この村に何の用だ!」


 その門番が威圧的に話しかけてきた。

 余計なトラブルは御免被りたいので、素直に答えることにする。


「この村に住むダグラスさんに会いに来たんですが……」


「ふん! ダグラスさんは今外出中だ。何日かは戻らないから出直して来い!」


 中々に無茶を言う門番だ。

 村の周りには何も無く、一週間に一度しか出ない定期馬車でようやく辿り着いたのに、一体どう出直せというのだろう。


「――では、アリシアさんに取り次いでもらえませんか?」


 アリシアさんなら村にいるだろう。

 そう思い、再度門番に交渉を試みるが、若い門番の答えはにべもない。


「ふん、アリシアさんは今忙しい。お前のような怪しい者を相手している暇はない!」


 ――他人の知り合いかもしれない人に、よくそこまで言えるな。

 ある意味感心してしまうが、さすがにここで引き下がる訳にはいかない。


「――では、村長さんに――」


「カナタくん!!」


 村の中から僕を呼ぶ声がした。

 門の向こうでアリシアさんが僕たちに手を振っている。


 門番を気にしながら、俺はアリシアさんの元へと駆け出す。

 門番は特に追いかけてこないようだ。


「キュー!!(久しぶりっ!!)」


 ミウがアリシアさんへとダイブする。

 アリシアさんはミウを難なく受け止め、その胸に抱える。


「お久しぶりです、アリシアさん」


「カナタくんも元気そうで何よりだわ。……それに丁度良かったわ。泊まっていくでしょう? 積もる話は家でしましょう」


 アリシアさんに連れられて、家へと向かう。

 その道中――、


「あの門番、変えた方が良くないですか? 危うく追い返されそうになりましたよ」


 ちょっと愚痴を言ってみる。


「ごめんなさいね。昔からちょっと頭の固い子でね。――でも、根は悪い子じゃあないのよ。それに今は村の人全員気が立っているから」


 そう言われて周りを見ると、村人たちの雰囲気が確かに前とは違う。

 何というか、もっと楽しそうな活気があったような気がする。


「詳しい話は家でするわ。入って頂戴」


 ミウを抱えたアリシアさんに促されて、僕は再びダグラス家の敷居を跨いだ。




 バレン村産のお茶で一息ついたところで、アリシアさんが話し始める。


「実はね、近くにゴブリンの巣が発見されたのよ」


「ゴブリンの巣、ですか?」


「ええ、それで村の有志を募って先発隊を出したのだけれど、大怪我をして帰ってきちゃったの。現在は私の治癒魔法で治療中よ。元々戦闘に慣れてない人たちだから仕方ないのだけれど……」


「えっ! ダグラスさんもですか?」


「まさか、それはあり得ないわ。現在ダグラスは所用で王都にいるの。ダグラスがいたら、一人で巣に出向いていけば解決なんだけれど、今回それが出来ないから困っているのよ。今、村を襲われたら大きな被害が出るのは目に見えているわ。私が倒しに行くといっても村の人に大反対されるし……、それに怪我人の状態も思ったより状態が酷くて目が離せないから、どうしようかと思っていた・・・・・のよ。」


 ん!? 思っていた(・・・・・)? 過去形なんですけど……。


「――と、いうことでカナタくんとミウちゃん。村が襲われないように、ちゃちゃっと行って巣にダメージを与えてきてくれない? 殲滅しろとは言わないわ。ダグラスが戻ってくるまでの間に、ゴブリンが村を攻めてこられない位のダメージを与えてきてくれればいいから♪ もちろん報酬も出すわよ♪」


 アリシアさんがにこやかに無茶を言ってきた。

 

「いやいや、僕とミウだけでは無茶ですよ。村の人が集団で返り討ちに遭っているんですよね」


「カナタくんなら大丈夫よ。剣と魔法の腕はダグラスと私が保証するわ。私たちが1週間とはいえ、みっちりと教えたんですもの。自信をもっていいわよ。それに見た所、あれから強くもなっているみたいだしね」


 アリシアさんの揺るぎない自信は何処から来るのだろう。

 ――でも、アリシアさんの言葉を聞いていると、何だか出来そうな気がしてくるのが不思議だ。

 それに、アリシアさんにここまでお願いされると、流石に断ることは出来ない。


「わかりました。でも、危なくなったら逃げてきますからね」


「ええ、もちろんよ。引き際を見誤らないでね。本当は何人か村の人を付けてあげたかったのだけれど……。ごめんなさいね」


 アリシアさんが申し訳なさそうに頭を下げる。


「大丈夫ですよ。かえって僕とミウだけの方が小回りが利きますから」


「ありがとう、そう言ってもらうと助かるわ。悪いけどよろしくね。重ねて言うけど無茶はしないようにね。ある程度ダメージを与えたら戻ってくるのよ」


「はい。分かりました!」


 こうして僕とミウのゴブリン退治が決定した。

 女神様、討伐依頼を望んでいたとはいえ、少々ハードル高くないですか?

 心の中で女神様に愚痴ってみたが、特に返事は無かった。


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