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プロローグ

アクセス頂き、ありがとうございます。

お楽しみいただけたら幸いです。

 ふと、頬を伝わる風を感じて、僕ははっ(・・)と目を覚ました。


 ――ここは、何処だ?


 視界には抜けるような青空が広がっていた。

 鼻腔をくすぐるのは(かす)かな自然の匂い。

 そのままの体制で横を向いてみる。

 ……うん、どう見ても草だね。

 僕は気だるい身体に鞭を打ち、上半身を起き上がらせる。

 少し背の高い草が、僕の身体の形に添って下敷きになり、潰されていた。

 ………………。

 寝ぼけてはいない筈なのだが、誰がどう見てもここは部屋のベッドでは無い。


 数十秒の時間の経過と共に、僕の頭の中はようやく正常に働きだす。


「あれは夢じゃなかったんだよな……」

 

 その独り言に答える者は誰もいない。

 僕は、目覚める前に起こった出来事を思い起こした――





 ――――見た事もない白い空間の中にいた。

 下を見ても横を見ても、この空間の果ては白、それ以外には何も無い。

 何だろう? こういうのを異空間とでも言うのだろうか?

 自分自身も何だかふわふわと浮いているようで落ち着かない。


 そして、さらに僕を困惑させているのが、目の前で土下座をしている女の子。

 背格好は小学校低学年くらい、顔については伏せているので良くわからない。


 ここまできて、僕の頭の中には二つの疑問が浮かび上がる。


 ――ここは何処? 貴方はだあれ?


「ここは神域でちゅ。今の貴方は魂だけの状態でこの空間に存在してまちゅ」


 土下座したままの状態で女の子は答えてくれた。

 

 ――あれ? 僕、声に出してたっけ?


 それに、女の子の土下座の意味も分からない。

 このままの状態での会話っていうのも何だかやりづらいし……。


「あの〜、とりあえず頭を上げてもらえますか。お互い話しづらいと思うんですけど……」


 その言葉を受け、恐る恐るといった感じで女の子が顔を上げる。

 おっ! 可愛い!! 中々の美少女じゃないか。

 僕があと五歳若かったらストライクだったな。


 女の子の顔が途端に赤くなる。

 ――やっぱり聞こえてますよね。




 女の子の話では、どうも人間違いで僕の魂を回収してしまったらしい。


 ――本当は天寿を全うした九十五歳のお爺さんの魂を回収する予定だった事。

 ――一度回収した魂は、もう元には戻せない事。


 いろいろ説明を受けたが、要するに僕こと月島大空かなたは死んでしまったという事だ。


「……なんてこった。まだ十五歳だったってのに――」


 言葉では理解出来たが、それ以外がその理解に追いついていない。


「わたしのミスでちゅ。本当に申し訳ないことをしたでちゅ」


 目の前の女の子改め女神様は、目をうるうるさせて今にも泣きだしそうだ。

 ううっ、そんな目で僕を見ないでくれ。


 ――沈黙がどれくらい続いただろうか。

 何とか話せるくらいに心の整理をつけた僕は、その小さい女神様に話しかけた。


「…………僕が死んだことは理解しました。どうか頭を上げてください。まあ、もともと天涯孤独の身で、悲しむ人はいませんから……、ははっ」


 自然と自虐的な笑いが漏れる。

 僕の気持ちよ、折れるな。

 ここからが重要、一番大事なことだ。


「……それで、これから僕はどうなるんですか? まさか消滅してしまう何てことは無いですよね?」


 僕が僕である為の、この意識の消滅。

 ――考えただけで身震いしてくる。


 そんな僕の気持ちがわかってか、女神様は年不相応な?慈愛あふれる笑顔を僕に向けた。


「大丈夫でちゅよ。また新たに生まれ変わることになるでちゅから安心して欲しいでちゅ。ただ――」


「ただ?」


「一度回収した魂は、次の転生では元の世界に戻せないでちゅ。なので、わたしが管理するもう一つの世界の行ってもらうことになるでちゅ。そこでわたしが潰してしまった人生を、新たに楽しんで欲しいでちゅ」


「……それなら、まあ、仕方ないですね」


 消滅という最悪の事態は免れた。

 転生はすでに決定事項との事なので、何とか気持ちを切り替え、新たな転生先についていろいろ聞いてみることにする。


「それで、その世界ってどんな所なんですか?」


「貴方の世界風に言うと、剣と魔法のファンタジーな世界でちゅ。わたしのミスなのでいろいろ特典をつけるでちゅよ」


 他にもいろいろ聞いてみると、どうやら十五歳の体型のまま転生させてくれるらしい事がわかった。

 誰かの息子とかで転生する訳ではなく、僕個人がそのまま異世界に行くイメージだ。

 周りの環境が変わっただけで、今までの人生の続きと思えば悪くは無い。

 残念ながら僕の外見は変わらないらしいが……。

 多少中性的な顔をもっと男らしくできればと思ったのは僕の贅沢だろうか。

 そう思うくらいには気持ちの余裕もできた。


「では、転生を行うでちゅ。心の準備は良いでちゅか?」


「ええ、いつでもどうぞ!」


 ちっちゃな女神様が、何やら呪文を唱えると、僕を中心に魔法陣のようなものが展開された。


「気を付けて行ってくるでちゅよ。おまけもつけておいたので、後で確認してくだちゃいね〜〜〜」


 女神様の最後のセリフを聞くと同時に、僕の意識はブラックアウトした。



 


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