序章 本当の意味でのゲームスタート
朝起きたら、ゲームの中にいた。
何を言っているのかわからないだろうが、実際にそうだから困る。
どんなゲームかというと、『なんでも』できるゲームだ。
なんでもといったのは、このゲームでは文明を自分たちで作り上げることができるからだ。
サービス開始直後はそもそも人間どころか、動物すらいない状態だった。
初期はプランクトンがプレイヤーキャラクターだった。
その時点で飛びぬけていたが、そこからの行動の自由さがさらに飛びぬけていた。
移動はマイクロ単位から指定でき、一歩進むたびに無限とも思えるフラグが乱立し、その時点でできることならどんなことでもすることができた。
だが、実際そんなゲームが受けるわけも無く、サービス開始初期は『できのいいクソゲー』というレッテルを貼られ、表舞台からは姿を消していった。
だが完全に姿を消したわけではなく、一部のマニアなどに受けがよく地道にゲームが進められていったことにより、気づけばプランクトン時代は終わっており、生物が当たり前に存在するにまで進行していたのだ。
プランクトンの意味不明な選択肢は気づけば影が薄まり、あいもかわらず大量の選択肢は出てくるが、動物になっただけまだ理解できるものになり、それによって少しずつプレイヤーが増えてきた。
プレイヤーが増えたことにより、文明は加速度的に進化していった。
気づけば既に人間に近いもの〔厳密には違いがある〕が出来上がっており、プレイヤーも世界中で常時10億人がオンラインという世界レベルのゲームになっていた。
そして現在。
突然世界中のこのゲームのプレイヤーがこのゲームの世界にとらわれたらしい。
「あなたたちは、この世界で一生を過ごしてもらいます」
という運営の発言には心底驚かされたもんだ。
だが、それもそれでいいんじゃないかと思えてきた。
確かに現実でも楽しいことはあった。
現実でしか味わえないこともあった。
だがそれは、あくまでこのゲームがモニターの中だったころの話だ。
今は違う。
このゲームが現実なのだ。
なら現実に戻らなくとも、現実以上のことができるこの世界で、生活し続けることの何が悪いのだ。
そう思うと、しだいとこのゲームに現実味が沸いてきた。
どうせなら、この世界を楽しもうじゃないか。
続けるかどうかは気分次第です。