愛すべき呪い姫
衝動に身を任せて書いている駄文ですが、なにとぞよろしくお願いします。
「ん……う」
つつつ、と乾いた指先が汗で湿った肌を拭きなぞる。繊細な雪の様な白と吐き気を催すほどの黒、そして生々しい赤に彩られた、継ぎ接ぎだらけのソレの境界線。ぷっくりと盛り上がるそのラインに這わすたびに、目の前の女性からはひしゃげた喘ぎ声が漏れ出していく。
「あ、ひああああひゃあああはあはははははは」
そっと、胸元の薄い布で覆われた場所へと指を差し込んでみる。ある場所にあるものも無くて、それどころか酷く気持ちの悪い奇妙の柔らかさが指先を覆う。そう、まるで腐った肉に指を突っ込むような。
「はやくはやくはやくはやく、きて、きて。ちょおだいよおおおお」
歪んだ唇から聞こえる言葉には、普段の理知的な色もあったもんじゃない。狂ったような叫びと濡れた瞳は蛇のように絡み付いて、俺を放そうともしない。気が付けば女性の足と腕が逃がさないとばかりに、痛みを伴って俺の体を締め付けていた。
「ぐ……カリア、放してくれ」
「ひ、ひえあはあはははははははは!やだあああああああああ」
俺の声に一瞬だけぽかんと口を開け女性は泣きながら笑う。唯一美しく残った女性の髪を醜く振り回して、それこそ。
「やだ、やだやだやだやだ。私だけの、私の、他にはあげないから」
がりがりと、細くか弱い指が背中を引っかいていく。そこに気遣いなんてモノは無く、ただ指に引っ掛けて俺が逃げていかないようにしようとばかりに強く、食い込ませながら。
そして俺を見つめるその形相は、それこそ。
「行かないで……お願いだから」
俺には、ただの女性にしか見えなくて。
「んっ……あ、あは……嬉しい」
巷で噂の『呪い姫』なんてものがこの女性に似つかわしくないと心から思うようになったのは、きっとこの時がきっかけだったのだ。
そしてそれは、俺がこの世で生きていくことを決意した瞬間だった。救いようのない、戦いと出会いに満ちた薄暗いこの世の中で。