太郎の女性観
翌日、太郎と亀は海岸で待ち合わせて、一緒に市場に行くことにしました。
「市場に行けば、どこかにプロペラが売ってるだろう」
「はい。楽しみです」
太郎と亀は、早速歩き始めました。
「あれ?」
気がつくと、亀が遥か後ろの方をゆっくりゆっくり歩いているではありませんか。
「太郎さん~」
亀は、また泣きそうな小さな声で太郎を呼んでいます。
「ああ、そうか。すまんすまん。お前は歩くのが遅かったんだな」
「これでは、一緒に市場に買い物なんて行けません。。。」
太郎は、しばらく黙って何かを考えていました。
「あ、いい考えがある!」
太郎は、そう叫ぶと、どこかから亀と同じ大きさの板と4つの小さなタイヤを拾ってきて
小さな台車をつくりました。
「おい、亀よ、お前はこれに乗ればいい。オレが引っ張ってやる」
「おおおお~」
亀はうれしそうに小さな叫び声をあげて喜びました。
太郎は海岸から市場に向かう「林の森道路(現在の台北市林森北路あたり)」を、
亀の乗った台車を引っ張りながらゴロゴロと歩きました。
それを見た村の人々は、もの珍しそうに太郎たちを見ています。
「あら、太郎さん!素敵な亀を連れてるわね~」
「お!その亀は本物かい?」
道行く人々が次々と太郎に声をかけます。
「太郎さん、大変な人気ですね~」
亀は、甲羅から顔を突き出して、少し驚いた顔をして言いました。
「まあね、この辺りは昔よく遊びに来たからね」
林の森道路周辺は、この村で一番の歓楽街で、街のあちこちに若い女性が立って手招きしています。
「太郎さんは、本当に女の人が好きなんですね~」
亀は、少しあきれた顔をして太郎を見ながら言いました。
「おい、亀よ、実はオレは、ああいう女は苦手だ」
そう言いながら、化粧の厚い歓楽街の女性を指差しました。
「へ~、じゃあ、どんな女性が好みなんですか?」
「化粧は薄いほうが女は美しい。」
「そうですか?」
「うん、しかもあいつらの目当ては金だ。」
「まあ、そりゃあそうでしょうね。あの人たちも商売ですから」
「ああ。」
太郎は、そううなづきながら亀を見てニコッと笑いました。
「オレはな、賢い女が好きだ」
「賢い女?」
「一緒にいてお互いに学ぶことが多い女だ」
亀は、わかったようなわからないような顔をした後、スクッと甲羅の中に首をひっこめました。
そんな時、一匹の兎が通りの向こうから飛び跳ねてきました。
ピョン、ピョン、ピョン
「太郎さん~!大変、大変、大変!!」
兎は、なにかものすごくあわてた様子で太郎のもとに走り寄ってきます。
「お!うさぎ!どうした?」
亀もまた、甲羅から首を出して、息を切らして跳んでくる兎を見ていました。