亀との出会い
むかしむかし、台の北村(たいのきたむら ※現在の台湾北部台北付近)という
南の島の先端に、名前を「こばしま太郎」と言う、ひとりの青年がいました。
三度の飯より女が好きな太郎は、
毎週日曜日になるとスタバ海岸で人魚釣りをしていました。
「あ~今日もかわいい人魚は釣れないな~」
太郎は、大きなあくびをして、ふと海岸の方を見ると、子供たちが一匹の亀をいじめていました。
「こらこら!お前ら!何をしてるんだ!」
太郎は、子供たちのところに駆け寄り、大きな声で怒鳴りました。
「あ!女好きの太郎が来た!逃げろ~!」
子供たちは、太郎にアッカンベーをしながら一目散に逃げていってしまいました。
「まったく、今どきのガキは本当にどうしょうもないなあ~」
太郎は、そうつぶやきながら足元で泣いている亀を見て言いました。
「おい、亀よ。お前は歩くのが遅いから、あんなやつらにいじめられるんだよ」
「しかたないですよ、甲羅が重くて、早くなんて歩けやしないですよ」
亀は、泣きながら太郎に訴えました。
太郎は、亀を見て言いました。
「そりゃあそうだよな。この甲羅を背負って早く歩けって言うほうが無茶な話だ」
「そうなんです。時々、いっそ、こんな甲羅なんか脱ぎ捨てて、
裸で歩いてみようかと何度考えたことか...」
太郎は、泣きながらそう話す亀が哀れで仕方なく思えてきました。
「そうだ!いい考えがある」
「なんですか?」
「お前の甲羅にプロペラをつけてあげよう」
「プロペラ...?」
「そうだ。プロペラがあれば早く走れるし、空も飛べる」
「なるほど!それはよい考えですね!」
亀は、太郎の提案がとても気に入ったのか、急にご機嫌になってこう言いました。
「太郎さん、もし、プロペラをつけてくれたら、
あなたを海の底にある龍宮城に連れて行ってあげますよ」
「龍・宮・城...?」
「はい、あの浦島太郎の物語に出てくる海のお城です」
太郎は、それを聞いて、急に心の中にバラの花がたくさん咲いたような気がしてきました。
「おい、亀よ!龍宮城には、かわいい人魚がいっぱいいるのか?」
「もちろんですとも!かわいい人魚に囲まれて、鯛や平目の踊りが見れますよ」
太郎は、鯛や平目の踊りには興味はないといった顔をしながら、
龍宮城でかわいい人魚に囲まれている自分を想像して、ひとりニヤニヤしていました。
亀は亀で、自分の甲羅にプロペラがついて颯爽と走る姿を想像しながら、
うっとりとした目つきで太郎を見ていました。
「よし、なんとしても亀の甲羅にプロペラをつけてみせるぞ....」
太郎は、海に沈みかけた夕陽を見つめながら、何度もそうつぶやきました。