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殺し屋、準備

エタッてすみません。


令和になる日を記念に復活しようと頑張ってみたのですが、書けないからエタッたのであって2週間以上かかりました。


編集画面を開いては閉じを繰り返しているうちにこんなにも日数がたつとは驚きです。


今後ともよろしくお願いします。

諸葛亮の残していった大量の仕事を部下に手伝わせ、何とかさばく日々が続くなか、ついにその情報がもたらされた。


急ぎ下邳へと向かい軍議を行う。


母は今もなお体調を崩しているので、主導は俺だ。


まずは情報を纏めている夕に話を聞く。


「いよいよ動き出したか。


敵は曹操軍だけでいいんだな?」


「はい、袁紹、袁術共に兵を集めているものの動きはないとの報告です」


「その兵は漁夫の利狙いか。


昌豨と劉備が働いてくれればどうにかなるんだが、劉備は動いてくれてるのか?」


「報告によると劉備はすでに孔北海に要請を承諾させ、その足で平原を抜け、南皮に入ったようです。


兵の動員に紛れることで捕まることなく幽州へむかえるかと」


まぁ、そこまで行けば大丈夫だろう。


冀州に入ったのなら裏切ろうにも袁紹が邪魔で動けない。


どのみち公孫瓉の協力をえられなければあいつ自身の兵力はほぼないからな。


北での反乱はないとみていいだろう。


警戒すべきは兗州の賈詡、法統、趙雲と逃亡中の御遣い、関羽、諸葛亮に絞るべきか。


兗州にいる賈詡達三人は恋と陳宮に監視をさせているのでそうそう問題は起こさないはずだ。


やはり御遣いが面倒だな。


打てる手は打ったから現状はどうしようもないが、目障りというかなんというか。


こいつがいなければもっとスムーズにことが運べただろうに邪魔なやつだ。


「それなら昌豨はどうした?


陳登と一緒に広陵に向かったからそろそろ話が纏まってもいいはずだが?」


「どうも袁術配下の張勲が執拗に孫策を監視しているようで秘密裏に数度会ったものの話は進まず。


現在は張勲の説得に活路を見出したと報告がきております」


「それは時間がかかりそうだな」


真巳なら余裕だと思っていたが、そうか張勲が関門になるのか。


報告によると、袁術という無知な餓鬼におべんちゃらを使っていたイメージが強いが、あれはあれで馬鹿を上手くコントロールする上手い手法ともいえるし、戦闘指揮もそつなくこなしていた。


正直な感想をいえば馬鹿なのか賢いのかよくわからない奴としか言いようがない。


行動理念も袁家の利益というより袁術を楽しませることのようだった。


そこだけ見るとかなり馬鹿なように思えるのだが、孫策を監視している時点で勘は悪くない。


考えれば考えるほどよくわからない奴だが、真巳が活路を見出したと言うのならなんとかなる程度の相手だということだろう。


信頼するしかないしそもそも信頼しているから気にするのも止すか。


「次は曹操軍の兵力、進撃路、将兵の情報をくれ」


「はい、曹操軍は約二万、兗州の呂将軍を無視して真っ直ぐ徐州に向かうものと思われます。


確認されている将旗は曹、夏候、張、楽、李、于。


目撃情報から許楮、典韋、郭嘉、程昱も従軍しています。


父の仇を討つと宣伝し、かなり無理な動員を行ったもようです」


「将はほぼ全員、兵もかき集めて総力戦って感じだな。

 

こっちは徐州で三万、兗州は掌握し切れてない上に御遣いの警戒もあるから一万五千、計四万五千ってところか」


兵力では勝ってるんだが、質を考えるとなんとも言えないな。


呂布とか趙雲が兵を率いてくれるならいけそうなんだが、兗州を開けると御遣いに乗っ取られる可能性もでてくる。


呂布は兗州で待機となると、趙雲か呂布の副官である高順になるわけだが、どちらも俺と相性がよくないんだよな。


それに趙雲が背かないっていう保障は簫建の言葉以外にはない。


だが、高順だけでは先の戦のように張遼に突撃されて負けてしまうだろう。


用兵の巧さは随一だが、個人的武勇は上の下くらいという印象だ。


この世界では劉備軍のような流民のような兵でも将が最強だから連戦連勝なんていうふざけたやつらもいるから、用兵の巧さを生かしきるのは難しい気がする。


やはり高順と趙雲の二人に出てもらうしかないか。


「それで相手の兵糧はどうなっている?


こちらは籠城しても一年はもつだけあるが、曹操でも普段の倍の兵力ともなれば、かなりキツいだろう」


「それは私が答えよう。


今回、徐州の民から兵糧を徴収するのは極力避けた。


大半は兗州と揚州から金に糸目をつけず集めたので曹操軍、ついでに袁術軍はかなり苦労したはずだ。


曹操軍はもって三月、早くて一月程度の兵糧しかないだろう」


そう答えたのは陳羣だった。


疲れた顔を隠そうともせず、しかし、澄ました顔で自慢げに胸を張る姿は普段と違ってなかなか愛嬌がある。


が、史実を知っていればそこに問題があることに気づく。


徐州大虐殺だ。


住人が死ねばその後の物資は曹操軍の懐に収まることになる。


「曹操は兵法に明るい。


最低限の腰兵糧と敵地からの略奪で兵站を賄う可能性がある。


その場合はむしろ相手の補給を助けることになるが?」


「曹操もそこまで馬鹿ではないでしょう。


そんなことをすれば例え勝てたとしても徐州の統治は不可能になる」


兵力差を考えてか、負けることなどないと自信を匂わせながらも問いに答える陳羣。


だが甘い。


それが常識だとしても曹操は史実で実際に虐殺を行っているのだ。


どう答えたものかと考えたが、ちょうど良いことに御遣いの存在があると思い出した。


「いや、さっきのは失言だった。


先に謝っておく。


すまない陳羣、これは俺が伝達し忘れたせいだ。


今回のこれは侵略ではなく復讐だ。


統治のことなど考えていない。


御遣いが言い渋っていた徐州でおこる大変なことって言うのはこのことらしい。


聞き出したところ、あいつの知識では十万の大軍によって徐州の民三十万人が殺し尽くされたそうだ」


「なっ、何故そのようなことを黙っていたんですかあいつは!?」


「自分で防ぎきれると思っていたんだろう。


実際、曹嵩の護衛に成功してくれていれば何も問題はなかった。


結果はこのざまだが、今は俺が裏で手引きしたとでも思って復讐の機会を持ってるんだろうよ。


ついでに曹操が十万の大軍を揃える国力を持っていないってのもあるな」


「確かに軍勢が二万ということになっていますが、そういう問題ではありません。


籠城用の兵糧を蓄えたのにも関わらず、野戦で打ち勝つ以外、存続の道がないと言うことが問題なのです。


籠城で勝とうが、野戦で負けようが民が殺されては徐州は生きていけない」


実際はこんな情報を民が知る由もないから、籠城の選択肢はあるんだが、今仲間に伝えてしまったから流石に無理だ。


まぁ、そもそも曹操に勝てない限り、周りからハゲタカのように荒らされてどうしようもなくなるだろう。


「民からの信用を失わないためにもそうなるだろう。


兗州の一万五千が間に合えば勝てる見込みもあるが、徐州単体だと五分五分……いや、負ける可能性が高いか」


「そのような弱気でどうするのですか。


こちらは敵に倍する兵力をもっているのです。


防御に徹せば曹操といえども打ち破ることは出来ず、兵糧切れで撤退するところを追い散らせば勝つのは容易いはず」


「そんな簡単なことじゃありません。


敵はこちらと戦わなくともこの地を荒らせば勝ちなのです。


亀のように閉じ篭もっていては、素通りされて終わりです。


やはり一戦して最低でも膠着状態に持ち込まなくては」


そこで響いてくるのは妹二人の声だ。


慎重な紅葉に積極的な言葉といった感じ。


ただ、言ってることは正しいが喧嘩腰に聞こえるのは気のせいか?


顔を眺めてみればどちらも真剣な表情で、争っている風ではない。


どちらも今の報告から情報を整理して最善と思う作戦を提示してくれたのだろう。


そして現状ではこの二つが主な作戦なのは確実だ。


まぁ、どちらも曹操に勝てなきゃ失敗に終わるっていう厳しいものなんだがな。



「曹豹殿、曹操の用兵に勝てる自信は?」


「真正面からぶつかれるのであれば五分。


しかし、徐州全域を護りながらであれば勝てぬでしょうな」


「俺の言えたことではないが随分と弱気だな」


「一戦も交えていなければ強気にもなれていたのでしょうが、その腕が示すように練度が尋常ではありませんので」


そういう曹豹は俺の偽物の腕を見る。


まぁ、奇襲を返り討ちにしたとなれば並ではないとわかるのも納得だ。


肩をすくめてみせれば曹豹が出すぎたことをと言って頭を下げる。


かまわないと手を振りながら思考を続ける。


真正面から正々堂々と戦えば五分ということは、相手もそれは避けてくるだろう。


例えば部隊をいくつにも分けてこちらの本隊から逃げ回りながら徐州を荒らすなんて言うのも手だ。


決戦を避けられたらこちらにはどうしようもない。


さらには別働隊を餌に背後や側方から奇襲をしかけて防衛能力を喪失させてから荒らすという手もある。


こっちが曹操の企てに気付いていることを気付いていることが前提だが、敵兵を一人たりとも後ろに抜かせることができないこちらとしてはこれも拙い手だ。


つまりはだ。


どうにかして敵の分散を防ぎつつ、五分の相手に勝つ。


この方法を考えるしかないということだな。


まず、部隊が集合している状況といえば、戦場に向かう行軍中、城に籠城しているとき、決戦のため向かい合うくらい。


あ、いやまて、退却するときもそうか。


ただ、この四つのうち籠城と決戦は考えなくてもいいだろう。


籠城するわけもないし、決戦してくれるなら策を弄する必要もない。


つまりは行軍中の奇襲か、どうにかして退却させればいいわけだ。


だがまぁ、奇襲は無理だろうな。


三万もの兵を動かせば隠蔽は難しいだろうし、少数なら前回の二の舞だ。


かといって退却させるとなれば痛撃を与える以外には……待てよ。


それは三国志であったじゃないか。


今は呂布が手下だから失念するところだった。


「兗州の軍には陳留を襲わせる。


しかも徐州に曹操軍を引き込んでからだ」


「なるほど陳留防衛のため引き返す所を追い散らすわけですか」


「それならばこちらの被害も少なくすみそうね」


俺の考えに曹豹、陳羣が納得の表情で頷く。


まぁ、史実でおきた張邈、陳宮が呂布を迎え入れての反乱を再現するようなものだ。


徐州防衛に兗州の軍を使えなくなるのは痛いが、補って余りある戦果を生み出せるだろう。


もし陳留がとれたなら曹操軍は四方を敵に囲まれて袋の鼠だ。


「徐州に引き込むと言いましたが、具体的にはどの辺りに?」


「そうだな。


本当なら泗水を挟んで対峙したいから下邳と言いたい所だが、それだと露骨すぎるし、追撃も難しい。


沛だと防備も薄いから彭城になるか」


「それならば彭城以西の住民を逃がす必要があるのでは?」


夕にされた質問を返していると突然、聞きなじみのない声が聞こえてきた。


誰かとそちらを見れば尼僧のように白い頭巾を被り、垂れた糸目の顔に儚げな表情を浮かべこちらを見つめる妙齢の女性がいた。


直接関わることはなかったが、俺はこの女を知っている。


窄融だ。


史実と違い何故か真面目に輸送の仕事をしていたので、今まで監視こそしていたが、なかなか排除出来ずにいた。


この世界の董卓のようなパターンなのかもしれないが、史実ではかなりの悪人だ。


むしろ悪人はこの世界では穏やかな女になるのかもしれない。


まぁ、重要なのはそこではなくて、この徐州侵攻を契機に史実の窄融は揚州で蟠踞を開始するのである。


必然、警戒心を強める。


「私が広めている浮屠(仏教)の教えでは罪を犯すことを禁じています。


争いなどもってのほか。


ですので、私と信者はすでに陶徐州より広陵へ避難する許可を得ております。


そのついで、と言っては何ですが戦場になる地域の無力な住民を連れて避難する許可が欲しいのです」


言っていることはまともだ。


が、既に許可をもらっていることといい準備がよすぎる。


「何故広陵に行く?


あちらも袁術がキナ臭い動きをしているだろう。


下邳でもいいはずだが」


「下邳には病身の陶徐州がおります。


民の不安の声を直接聞かせるのは拙いと思いまして広陵に。


それにまぁ、袁家は動かないでしょうし、動いた所でたいしたことはありません」


「凄い自信だな」


「浮屠の信者も情報収集能力が高いのですよ。


黄巾をつけるようなこともありませんからね」


気づかれていたのか。


そういう窄融の瞳は糸目にも関わらず酷く冷たい。


こちらも見つめ返しているとふい、と視線を切られ背をむける。


「おい、どこへ行く」


「民を護りに行きます。


あなた方の楽観論を聞いていると急いだ方が良さそうなので」


「貴様無礼だぞッ」


「私の主は陶徐州なので」


見向きもせずそう答えると激昂する紅葉を無視して本当に外へと歩き出す。


「その言葉本当だろうな」


俺の言葉に一度足を止めた窄融はしかし、返答すること無く去って行った。


監視されていたことへの怒りなのだろう。


本当に母への忠誠心はあるのか。


楽観論とは何か。


それら全てを無視して去って行った後ろ姿を見つめることしか出来なかった。

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