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殺し屋、苦境

続きがかけなくて軽く失踪しかけましたが、何とか完成。


前話とだいぶ内容がかぶってますが取り急ぎ投稿します。


お待たせして申しわけありません

袁紹と袁術の動きがきな臭いと報告があったのは、曹嵩一行が予定通り進めば無事陳留に着くだろうころのことだった。


両者は軍備を進めており、密かにではあるが、使者の往来も確認されたというのだ。


まぁ、どちらも公孫賛と劉表という潜在的敵国が存在しているから、軍備自体はおかしくないが、使者の往来はあり得ない。


それほど両者の仲は悪いことで有名だった。


反董卓連合の時も戦功を争って我先にと突撃したおかげで、徐栄らの痛撃をくらったと聞く。


その敗戦理由も互いにおしつけあってたらしいから、餓鬼みたいな頭の出来ということも加えて、共通の利害でもなければ同盟なんてことはないはずだ。


「どう思う?」


「ふむ、あまりにも時期が一致しているからな。


同盟……もしくは何者かが裏で糸を引いている、なんてこともあるかもしれない」


「同盟ってのは考えたくないな。


もし兵が南北から攻めてきたら出来なくはないが持ちこたえるのも厳しいだろう。


それで何者か、というといくつか候補があるが…………」


「怪しいのは両陣営の配下か曹操、次点で劉表、大穴で御遣い共といったところか」


「それが妥当か」


納得したふりをするが、傍らにいる真巳と話してもどうも腑に落ちない。


配下の独断専行で同盟が決まるとは思えないし、曹操はそんなことをする性格ではないだろう。


劉表も下手に藪をつついて蛇を出したくはないはずだ。


御遣いも馬鹿ではあるが争乱を望む人間ではない。


ならば誰が?となるとお手上げ状態だ。


「まぁ、こんなことを考えてもしょうがない。


早急の課題はどうやってこの局面を乗り切るか、だな」


「まず、同時に相手するってのは考え物だ。


同盟を結んでないにしても同時に攻め込んでくれば、袁紹の方は公孫賛が後背を脅かしてくれればどうにかなるだろうが、史実からして気は抜けない。


曹操軍と袁術軍とを合わせればこっちの三倍以上の兵数だ。


しかもこっちは南北と西の三方に備えて兵を送る必要がある」


「ならばどちらか一方と結ぶしかないな。


袁紹と袁術、青葉はどちらをとる?」


まぁ、わからないことを考えてもしかたがない。


対策の方が現実的に考えられてわかりやすいだろう。


だが、真巳の選択肢では手駒として使い捨てられるのが目に見えている。


いや、待てよ。


少し前に考えていた孫策との同盟は?


上手くやればこの期に敵を減らすことも可能か……。


「そうだな、どちらも選ばない手を考えた。


御遣いどもがせっかく結んでくれた縁だ。


北で公孫賛に暴れてもらって、黄河を渡る敵は孔融のところの太史慈に任せる。


曹操も呂布に任せれば大丈夫だろう。


そしてこっちは袁術を消すために孫策と結ぶ」


「ほぅ、随分と大きな賭けにでるんだな。


それにさっきと言っていることが違う。


両方を同時に相手しないのではなかったか?」


真巳が当然の疑問を口にする。


それに頷きを返しながら先ほど思い付いたことを話す。


「どうせどちらかと結んだとしても先鋒を押し付けられて使い潰されるだけだ。


それならすでにそんな目に遭っている孫策に恩を売る形で味方につける」


「恩を売るとして手放すものはなんだ?


噂からすると金に目が眩む連中ではないし、兵力を借すとなると目立ちすぎる」


「簡単なことだ。


連中が1番ほしいもの、寄って立つ土地をくれてやる。


幸い会稽には母が推挙した王朗がいるんだ。


袁術がこっちに進軍してきたら王朗に暴れてもらって、それを排除するっていう名目で孫策が離脱してくれればいい」


「ん、離脱するだけでいいのか?


てっきり内応して内側から食い破ってもらうものだとおもっていたが」 


「それだと餌にはなりえないだろう。


領土を与え、目の上のたんこぶを排除してこそ恩が売れる」


「なるほどな。


だが、それだと袁術を倒せたとしてもより厄介な勢力ができあがるだろう?


史実の呉のような存在はできない方がいい」


難しい顔でそう真巳が言う。


確かに史実の呉は自国の利益のために魏を倒す機会を潰すような愚行をする国で、俺もそんなに好きではない。


が、孫堅との付き合いで顔を合わせた孫策の事を思い出してみると我ながら悪くない案だと思う。


呉を嫌いな原因、妹の孫権は真面目で堅物、何をするにも考えすぎて動けなくなるような感じだったが、姉の孫策は気楽で直感的、何も考えず楽しい方へ向かっていく、猫のような印象だった。


「昔縁があってあそこの姉妹とは顔をあわせたが、妹はともかく姉の方はいい女だったぞ。


あれが呉を興すなら大丈夫なはずだ」


「だといいがな。


それに、許貢の部下による暗殺はどう防ぐ?」


そこで真巳がすっかり抜け落ちていた知識を尋ねてきた。


「あぁ、それがあったな。


許貢とは関わりもないから殺される前に逃がすことも難しい。


暗殺の実行を防ぐのは難しいだろう。


怪我の治療と解毒なら華陀の部下をつければなんとかなるか?」


「史実での死因がいまいち分からないからな。


そのくらいしか方法がないか」


「まぁ、暗殺がおきないのが一番いいんだが、性格的に単独行動を控えさせるのは難しそうだからな。


死なないでいてくれることを願おう」


真巳と二人で頷きあいながら今後の事を考えて孫策の無事を祈る。


だがまぁ、この策は袁術、袁紹の同盟が事実ならという但し書きがつく。


可能性としてはそこまで高くない。


が、孫策とつなぎを作っておくのは悪くない判断だろう。


問題は誰を送るかということだが……。


そのことに思考をとばそうとすると、不意に外が騒がしくなった。


訝しんでいる間にもその音は徐々に大きくなり、戸が勢いよくあけられ泥まみれの兵がよろけながら入ってくる。


「報告しますッ!


二日前の夜、曹嵩一行が偵察をすり抜けた少数の何者かの襲撃にあいました。


関将軍が応戦し、我が軍の損害軽微で賊を撃退するも曹嵩殿が流れ矢に当たり死亡。


関将軍、御遣い両名は先行して偵察をしていた臧騎都尉の旗下数名を害して西へ逃亡した模様です。


臧騎都尉の指示により呂将軍へ援軍を要請。


西の州境を封鎖し、協力して両名の捕縛を行うとのことです」


「……報告ご苦労。


後でより詳しく聞くことになるだろうから今は休め」


「はっ、失礼します」


これは厄介なことになった。


真巳と二人して大きな溜め息をつく。


「これは曹操が全軍を率いて徐州になだれ込んでくるぞ。


そうなれば袁術も袁紹も黙ってはいないだろう」


「そうだろうな。


だが、それにしても時期が揃いすぎている。


こっちの被害が軽微な上で曹嵩が殺されたとなれば、元々曹嵩を狙っての襲撃と考えて間違いないだろう。


となれば犯人は曹操か?


この一連の流れなら曹操に利がある」


「目障りな父の排除と、親を害されたという大義名分を得るためか。


しかし、そうはいっても、性格的に曹操がこんなことをするとは思えないんだが……」


「まぁ、そこはいいだろう。


問題はこれからの動きだ。


曹操に備えながら御遣いを捕まえ、袁術、袁紹の動向にも気をつけながら公孫賛にもしもの援兵を請い、孫策と誼を結ぶ。


やることは多いぞ」


「曹操との戦は俺が指揮する。


御遣いは狛に追わせて呂布も軍備だな。


袁術、袁紹はまだ動いてないから二の次だ。


公孫賛への使者は劉備と簡雍で良いだろう。


孫策への使者は諸葛亮が……いや、御遣い軍として結ばれたら面倒だ。


麋竺……いや、真巳、お前が行ってくれないか」



俺がそう言うと真巳は驚きに目を見開き、次いで俺の正気を疑う目を向けて襟元をぐっと開いた。


必然、元から見えていた火傷痕のケロイドがその全体を表す。



「私がか?


こんな醜い火傷を負った人間が外交などできるとでも?」


「そんなことを気にする女じゃないさ。


それにお前に頼むのは陶徐州としてではなく俺個人としてあいつと盟を結びたいからだ。


頼めるか?」


真巳の心配も分からなくはない。


中国史では基本的に美醜で扱いに大きな差がうまれることが多いからだ。


実際、史実での龐統も孫権に見た目が悪いからと登用してもらえていない。


だが、孫策は本質を見抜く力は持っているだろうし、そもそもそんなことで同盟を拒絶するような奴なら、例え滅びようとも盟を結ばない。


人の愛する女をなんだと思ってる。


「そういうことなら微力だが、協力しよう。


与える領土はどの程度に考えている?」


「江東と寿春以南だな。


一応は安東将軍だから寿春は必要だが、他はどうでもいい。


天下を二分しようと持ちかけるのもありかもしれないな」


「天下二分の計か。


確か史実の甘寧が提案していた策だったな。


実現できれば無能な君主か、楽毅や白起のような怪物が現れないかぎり平和になるだろう」


「俺達の子孫が有能な君主であり続けてくれればいいがな。


まぁ、その前にこの危機を乗り越えないといけないわけだ」


「説得に向かってる内に私の帰ってくる場所を無くさないでくれよ?」


「馬鹿を言うな。


袁術の領土を分捕るついでに曹操を捕らえて盛大に迎え入れてやるさ」


「ふふっ、そうか。


期待している。


それでは早速敵地に向かう準備でもするとしようか」


「あぁ、頼んだぞ」


分かっていると言わんばかりに背中越しに手を振る真巳を見送り、一つ溜め息をつく。


今まで利用してきた史実が今後、どれほど役に立つかも分からない不安と今回の事を裏で操る人間の存在。


考えることが先行きの不透明なことばかりで嫌になる。


まぁ、この危機を乗り越えれば華北を抑える機会がぐっと増えるわけで、それを明るい未来と考えられなくもないんだが、見得を切ったもののこの戦に勝つのはかなり厳しいかもしれない。


曹操が豫州と兗州をとってないことでかなり弱体化してはいるものの、全力を向けて滅ぼせないのが痛い。


徐州の虐殺に袁家の介入など考えもしなかった。


これが史実の限界ということなのか、それとも歴史を俺が変えすぎた代償か。


まぁ、気にしていてもしょうがない。


なるようになれだ。


先立っては間者の数を増やして、ついでに呂布と護衛組に曹操への警戒を呼びかけるか。


全く御遣いは面倒ばかりおこしやがる。

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