殺し屋、育児
更新大幅に遅れて申し訳ありませんm(_ _)m
あと、短いです。
完結までは頑張ります。
簫建の報告を聞き終わり、情報収集の手配を済ませると自分の部屋に向かう。
着けたばかりの義手の重さのせいで若干バランスがとりにくいが、ゆっくり歩けば何とかなるし、腕をなくした時と同様に、これもじきになれるだろう。
軽くふらふらしながら部屋にたどり着けば、幼い子どもの声が扉越しに聞こえてくる。
その声に思わず笑みを浮かべながら部屋に入れば、そこには夕と抱かれた晴、さらには真巳までいた。
晴は二人の母に遊んでもらってキャッキャッと随分と楽しそうに笑っている。
これなら大丈夫かもしれない。
目線を合わせるようにしゃがみ
「晴、こっちに来るか?」
「あ、馬鹿なことをするな!」
声をかけた瞬間。
今までの笑顔が嘘のように消えて、下唇を噛みしめた不細工な表情になると、こちらから隠れるように夕の胸元に顔をうめた。
うん、まぁ、いつものことだ。
泣かれないだけ進歩したと言っても良い。
というか真巳も酷いことを言うな。
言うに事欠いて馬鹿なことをするな、とは……。
実の息子に嫌われた父親が少しでも距離を縮めようと頑張っただけなのだが。
そんな批難をこめた視線で真巳を見ると、呆れたようにため息をついてこちらに歩いてきた。
「青葉、お前が晴にしたことを思い出してみろ。
遊ぼうとするのは良いが、普通何度も子を落とす父親はいないだろう。
お漏らししたら臭いと怒るし、親として愛情が足りないとしか言えない。
怖がられない要素がないだろう」
「臭いってのは事実だし、落としたのは片手なくなって慣れてないときだけだろう。
あ、そうだ。
曹操から義手が送られてきてな。
これなら将来、晴に剣術とか教えられると思わないか?」
こちらの言い分を伝えると真巳はやはり険しい表情でこちらを睨む。
「お前はやはりどこかおかしいな。
血の繋がりがない私ですら怒りを覚えたし心配したのに、実の父がその程度の認識だとは。
稽古などしたら大怪我をするんじゃないか」
「あぁ、まぁ、あり得なくはないって思われるか。
こっちとしては大切にしたいって思ってはいるんだが、どうもな」
前世じゃあ虐待されて育った子は親になった時、自分の子を虐待すると言われていた。
今回の人生ではなかったが、前世の記憶があるせいでその現象が起きているのかもしれない。
こういう所だけは記憶が無ければ、と思ってしまうな。
嫌なことを思い出して気が滅入っていると夕が晴を抱いて近づいてくる。
「真巳さん、あまり青葉様を苛めないでください。
手伝ってくれようとするだけでありがたいですし、晴だってこうして無事なんですから」
「夕、お前は甘すぎるぞ。
お前がそんなことだから青葉がつけあがるんだ」
「真巳さん、あなたはさっき愛情が足りないと言いましだが、私はそう思いません。
晴が落ちた時の慌てた様子、臭いと文句を言いながらきちんと最後までやりきる姿。
愛情がなければあのようにはなりません。
晴だって泣きますが、嫌ってはいないんですよ」
夕はそう言うと腕に抱いた晴をこちらへと寄越す。
晴は戸惑ったように夕を見つめるが、優しく促すと何か察したのか、恐る恐る小さな手を伸ばしてきた。
こちらも恐る恐る脇の下に手を入れその小さな体を持ち上げる。
以前、抱いた時よりもだいぶ大きくなったことを感じさせる重み。
そして、抱いても晴が泣かなかったことに思わず感動してしまう。
「良かったですね、青葉様。
ほら、もう少ししっかり抱いてあげると晴も安心しますよ」
「あぁ、ありがとう」
夕はそんな様子を見て微笑みながら、腕で抱えられるように晴を動かしてくれる。
そんなことすらできない自分を恥ずかしく感じると同時に、夕が母親になったことをしみじみと感じ、素直に感謝した。
その一方で、晴はこちらの様子よりも義手の絡繰りに興味がいったようだ。
把手を掴んで前後に動かそうと頑張っている。
左右にしか動かないんだが、それを指摘して嫌われたくないから黙って見ていると、それを見た真巳もやっと義手に興味を持ったのか、こちらに来て義手をしげしげと眺める。
「これは絡繰りか。
なるほど、これを動かせば手が閉じるのか。
確か曹操が贈ってきたと言っていたが、なにが目的なんだ?」
「目的は分からない。
腕がない俺を倒してもつまらないって余裕のあらわれかもしれないし、ただの善意って可能性もなくはない。
ただ、近々会いに来るらしいからそれに関連しているのかもしれないな」
「予測でしか話せない状態ですか。
不気味ですね」
そして義手から曹操についての話に移ったが、中身はそれほどない。
そんなことより真巳が絡繰りを動かしたせいで晴が不機嫌になったことが気懸かりだ。
今は把手の動かし方を理解したのかガチャガチャとしているが、たまに目を擦ったりしてどういう感情なのかよく分からない。
どうすればいいかも分からずあたふたしていると
「あっ、晴がぐずりそうなので預かりますね。
遊んだからか眠たくなったみたいです」
「あ、あぁ、頼んだ」
晴の変化に気付いた夕が素早く回収して、寝室に連れて行ってしまった。
さらに夕が抱っこして移動する間に寝息が聞こえてくる。
流石母親、と感心しながら見送っていると真巳がしなだれかかってきた。
何事かと視線を移せば、そっと手を取り自身の腹部に手を当てる。
その行動に驚くが、少し考えるとその意味に思いあたる。
まさかと顔をこちらに向けさせればゆっくりと真巳は頷いた。
思わず大声を出しそうになったところ唇に指を添え、静かにするよう指示される。
「少し不安だったから言うかどうか迷ってたんだが、さっきの様子を見ると大丈夫そうだからな。
私の子も大切にしてくれるだろう?」
「当たり前だ。
よくやったな、真巳」
「流石に二年かかるとは思わなかったがな。
華陀の見立てよりは早いそうだ。
『愛のなせるわざだ』なんて臭いことを言っていたよ」
そう言って遠い目をしてから手を握り、夕が出て行った戸に視線を向ける。
どこか憂いのある表情だったので、こちらからも握り返してやると、苦笑して頬をかいた。
「私もあんな風になれるか不安でな。
まだ、この中に子供がいるなんてことも実感がわいてないんだ」
「気にせずともなれるんだろうよ。
母親ってのはそういうものなんだろう」
「確かに。
会ったばかりの夕にはあんなにしっかりした強さはなかった」
「そういうことだ。
不安がることはない。
なんだったら俺達も優秀な医者も近場にいるしな」
「あぁ、期待しているぞ」
その言葉に答える代わりに真巳を抱き寄せる。
甘えるように頭を擦りつける普段とは違う様子に驚きながら、しばらくそうしていた。
増えてきた大切なものを守り抜くと決意しながら。
こんな程度で育児っていうなと怒られそう。
でも、副題の熟語がそろそろ思いつかなくなってきてるんで勘弁してください。
それと、18禁小説を真巳編だけですが公開してみました。
本当は真巳、夕、恋まで書き終わって公開する予定でしたが、何年かかるか分からないので……。
二次創作のオリキャラ18禁小説って本当に自己満でしかないんですが、もし仮にこの小説のファンがいたら読んでいただいて、主人公の絶倫っぷりと、ヒロインが惚れ込む様子なんかを補足してもらえたら幸いです。




