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殺し屋、相談

遅くなりましたm(_ _)m



半年以上かけて七話くらい書きためる予定でしたが、反対意見が出たのでひとまず更新します。


二週間おそいですが、明けましておめでとうございます


董卓に関する報告から一月後、俺の前にはオレンジ色の髪をしたしまりのない笑みを浮かべる女と、チョコミントアイスみたいな髪色で変な帽子をかぶった少女がいた。


そしてオレンジは簡雍、チョコミントは陳宮……らしい。


どちらも使者として母との面会を目指してここ、徐州の役場にきていた。


それなのに俺と会っているのは母が病気で倒れたため、二人の応対を任されたからだ。


一応近場にいる役人、真巳や糜姉妹、陳登、曹豹のおっさんなどを控えさせているので、大きな間違いを起こすことはないだろう。


厄介な用件じゃなければありがたいのだが、果たしてどうなるか。



「陶徐州の嫡男、東海郡太守を任されている陶伯陽だ。


此度は陶徐州が病で倒れたため、代役として私が来た。


まずは用件を聞こう」


「それじゃあ手短に済まさせてもらうわ。


うちらの御主人さ……あぁっと天の御遣い、北郷一刀の率いる義勇軍三千と」


「呂布殿率いる三千、計六千の軍を受け入れてほしいのです」


「受け入れる?


天の御遣いは公孫賛の客将で、呂布軍は洛陽から北へ脱出したと聞いたが」


「随分と情報通じゃねぇ。


そう、うちらは公孫賛の客将でな、その味方を作るため、つまり同盟の打診も込みでここにきたんよ。


まぁ、一番の理由は天の知識で徐州に大変なことがあるっていう漠然としたもんじゃけどね。


正直呂布軍を連れてくるのは誤算じゃったけど」


「それはねねの台詞ですぞ。


ねね達は董卓様に何かあったら陶徐州を頼れと言われていたので、孟津から船で下って一路青州に向かったのです。


そうしたら突然、河口付近で江賊に襲われてしまい、呂布殿が撃退しているところに天の御遣いが加勢に現れ、そのまま合流することになったのですよ」


「それはなんとも……しかし、よく戦ったばかりの相手と合流できるな」


「董卓様は戦の嫌いな方ですから当然なのです」


「天の国ってのは随分平和ぼけしとるらしいけん、うちらも毒されとんかもな。


いや、もう一人脳天気な劉備とも長年付き合っとるし、うちは前からかもしれん。


ともかくまぁ、うちらの主は二人とも戦が無くなりゃあ良いと思っとるから進んでは戦わんよ」


「なるほどな」



どうやらそうとう厄介な用件のようだ。


何だよ六千の軍って?


こっちは徐州全域で四万いくかいかないかくらいだぞ?


徐州は郡が六つあるから一つの郡に六千だ。


さらにそれを分けて県に配置するんだから、六千なんて数は地雷にしかならない。


呂布軍と天の御遣いを分けて配置するにしてもだ。


徐州の軍だって俺や狛、猿、曹豹のおっさんが懸命に鍛えているが、このどちらかを相手にするとなると二倍でも不安なところだ。


いや、臧覇は呂布を撃退できるほどの戦上手だったな。


もしかしたら狛ならいけるかもしれない。


ただ、個人の武力で対抗できそうもないので、籠城戦に限ることになる。


呂布、関羽、張飛なんていう化け物と正面から戦えるわけがないからな。


城の堀をもっと深くするべきかもしれない。


まぁ、乗っ取られたら自分で自分の首をしめることになるのだが……。


とにかく受け入れはかなり厳しい。


歴史みたいに小沛に押し込むか。


流石に六千は無理だからもう一つ……そうだな。


曹操に取られることになる東海郡の郯県にしとこう。


どちらも前線基地として重要な場所だ。


その武力を有効活用させてもらわないとな。


けどまぁこれは要相談だろう。


独断で決めるには厳しい話だ。


戦嫌いが本当だったとしても周りがどうするかは予測できないからな。


それに天の御遣いが徐州で大変な事が起こると言っていたというのも気がかりだ。


徐州で大変な事と言うと曹操の大虐殺だが、歴史ならその前に袁紹が韓馥から冀州を奪ったり、青州黄巾党の蜂起とか色々別の州でおこってたはずだ。


それを徐州に限定する時点で変だろ。


まぁ、劉備と徐州は関係が深いから天の御遣いってのがそれを知っていたらこっちに……って待てよ。


てことは天の御遣いは母に徐州を譲って貰うためにくるんじゃないか?


だとしたら早々に手を打たなきゃならないが、俺みたいに転生した存在でもない限りそんなこと知らないよな。


この時代、占いも本気で信じられる物だったから、占いでもしてそんなこと思ったとかそんな感じだろ。


あいつの出現も占い師が預言してたみたいだしな。


まぁ、一応友好的な勢力だから疑ってかかるのは止めておこう。


万が一を考えれば、河口での襲撃の時に天の御遣いと劉備には死んでもらいたかったが、仕方ない。


なんだったら後で本人に直接聞いてみるか。




「話は分かった。


事が事ゆえ暫く時間をもらいたい。


その間は軍を東海郡に駐屯してくれ。


兵糧が足りないなら炊き出しも行わせる。


ただ、法に触れるようなことをしたものは、此方で裁くからそのつもりで」

  

「了解じゃ。


兵糧はもう暫く持ちそうやから、炊き出しの必要はないけん、ありがたく土地だけ使わせてもらうわ。


軍規も厳しく守らしとるから機会はないと思うけど、もしもの時は頼むな」


「あぁ、それと結果を伝える時は此方から使いを出すから、主も連れてきてくれ。


もちろん護衛が何人ついてきても構わない」


「分かったのです」


「それじゃあそろそろ帰って報告するわ」



とりあえずはこれでいいだろう。


二人の背中を見送りながら小さくため息をこぼす。


それにしても簡雍の言葉使いって関西弁というか中四国辺りの方言だよな?


確か後漢の頃はまだ言語の統一があまりできていなくて訛りが強いから、地方が違うだけで会話が難しかったそうだが、幽州出身=あんな方言とかなんだろうか。


でも、前に来た幽州の商人はそんなことなかったよな。


それに母の配下には揚州出身者が多いのに訛ってるやつは見たことがない。


謎だ。


とりあえず、知りようもないし個性だと認識しとけばいいか。


幽州に行く機会があれば調べてみようと思う。


まぁ、そんなことより対策を考えないとな。



「皆の意見を聞きたい。


まずは六千の軍勢を受け入れるかどうか、受け入れるとすればどうするかだ。


もちろんこの案件を相談なしで決めるのは無理だから、意見をまとめるだけだぞ」



ひとまず集めた連中に意見を求める。


最初に前にでたのは真巳だ。



「私は受け入れるべきだと思う。


ここ最近、流民が増えたことで徐々にだが税収も上がっている。


兵糧にも余裕があるし、両方とも先の戦で勇名を馳せた勇猛な軍だ。


傭兵としてはこの上なく役立つだろう」


「私は反対です。


いくら董卓殿と個人的に誼を通じていたとはいえ、呂布軍を受け入れれば我らが徐州にも累が及びかねない。


ここは守り難く肥沃な土地なのですから、敵を進んで作る必要はありません」



そして反対意見は猫こと陳登。


母の軍師的な立ち位置で実際その能力もあるが、豪族としての自分を捨てきれず、母のためというより徐州のためといった意見を言うことが多い。


まぁ、ちゃんと筋も通っているし批判するほどではないんだがな。


それに結果として徐州のためというのは母のためになることが基本だ。


今回の意見も正論だしな。



「わ、私はその……呂布軍が他勢力に渡るほうが危険だと思います」


「確かにそうですね。


あの武力が他勢力に渡るほうが連合を組まれるより、短期的危険に繋がるでしょう。


それに天の御遣いもおりますし、幽州の軍権を一手に引き受けている公孫賛との盟約も行える。


利の方が大きいと思います」



そこに麋姉妹が反論を放り込んだ。


姉妹が、というより口下手な夕に変わり、麋竺がほとんど言ったな。


まぁ、それはさておきこの意見は陳登の意見の穴をついている。


呂布を抱え込む利は何も武力だけじゃない。


未来の強敵を作らずに済むのだ。


歴史では袁紹が黒山賊の討伐に呂布を利用して多大な戦果をあげた。


もし、今呂布軍を放り出せばこっちが黒山賊になりかねない。


つまりこの問題は、内に爆発するかも分からない爆弾を置くか、外にいつこちらを向くか分からない戦車を放置するかの違いだ。


俺としてはまだ対処できそうな爆弾の方がいい。


というか元々抱え込む気満々だったから、大反対されない限りそうするんだがな。


まぁ、このまま行けば受け入れることになるだろう。



「だいたいどちらも意見はそのあたりだろうな。


それじゃあ賛成派の人間は具体案を言え。


どこにどう配置するか、食糧はどうするか、配下の扱い方。


だいたいそこら辺の事を言ってくれたらいい。


反対派は粗探ししてそこを指摘してくれ。


ちなみに俺は賛成で、天の御遣いを小沛、呂布軍を郯にでも駐屯させるべきだと思う。


食糧は最近余裕もでてきているから支給してもいいが、主に軍屯させる方針でいこう。


配下はどちらからも文官を主に二、三人預かり、こちらからも二人ほど人を送る。


こんな感じでどうだろうか?」



早速自分の考えを提示してみる。


すると猫がため息をつき、真巳が笑みをうかべた。


疑問に思うのとほぼ同時に



「そこまで考えているのであればもういいです。


ただ、軍屯しても収穫までは時間がかかるので、最低限の援助はすべきでしょう」


「東海郡にも兵糧の備蓄はあるから十分可能だな。


それはそうと文官を預かり、人を送り込むというのは人質と監視だと理解してもいいのだろう?」



と、理由を言ってくれる。


猫は何を言っても俺の考えが変わらないと気付き、真巳はこの若干卑怯な方法を考えつく所に共感したに違いない。


質問には首を縦に動かすことで答える。


ちなみに人質という言葉で曹豹のおっさんが眉をぴくりと動かしていたのもその裏付けだ。


このおっさんはネズミ顔の強いものに靡きそうな見た目によらず武人気質で、卑怯卑劣を嫌う。


まぁ、上からの命令には逆らわないし、元々寡黙で反論もしないから命令すれば関係ない。


基本軍議では置物である。


今回も置物に徹するようだし、無視を決め込む。


というか猫がこれ以上反論しないならこれで終わりか。



「他に意見がないなら報告しに行くがどうだ?」


「はい、特に無いです」


「だ、そうだ。早く行ってこい」


「あぁ、分かった。それじゃあ解散してくれ」



やはり終わりだったので解散を告げさっさと出ていく。


現在母は華陀に看てもらいやすくするため、華陀の病院もどきが近くにある東海郡の役場で眠っている。


ここから二十分歩けば着く距離だ。


まぁ、早く着いても悪いことは何もないので、走って向かう。


やはり戦略的な見方をするのは母の方が上手だから、俺の考えで大丈夫か早く聞きたいしな。


後を継ぐためにはもっと経験を積んで頑張っていかないとだめだろう。


前世じゃ政治なんか一切関わってこなかったんだから当たり前ではあるが、経験は皆無だ。


これから徐州を譲られるまでには為政者の端くれにはなりたいところだな。


幸い優秀な配下はいるので、俺が完璧になる必要はない。


ある程度の案件を自分で処理できるくらいの経験をこれから母の元で学べばいいのだ。


母が尊敬できる人間で本当に良かった。


歴史みたいに劉備や呂布に渡してたまるか


そう改めて考えたところで部屋につく。


扉を開けてみるとちょうど部屋には、診察を終えたのか出ていく準備をしている華陀と、母と話している妹たちがいた。


華陀を捕まえて話を聞いて見ると母の様態は風邪をひいただけでさほど悪いわけじゃないが、歳のこともあってこじらせるとやばいから、暫くは安静にしておいたほうが良いらしい。



「そうか、止めて悪かったな。


今後もよろしく頼む」


「あぁ、頼まれずとも駆けつけてやる。


青葉のおかげで弟子も増えているしな。


では、まだ回診があるから行くよ」



説明の後軽く言葉を交わして華陀が出ていく。


病院もどきも軌道に乗り始めて忙しいようだ。


弟子がさっさとものになれば良いんだが、そう簡単にもいかないようで、基本的に華陀が動き回る間に弟子は華陀箸の医学書を読み暗記する日々。


それを覚えきると今度は仕事に連れて行ってもらえて技をみて盗むのだそうだ。


何年かかるか見当もつかない。


だが、進んだ医療は国の支えにきっとなるはず。


今から育てておいて損は無いだろう。


なるべく早い発展を願いつつ、華陀を見送る。


さて、と振り向いた所で寝台から上体を起こした母と目があった。



「使者の件、私の一存で決めるには事が大きすぎると思いご報告にあがりました。


お身体の方は大丈夫ですか?」



すぐさま用件と挨拶をする。


それにここ最近白髪や皺が目立ち始め、老いを感じさせる母は少し悲しそうな顔になるが



「あぁ、体調はもう心配ない。


それでは報告を聞こうか」



と、いつもと変わらぬ声で先を促した。


悲しそうな顔の原因はこの事務的な喋り方だろう。


母に対して口調が他人行儀なのは前世の記憶があるせいなんだろうが、むしろ儒教が主流のこの時代なら問題ないはずだ。


まぁ、妹たちは普通に話しているのでよりこの他人行儀が際立つのだと思う。


それで若干の罪悪感を感じるが、もう癖として定着しているのだから諦める。


引き続き事務的な口調で先程話し合った結果を全て報告する。


妹たちは親子の会話に仕事を持ち込まれ、居心地の悪そうなしかし、興味津々と言った風に話を盗み聞きしている。


少し気になるが機密情報でもないので放っておいた


今後の訓練にもなるだろうしな。


そうして報告を終えると母は瞑目して思案に耽り、言葉と紅葉がこそこそと自分達の考えを相談しあう。


そんな光景に家族も良いものだな、としみじみ思い、自分が父になったことに改めて感動していると



「伯陽、私も考えてみたのだが、徐州を天の御遣いに譲るというのはどうだろう」



母がそんなことを言い、俺の感動は消え去った。




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