ラムル村の娘・ダリア
セフィリアとダリアの出会いです。ダリア視点で描きます。
私の名前は、ダリア。普段は言わないのだが必要な場合は、ダリア・ルル、と名乗る場合があるそうだ。
私のお父さんは、ラムル村の村長でいつも忙しそうだ。三人の兄は、そんな父と共に畑へと出掛け、二人の姉は、同年代の女の子たちと色々な事をしている。
そして一番末っ子の私は、年下たちの子守り。
村の中には、私と同年代の子はいない。六歳になる私はいつもそれより小さい子どもたちと一緒に扱われる。
別にお姉さんになりたいわけじゃないけど、対等に話したい。一緒に互いに話が出来る相手が欲しい。私はそんな思いに答えるかのように一人の女の子が現れました。
「ダリア。こちらは、領主様の娘のセフィリア様だよ。仲良くするんだぞ」
「はじめまして、セフィリア・ジルコニアです」
「わ、私、ダリア、ダリア・ルル、です」
驚いた。あまりに綺麗で柔らかそうな金髪と白い肌に圧倒されてしまって言葉が上手く出なかった。
「ダリアちゃん、私とお友達になってくれるかな?」
「は、はい、セフィリア様」
相手は、貴族。対等な立場、話相手は望めない。少しどもりながらも丁寧に答えたら、なぜかセフィリア様は不満そうな顔をする。
「様はつけないで、ダリアちゃん。言いづらいでしょ?」
「でも、領主様の娘だし」
「でも、お友達よ。お友達同士で様付けはなしよ」
「それでも……」
「じゃあ、愛称で呼ぶの。呼びやすい呼び方」
「それじゃあ、フィリア、ちゃん」
その瞬間、ぱっと表情が明るく、そして頬が赤くなる。嬉しそうに、でもむず痒そうにしていてとても親しみが湧く。
「わ、私、初めての友達に、あだ名で呼ばれちゃった」
可愛らしいフィリアちゃんは、恥ずかしそうにはにかむ。そして自分と同じ対等な子がいなかったことを知る。
「ねえ、あっちに行こう。お父様たちがお話している間に村を見せて」
「分かった。あっちが畑で、あっちが山、危ないから一人じゃ入っちゃ駄目だって、こっちは牛さんと豚さん、あっちの建物には、鶏さんがいるの」
「そうなんだ。他にも、野菜は何を作っているの?」
「人参や大豆を作ってるよ。毎年別の場所に植えるんだって。あそこの空き地は、去年は小麦だったよ」
それから私の話を食い入るように聞くフィリアちゃん。今までこんな質問されたことが無かったので、嬉しくなり、堪えられる質問は答える。逆に私もフィリアちゃんに何をしているのか尋ねれば、いつもは本を読んでいるようだ。私は、文字が読めないし、本は基本貴重品だから読んだ事が無い、と言ったらいくつもの童話を話してくれた。
お姫様が王子様のキスで幸せになるお話、カエルになった王子様が元に戻りお姫様と幸せになるお話、悪い魔法使いを倒す双子のお話、他にもいっぱいのお話を教わった。
私は、お父さんに魔法は危ない物。という風に教わっていたけど、フィリアちゃんのお話は、魔法だ。最後は幸せになっている。きっと、フィリアちゃんは、幸せの魔法を使えるんだ。だって私をこんなに楽しい気持ちにさせてくれるのだから。
そうして、時間があっという間に過ぎた。
「フィリアちゃん! 行かないで」
頭では分かっているのだが、友達の離れるのは嫌だ。と泣いて困らせてしまった。お父さんも領主様も苦笑いを浮かべている。
「大丈夫、大丈夫だよ、ダリアちゃん。私はまたここに来る。大丈夫。お父様が来たときお手紙を渡してくれれば、私も返事を返すわ」
「私、文字書けない! 無理だよ」
「大丈夫。少しずつお勉強すれば、いつかできる。お手紙で楽しいことを書いて、それを読めばきっと上手になる」
フィリアちゃんが根気強く説得してくる。手紙を頻繁に書く、一緒に便せんも同封する。そう言って私を少しずつ納得させていく。
「うん。分かった。フィリアちゃんのお話読めるように頑張る」
「うん、ダリアちゃんは、頑張り屋さんだから出来るわ」
そう言って頭を撫でてくれる。気持ち良くて目を細める。
ああ、また幸せになる。
それから、フィリアちゃんと領主様、お付きの騎士様たちは、馬車にいくつもの麻袋を積んで、去っていく。私は、それをいつまでも見送った。
お手紙書けるように頑張ろう。村のオババならもしかしたら読めるかもしれない。
思いつきでお友達のエピソードを書いてしまいました。序章が長くなってしまいます。