表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理論屋転生記  作者: アロハ座長
序章
4/53

セフィリア嬢の一日

精神年齢二十代後半だが、五歳のセフィリア。

彼女が現代知識を伝えても信じて貰えないと考えたので、説明するため実験、資料集めの日々。

 

 私の朝は、早い。

 毎朝、侍女の誰かが定時に起こしてくれる。それと共に目を覚まし、着替えを済ませ、食事前に家庭菜園へと向かう。

 春先に種をまいた菜園は、夏直前の現在伸び盛りを迎えていた。

 家庭菜園で植えた植物は、トマト。別に自分が食べたい訳ではなく、トマトの成長記録を取るために行っているのだ。

 菜園には、煉瓦によって幾つかのブロックで仕切られている。それぞれの土には、全く別の物を混ぜ込んでいる。

 一つには、キリコの作った有機肥料(ただの野菜の皮などの生ごみ)を使用した畑。宗教的な物で畑で採れた恵みは、天ではなく地に帰す、だそうだ。そういうことで城の一角の穴に捨てられていた物を貰った。

 最初、これを見つけた私を見て慌てて近付かないように言って来るのだが、この生ごみ肥料の利用価値を知っている私は、引くわけにはいかなかった。

 粘り強い説得を繰り返し、服が汚れても臭いが付いても構わない事を告げ、家庭菜園横に生ごみを捨てる穴を移設。なんとしても貰い受けたことに成功した。

 一つには、もっとも近い農村の森の土。お父様に無理に言って、着いて行って見つけた森の土は、案の定、柔らかくふわふわな土。植物の葉や枝、動植物の死骸などが微生物や虫などの働きによって分解された腐葉土は、養分を吸い尽くされて不作の続ける畑の土と交換すれば、生育に大いに役立つだろう。

 他には、竈の灰、酪農から貰った鶏糞、そしてそれらを全て混ぜたパターンと全く何もしない畑。数種類のパターンの成長を今確認している。


「うん。大きくなっている。一番大きいのは全部混ぜたものだね。お母様とお父様の驚く顔が早くみたいわ」


 ふふふっ、と可愛らしく笑ってしまう。大分女の子が板に着いてきたみたいだ。


「セフィリア様、こちらにいらしたのですか。トマトの木も大分背丈が高くなりましたね」

「うん、ジーク。トマトの背の高さを測って貰える」

「分かりました。ですが後で測りましょう。既に朝食の席で奥様や侍女たちがお待ちですよ」

「は~い」


 ジークと二人でトマトに水を与える。流石に実験のために用意したトマト畑は子ども一人では手に負えない。だが、侍女たちは嬉々として私の菜園を手伝ってくれるので苦労は殆どない。

 水やりを終え、私達は食卓へと向かう。既に集まった皆は、私を見つけてほほ笑んでくれる。


「お母様、遅くなりました」

「セフィリア、またトマト? 大好きなのね。お父様みたいな真っ赤な瞳を持っているからかしら」

「からかわないでください。お母様」


 そう言って私達は、全員で食事を取る。これがジルコニア家の風景。庶民と貴族の距離が近いために見れる珍しい光景。

 料理は、酪農、畜産、農業が中心の地域らしくバランスの良い食事が並んでいる。ソーセージ、チーズ、牛乳、ヨーグルト、パン、人参……と一人分の食事。全員残さないためだ。だって、領民の努力の結晶を捨てるのなら最初から盛らない。

 食べられる量を食べ、食べられない量は盛らない、これは家訓のようなものだ。

 まあ他の貴族たちはどうだかは知らないが。


「大地の恵みに感謝を、さあ、食べましょう」


 お母様の一言で皆が楽しく談笑しながら食べ始める。今日の仕事の話、家族の話、街で見たことの事、領主であるお父様の活躍、お母様の結婚前の生活、などを聞きながらの生活は毎日楽しみだ。


「お母様、お父様はまたお出かけになられたの?」

「そうよ。今度は三日ほど遠くの村に行って畑の様子を見ているの」

「そうですの」


 敬愛し、尊敬するお父様と会えないのは寂しい。そしてそれと同時に、私にも何か他に出来ないことはないか再び考えることにした。


 目の前の料理を見ても出来ることは有る。まずは、料理の内容――創意工夫の跡が無いシンプルさ、周囲の食事は似た感じ。

 王都の貴族たちは、家畜の丸焼きなどという豪快で無駄な食べ方をしている程に料理に関して無頓着だ。塩はある、胡椒はある、なのにここには他の調味料が無いのだ。豆があるのだから、味噌や醤油が欲しくなるのは、日本人だったので仕方が無い。

 食べ物は、基本的に薄味か塩味が多い。つまり甘い味と辛い味が少ない。

 理由としては、砂糖と唐辛子などのスパイスが貴重品ということだ。いつか、砂糖黍や唐辛子を栽培し、砂糖と唐辛子を流通させて食事を豊かにしたい。


「御馳走様でした」


 私は、その考えをすぐに部屋に帰って貰った日誌に、詳細を、誰にも分からないように日本語で書き遺す。ちょっとしたスパイ気分を味わえて楽しい。

 お父様やジークフル達も時々理解できない文字や言葉を使って会話していることから情報管理のシステムはしっかりして居るだろうことが予想できた、そこからヒントを得た遊びだ。

 午前中はジークフルと一緒に菜園の記録計測とお世話、午後は書斎で本を読む。最近では、辞書を開く機会が減ってきた。

 そのサイクルが私の日常。

 ああ、忙しく充実した毎日。私が領主のお父様と一緒にこの領地を巡る日が来るのが待ち遠しい。

短いです。ごめんなさい。ノリと勢いだけで書き上げています。プロットはあるんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ