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理論屋転生記  作者: アロハ座長
第Ⅱ部
36/53

東との相対

えーっと、前回。乙女の生理話をやりました。はい、冒険です。冒険をしてみました。案の定、多方面、多数の方から指摘頂きました。

 良い訳させてください。私は、想像もしくは妄想で書いております。事前知識が足りなかった事をお詫びします。なので、大幅に改編しました、編集しました。


 続いて、遅れての感想返しで『ラーメンの麺のこしは冠水を使っているから出来るんであって卵だから出来ないぞ』と言う物です。はい、なので、なんちゃってラーメン。もしくは、野菜ス―プに浸けたパスタだと思ってください。これも予備知識が足りずに申し訳ありません。

 では本編をごゆっくりと。


「久しぶりね。二年ぶりになるかしら」

「そうね。でもセフィリアは、社交界でランドルス侯爵とキュピルにあったのでしょう?」

「ええ、ほんの数ヶ月前ですけど」


 私達は、二台の馬車でランドルス侯爵領の港町・エラネトへと向かっている。一台目に、私、お母様、キリコの三人。二台目には、ジーク、トレイル先生、それと若手の執事が一人。それを御者が馬を操り、周囲を数人の騎士が囲む。

 男女で馬車を分かれているのは、お母様やキリコが私を男性に不用意に近づけさせないためらしい。なんでも、雰囲気が少し変わったらしいと、全く分からない。それに護衛の騎士も普段より多い。

 理由は先の通り、お母様とキリコの采配だ。もうひとつは、今から向かう理由がそうさせる。


 ランドルス侯爵の後ろ盾を得るための接触。

 これは前回のような個人的な立食会とは違い、公の仕事。記録に残り、この規模によってその貴族の本気の度合いや軍事力などを表す一種のステータスとなっているようだ。

 騎士が多ければ、軍事力は強く、使用人が多ければ、豊か。連れてくる腹心が多いほど、本気。と取られる。

 現状、騎士。他の領から見れば少なく。使用人と腹心が重複しているので、本気とは見られないだろう。それでもランドルス侯爵の場合は、こちらの内情を多少なりとも知っているのでそう言った色眼鏡は無い事を期待しよう。


 私個人は無駄な着飾りは好きではないのだけれど、これも練習だと諭されてしまう。


 馬車の旅は、長時間では無いがお尻とお腹に響く。今回の馬車の旅に幾つか思う所があった。

 前回の旅では気がつかなかったが、舗装された石畳でも意外に響くのだ。お尻の下にクッションでも欲しくなるほどに。これは商人のメペラ様やパライカ様の言う衝撃もこの部類なのだろうと数年前に頂いた進言を改めて吟味する。

 それと馬車の耐久度の話を聞いた。馬車の車軸や車輪の接合部は、はめ込み式でその隙間に楔を打ち込む形らしいのだが、それもふとしたきっかけで外れてしまう。またあまりに無茶な組み方をすれば、車軸の木自体が折れたり歪んだりするらしい。つまり、馬車自体がまだ改良の余地があるのだ。


 考え付いたのは、金属製の車軸と車輪。そしてボルトとナットによる強固な固定。車輪には衝撃吸収のゴム。そして馬車全体には、これまた衝撃吸収のバネを仕込むことで安定性と耐久性を実現すれば良いと考えている。経費は嵩むだろう。これはまた保留という事にしよう。


 だがこの考えは、意外と役に立った。そう、お尻の痛みを紛らわす事に。そうやって気を紛らわしている内に、私達はランドルス侯爵の城へと辿り着いた。


「ようこそいらっしゃいました、セフィリア様。ランドルス侯爵様がお待ちです」


 侍女の一人が、無表情で淡々と私とキリコの二人をランドルス侯爵の元へと案内し、残りは全て客間へと案内する。

 何日掛かるか分からない交渉。

 最悪、一か月を予定して領内の仕事を任せてある。それ以上になると、春の種まきの季節になり、冬の時期は終わる。もっとも理想的なのは移動を抜いて、二週間以内で話を纏め上げることだ。


「失礼します。モラト・リリフィム領のセフィリア・ジルコニア様をお連れしました」

「ああ、入れてくれ」

「失礼します」


 私やキリコが礼をして入る。

 執務室らしいこの部屋は、中央に長テーブルが置かれ左右に四人程が座ってもゆったり出来そうな革張りのソファー。

 その奥では、書類を左右に置き、右から左に流すランドルス侯爵が視線をこちらに向けている。


「すまない。今、キリの良い所で終えよう。座って待っていてくれ」


 その言葉を受けて私達は恭しく礼を取り、客用のソファーに腰を掛ける。案内してくれた侍女がこちらにお茶を入れてくれる。

 それから少しランドルス侯爵の様子を眺める。小声で、納税、軍、訓練、などという単語が聞こえたので将軍職関係の話なのだろうと予想をつける。

 書類の区切れが良いのか、羽ペンを置き、耳打ちする侍女の話に頷いている。その後、こちらをちらりと見るので視線が重なる。大の大人にしっかり見られると結構萎縮してしまう物で背筋が伸びる。


「待たせて申し訳ない、セフィリア嬢。書簡は届いている。交易についての話し合いだな」

「はい。とは言ってもこちらが送るのは今までと同じような作物ばかりで恐縮なのですが……」

「すると前回のような『ゲーム』や『料理』と言った考えを売ってくると考えても良いのか? それを特許化して利益を上げる事は可能だが、並大抵ではこの貿易の町を満足させられないぞ」


 普段の気の良い大人と言う雰囲気は無い。どこか言葉に圧力のようなものを感じる。それでも私はランドルス侯爵を頷かせるだけの自信があった。


「私たちが提示するのは、こちらです」


 キリコに目配せをして、作成した資料をランドルス侯爵に渡す。


「街道の整備計画です。モラト・リリフィムとこのエラネトを結ぶ道を良くすることで今までよりも早く流通出来るようにする。そして期限の短い生鮮品を流通できるようにするのが表の目的です」

「利点は分かる。こちらも商業圏が広がればそれだけ利益も得られる。だが現在の街道はそこそこ流通があるために他の街道より良い。また仮に整備したとして輸送費がそれに見合うかどうかだ。それにそんなに慌てて売るよりも保存の利く干物やドライフードにすれば、保存期限も延びる。

 街道の整備の必要性は感じられないが」

「それはあくまで表向きの利用です」


 あっけらかんと言い放てば、ランドルス侯爵の後で待機している侍女が目を見開く。対するランドルス侯爵は、黙って次のページを捲る。


「真の目的は、ランドルス侯爵の持つ軍事力を利用です」

「それが俺の軍の魔法兵の一般利用か?」


 そうだ。目的は、将軍職のランドルス侯爵の保持する魔法兵を一般利用する事だ。私が魔法兵を持てないならば、持っている貴族に借り入れるしかない。


「氷を作れる者が居れば、生鮮品を冷やして傷みを遅くすることが出来ます。そうなれば、商業圏も広がります。また地の魔法で街道整備することは、魔法の一般化の試験的な行為です」

「……俺がそれを真似したらどうする? 特許とは違い、その手の知識は容易に複製が可能だ。セフィリア嬢は俺の後ろ盾を得られないぞ」

「ですが東の海上将軍様が魔法を一般に広めるという革新的な行動は、新たな風潮になりましょう。私はそれに便乗して、独自の魔法使いの教育組織を立ち上げます」


 あからさまに私を試している。だが視線は、資料の一点に集中している。

 魔法兵の出向に対する対価とでも言うべきか。それは魔法兵全員への食糧供給。これは破格の条件だ。

 通常の街道整備は自前の労働者数に見合うだけの食糧を常に供給しなければいけない。それをモラト・リリフィムが全て持つのだ。

 これは軍人なら分かると思うが、肉体を使う土木作業は、軍事演習の代わりになる。つまり懐を痛めずして、軍事演習が出来るのだ。


「では幾つか聞くが、大凡半年の街道整備にどれだけの期間が掛る?」

「それは分かりません。私自体魔法を使う者を見た事がありません。だからこその試験的な試みなのです」

「俺が出向させるのは、兵役期限が近い地の魔法兵だけだ。そして今はエラネトとモラト・リリフィムの東側の町を繋ぐ一本の街道の整備だ。様子見のためにな」

「はい、ありがとうございます」


 ふぅ~と息を吐き出すランドルス侯爵。私も少し疲れた。まだ後ろ盾とは呼べないが、ある程度の言質は取れた。後はこれからどれだけ太くするか、だ。


「一つ聞くが、魔法を軍事以外に使うとしたらどんなものを思いつくんだ? ぜひとも参考に」

「火の魔法は、鍛冶や製鉄で活躍するでしょう。水の派生である氷は、ものを冷やすので生鮮品と一緒に入れておけば、すぐには腐りません。風は、船の帆に風を当てることで速度を調節できます。土は、街道整備のほかにも、浮遊の魔法で荷物の搬入など。物を浮かせる能力は建築などで活躍するでしょう」

「はぁ~。俺も頭が硬くなったな。炎は、海上戦の主力攻撃であって他の魔法兵は、海では使えないと思っていたが……」


 私も事前に調べて分かったのだが、この世界の軍船には、大砲が無かった。

 船には、技術が詰め込まれている。

 海図に使う紙は未だ羊皮紙。国内で紙を使うのは王都とモラト・リリフィムだけ。

 羅針盤はお粗末。ガラス球に水と針を入れて作るので強度に問題ありで、未だに北極星での方位確認もなされている。

 最後に火薬だが、魔法の弊害か火薬と言う物の必要性が皆無だ。だが出現すれば誰でも爆破の魔法を使えるのと同じになる。この知識だけは、私の頭の中に留めて置くと決めている。必要になれば誰かが流布するだろう。今の時期は、無用な流血を避けるためだ。


「セフィリア嬢。他にも領内を盛り上げる知識はあるだろう? 行商人の話だとモラト・リリフィムは近年稀にみる豊作が続いていると聞く。俺の間諜も調査に入ったが早々に追い出されてしまう。中々の手回しっぷり、何を隠している?」

「気づいていらしたのですね。別に隠す程の物ではないのですが、お父様の作った組織がちゃんと機能していると言うことでしょう」

「ダイナモも厄介な組織を残してくれた。他の領地に潜入する際、モラト・リリフィム経由では行けなくなったんだからな」


 そうぼやくランドルス侯爵。だがその言葉には責める様子は無い。


「領内を盛り上げると言っても私は、不足しているものを補っているだけです。それに領地毎に特色が違うのでなんとも言えません」


 肥料然り、特産品促進の料理然り、農業指導然り。底辺の一次産業を強化している現状だ。お父様が組織を整えてくれた御蔭で役人たちは手足のように自由に動いてくれたことも要因の一つだろう。


「そうだな。俺の領地の特色と言えば、海の幸、交易、塩そんなところだろう」

「思いつかないのであれば、トレイル先生と相談してみるのは如何でしょうか? お酒の肴としては盛り上げるかと思いますよ」

「そうさせて貰おう。あとは……細かい金銭面の話は後日としよう。旅の疲れをゆっくりと癒してくれ」

「そうさせて貰います。あとは、細かい金銭面の話は私ではなくお母様が担当します」

「うむ。お手柔らかにと言っておいてくれないか」

「分かりました。では失礼します」


 そうして、私達は、ランドルス侯爵の侍女に案内され退出した。部屋を出た瞬間、今まで張っていた緊張が解けて少し大きめに息を吐き出す。


「セフィリア様、大丈夫ですか?」

「ありがとう、キリコ。少し緊張しただけですわ。交渉事は私には向かないようですね」


 今まで、商談はお母様、交渉はジークと分業していた弊害か。今度からは慣れる意味を込めて少しずつ交渉事をする必要がありそうだ。


「一度はお休みになってください。食事時には一度起こしますので」

「そうね。焦っても結果は変わらないもの。これから少しずつ両者の関係を強くしていかなきゃいけないものね。少し眠るわ」


 そうして私は大きく清潔なベッドに倒れ込む。案外疲れが溜まっていたのか、泥のように眠ると表現できるほどにすぐに意識が消えていった。



 最近、更新速度が遅くなっております。申し訳ないです。

 えっと今の話から数話に分けて【東のランドルス領編】とでも言いましょうか、そんなものを考えております。小さい子どもの時期である十歳未満は時間軸はかなり早く流れますが、この辺からはゆっくりにしていくつもりです。その分、更新が遅くなるかもしれません。

 それでは、拙い作品ですが生温かい目で見守ってください。

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