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理論屋転生記  作者: アロハ座長
第Ⅱ部
34/53

またまた領主の憂いとファンタジー要素(後編)

今度はトレイル視点。ちょっと会話は遡ってから始めます。えっと、設定が少ないので短いです。

 俺は、セフィリアの執務室の前に居る。二度三度とノックをしたが返事は無い。中では声が聞こえる。ジーク翁かキリコとでも話をしているのか。と思い躊躇うが、一向に他者の声が聞こえない。

 俺は思い切って入ってみる。


「何をしているんだ? セフィリア」


 目の前まで来てやっとこちらに気がついたセフィリア。この城の警備は万全だがもし俺が暗殺者なら危ないではないか。と思う。頼りになるが危なっかしい子ども領主を侍女、執事、騎士一同は、必死で守り支える気持ちは俺にも伝わっている。


「ふぇ? トレイル先生!? なんで居るんですか!?」

「部屋にいると聞いてノックして入ったが、返事が無いので入ってきた。それで、何を書いていたんだ?」

「えっと……趣味ですわ」

「ほう、西側の開拓計画か。 それに河川の増水対策もちゃんと盛り込まれているな」


 それを許可を得て確かめる。

 表情には現さないが、毎度セフィリアの考えには驚かされる。

 どこから得た知識だろう。セメントは確かにある。だが使用する所が小規模の水回りと限られ、滅多なことでは一般の話には聞かない。それを大規模に使うのだ。土塀の補強と水路の確保に。確かに木板で作る物より強度は遥かに高い。まあ、子どもの考えだ、現実性を度外視にした指摘をするか。


 質問には丁寧に、また問題個所はその場で答えを出さずに後日ゆっくりと考えるらしい。


 この計画書の随所に取り入れられている道具や概念は、完全に従来の『治水』とは違う者だ。

 従来の治水が、高所より水を引き込み、不可能ならば低い水場から運ぶなり井戸を掘る。と言うものならば、これは常に水を循環させて生活用水と排水を分離する考えだ。余程の事が無い限り、水が不足しない。それこそ森の全滅という事態だ。


 これは、学術院で専門に扱う人間が研究すべき理論だ。それをたった一人で行いこの完成度の高さ。それこそ、一領主の行う事業じゃない。国主導の改革事業に当たる。


 もっともコスト面が膨大だ。魔法兵の出兵を川幅拡張などアホらしい。だが子どもの計画夢は持たせた方が良い。


「やるには広大過ぎる。せめて魔法兵を利用した方が良いな」

「魔法兵? それは、軍盤の駒の?」

「ああ、主に陣と専守防衛に優れた土の魔法兵が居れば、川幅拡張はかなり楽になるはずだ。その場合、どこかの余剰魔法兵を金銭による借り入れをすれば良いと…「せ、先生! ちょっと待って下さい!」……うん? どうした?」


 どうしてそんなに慌てたのか俺には分からない。だが、すぐに聞いた言葉に俺自身も珍しく思考が止まる。


 ……魔法を知らない? そんな馬鹿な


 子どもの童話にだって出てくるのだ。それにダイナモの書斎には魔法兵に関する記述の本があるはずだ。だが考えれば情操教育上良くない物も含まれているは確かだ。

 俺はセフィリアに魔法使いの詳しい歴史や身売りの最悪の顛末を意図的に省いた。

 なぜなら少女に話す内容じゃない。魔法使いの古い歴史は迫害の歴史。そこから兵力としての歴史。つまり、犯され殺される歴史から犯し殺す歴史になったのだ。平和のへの字もない。ただ外面だけを教える。

 そうして帰ってきた言葉に、耳を疑う。


「なぜ、魔法兵ですか? 魔法使いでも良いですが。それになんだか戦力の話で血生臭いです」

「魔法使い? 魔法兵は魔法を使うから魔法兵だ。危険な者を戦力と使うのは合理的だと思うが」」

 

 続いてこうこ言う。



「あの、先生? 例えばの話ですが、土は物を浮かせられるのでしたら商人の荷物搬入が出来たり、風によるカマイタチで稲穂の刈り取り、火を扱えるのでしたら工匠と一緒に何かを創作出来るのではないでしょうか?」


 確かに可能だろう。いやむしろそれが普通なのかもしれない。犯す歴史が魔法兵の歴史ならそれ以前の犯された時代が生活に即した使い方をされていた。そう考えられる。

 何故誰も気がつかなかったのだろう。魔法を使う者は全て兵士など可笑しいのに。第一に魔法兵などピンからキリまで存在する。

 それこそ一人一殺も満たない能力だっている。そう言った者を農作業に従事されるなりすればいいのだ。と言いたいのだろう。

 笑ってしまう。歴史が何も知らなかった少女によって一回りしてきたのだ。失われた生産の時代から犯される時代、魔法兵の時代。そして新たな生産の時代。


 だが、それを分かっても人々は感情が理解できない事を知っている。だから、魔法に対する人の感想を飾りっ気なしに伝える。


 次は神法の内容だ。それこそ最初は好奇心の視線を向けてくるが、最後には顔を真っ青にしていた。流石に感情的に説明し過ぎてセフィリアに対する配慮を忘れていた。


 それに後ろめたさを感じ、でも何か落ちつけようと思い、慣れない茶を淹れた。

 自分でも飲んだが、ジーク翁の淹れるものには程遠い。色素だけでて香りと味がまだ出来っていなかった。


 少し沈黙したセフィリアの青い顔は、だいぶ良くなったとはいえ、まだ白い。

 それでもじっとこちらを見てこちらが聞く態勢を待つ。

 それが出来たと同時にセフィリアが自分の考えを語り始めた。


「先生は、魔法をどうお考えなのですか」

 その声は疑問の色を含んでいない。つまり、俺がどのような答えを出してもその答えは変わらないのだ。

「今までは兵力として見ていた。だがセフィリアは違うのだろう?」

「ええ、正直。魔法使いを数人欲しいを思います」


 この時点でセフィリアは、魔法兵という呼び方を忌避したのか、魔法使いと新たな呼び方で呼ぶ。そして俺もそれに倣う。


「どうして魔法使いが欲しいんだ?」

「魔法使いを教師とし、魔法使いを育てます。能力は別に人を殺さない程度で十分で、後は農夫、工匠、建築、荷物搬入とそれぞれに適した仕事について貰います」

「つまり、領民向けの魔法使いの教育機関」


 そうです。と頷くセフィリアだが、俺としてはこれには賛成できない。


「無理だな」

「何故ですか?」

「まずは、講師となる魔法使いだ。魔法兵の出向は大規模に限る。十数人の貸出は無い。仮に軍隊規模で貸出して貰った場合にそれを補うだけの資金は現状ない」

「では、個人でもつ貴族に……」

 

 それには首を振って否定する。別に貴族に頼むのが悪い訳じゃない。


「魔法の一般への浸透は、畏怖の念があって難しい。それに先に浸透している教会が仕事の取り合いをするかもしれない。という考えで反対する可能性がある。後、魔法使いは基本兵力としての考えだ。だから、他領地から見ればモラト・リリフィムが新たな兵力を持ったと見られる。非常に目立つ行為だ」


「……」


 今日の会話は、それで終わった。だが、セフィリアの底の深さはまだまだ見えない。この調子で駄目元でも様々なアイディアを出して貰いたいと内心期待していた。


 だが、後日。

 魔法使い教育機関案と書かれた資料を差し出された。前回の指摘と修正箇所を加えた方針のようなものだ。それに対する本気を見て、手伝いたいという気になる。


 例えこれが問題視されようとも、俺はこのセフィリアの見ている何かを見たくなった。


セフィリアの計画に新たな計画書が加わった。やっと普通にファンタジー要素加えられる下地が出た。

 そろそろ作品タグにR15とか残酷描写あり着けようかな? そうすれば書く事が生々しく出来て、ほのぼのが遠のきそう。ああジレンマ。

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