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理論屋転生記  作者: アロハ座長
第Ⅱ部
25/53

ジルコニア家の目下の心配事

セフィリア九歳の初夏。セフィリア以外のジルコニア家での出来事。



えー、前回に引き続き、感想への返答。世界観補足のコーナーです。

質問『理論は農業以外にあるでしょうに……』

はい、農業以外にあります。工業、商業、社会福祉、教育、道徳、公共事業等あります。ですが初期設定が『国の食糧庫』と呼ばれるとしたので、農業の生産性を先に上げているだけです。


では、本編お楽しみください


 私達は、午後のお茶の時間を親子の語らいの時間として今、一つの小瓶を間に置いて話している。



「まぁ、蜂蜜とは違う甘さね。これがメイプルシロップなのね。私は蜂蜜の甘さも好きだけど、メイプルシロップの甘さの方が好みだわ。」

「お母様に気に入って貰えて嬉しいです。メイプルシロップの生産の時期が終わりましたが、来年はもっと早い時期に製造計画を立てて流通させようと思います」

「メペラさんには、製造したメイプルシロップの二割を納品しているから残りは、どういった配分で流通させるの?」



 私は疑問に思った。これだけの甘味料だ。王都方面に流通させれば、物好きな貴族たちが高値で買ってくれるだろう。だが娘のセフィリアは、その考えをあっさりと否定する。



「勿体ないです。ニーレ・ストールの新しいメニューにメイプルシロップを練り込んだ甘いパンなどの朝食メニューをキリコと考案中なんです。それに蜂蜜と類似品のメイプルシロップを同じ販売層にぶつければどちらかが値割れを起こしてしまうわ。元々蜂蜜より安価で作れるのですからあまり利益を優先し過ぎてはいけません」

「つまり、蜂蜜は、貴族向けに。メイプルシロップは領地向けに販売するのね」

「はい、兼ねてからの特産品。これを利用してモラト・リリフィム領内を盛り上げて参りたいと考えております」



 相変わらず頭の回転が速いセフィリアに私は、いつも親ながらに脱帽させられる。でも、次の一言でああ、そう言う理由か。と納得した。



「それに、華やかよりも質素を好むお父様なら、領民にも食べさせたがるでしょう」

「ふふふ、そうね。ダイナモらしく、あなたらしい答えね。でも、あまり無理をしちゃダメよ」

「分かってます。では私は、キリコとも相談して秋の新メニューの開発をして来ます」

「行ってらっしゃい」



 セフィリアが楽しそうにしている後ろ姿に私は親ながらに心配を覚える。


「ねえ、ジーク? 私はセフィリアが心配だわ。六歳から領主をしているから他の子よりも友達が少ないと思うの」


 今まで彫像のように黙っていたジークも私の意見に同意してくれる。



「そうでございますな。ですが北の村で子どもたちと戯れた姿はとても生き生きしておりました。領主として以外のセフィリア様は久しぶりに見ました」

「親としては、あまりに早い一人立ちには寂しい物を感じるわ」

「私もです。かつて、膝に抱きついてきた愛くるしいセフィリア様がここまで立派になられてしまい逆に不安で。周囲に友や仲間と言った者たちが少ないので我々がもし亡くなった後は、孤高の道に進んでしまわれるかもしれませぬ」

「やっぱり学術院には行かせるべきよね。ランドルス侯爵のキュピルも通うために勉学に励んでいるそうだし、そこで知識と友を見つけてくれればいいのですけれど」


 学術院。それは、王都に存在する高等教育機関の通称。正式名称は、王立・アロン学芸技術学院。王国内から様々な秀才が集まり、多種多様な知識を共有し、技術の習得、新たな知識を見つける場所。十三歳から十八歳までの五年間を基礎課程とし、それ以降学術院に残る場合、主に研究開発、技術向上などの最先端を研究していくことになる。まあ、専ら金持ちの貴族や一部の商人が通う学院なのだ。



「ええ、セフィリア様は、領主の仕事をこなしておりますが、学術院には貴族の子どもなどが多く通い、領主になるための講座も開講されております。ですが、入学試験は……」



 王立と言うからには、敷居は高い。歴史、教養、計算の三種類の試験からなるが、中には特殊な入学事例も存在する。



「そこでセフィリアには、少し家庭教師を雇おうと思うの。あの子、ダイナモの書斎の本を読んでいたから歴史は強いはずなのよ。それに、基本的な計算だって大丈夫だと思うの。でも入学試験の計算はもっと高度だから今から学べば遅くない筈だし、そうなると教養だけを専門的に教えるのは……」



 私自身、教養などジルコニア家に嫁ぐまでは農民の娘で侍女だった。貴族式の教養など知るはずもなく、それが意外と重要である。


「ですが、ジルコニア家に招くほどの信頼と教養のある人物は居られますか? また他の貴族は三歳や四歳と言った年齢から貴族式の教養を付けております。そう言った方々に比べてセフィリア様は、ダイナモ様と同じです」

「それに、セフィリアが今更家庭教師を付けるなどと言えばきっと反発するでしょうね。ダイナモの後を追うことに必死になって寄り道を知らない。むしろ寄り道を教えてくれるような人の方が良いと思うのよ」

「信頼のできる貴族の教養を持ちながら、寄り道を教える方ですか? そのように都合の良い人物は

居りませぬぞ」

「一人だけいるのよ。偏屈、変人、無神論者で有名なノレー伯爵の第二子・トレイル・ノレー学士。ダイナモの学術院時代の友人らしいの。最近では、学院の教会派と喧嘩して自由研究の名目で学院を離れているわ」

「……あの方がセフィリア様に良い影響を与えるとは思いませぬ」



 ジークが渋い顔で呟く。まあ、私も同意見だ。だがダイナモが友人として懇意に繋がりを持っていた人物。ダイナモの先見性や人を見る目は確かなので、一応は候補なのだ。



「まあ、一度呼んでみましょう。セフィリアには、家庭教師という事は伏せてダイナモの友人と言うことで。相性が悪ければお断りすれば良いし」

「まあ、奥様がそう言うのでしたら。私は異議をいう権利がございません」

「ありがと、ジーク」



 私は、トレイル・ノレー学士に手紙を書いた。返事が来たのは具体的にこちらに来訪する時期と一言『ダイナモの娘に興味がある。ついでに暇だから』と素っ気ない文字。私は、やっぱりあの愛想のない人物にどう接して良いのか分からなかった。



はい。貴族的には遅いですが、家庭教師の選考が秘密裏に始まりました。

短いですが、投稿しました。

今のところ、セフィリアの友達は、ダリアとキュピルくらいしかいないですね。

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