閑話:秋のお手紙
設定は、第Ⅰ部が終わったあたりで書く予定です。じゃないと、自分自身混乱しそうになります。
ちょっと一休みのお話。ほのぼの成分補充です。
親愛なる私の友達、セフィリアちゃんへ
私は、秋の収穫祭を終えて、友達であるセフィリアちゃんに手紙を書いている。
「今年の収穫祭は、今まで以上に出来の良い野菜や小麦が取れました。これからの短い期間にまた種まきがあります。でも、今年は、小麦がたくさんで、村の備蓄は豊かです」
そうなのだ。二毛作を実施しているこの村では、麦の後に雑穀を撒いて収穫して冬に備える。それが慣習となりつつあったが、今年の小麦は例年になく出来が良い。そのために今年は、白いパンがたくさん食べられそうなのだ。
「後、脱穀機と言うものは本当に便利です。重い棒を振って叩いていたのが嘘のように小麦がバラバラと落ちて子どもでもできるので皆楽しんでやっていました。お父さんたちは、早く仕事が終わったので皆でお酒を飲んでいました」
私は、思う。本当にセフィリアちゃんと出会ってから幸せな事が多い。
私は、村の老人たちに古い神話や薬草の作り方、文字の読み書きと数の数え方を教わって手紙を掛けるほどになった。それが原因で十歳を迎えたら貴族への奉公の話が出たこともあるが、今年の収穫が終わった時お父さんは、これだけ豊かなら行かなくて良いと言ってくれた。
私は、貴族への奉公の話が嫌だった。家族と離れるし、何より良い噂が少ないのだ。だけどセフィリアちゃんの話してくれたお伽噺を胸に、いつかは幸せになれると信じていた。それは意外にも早く私に訪れたのだ。
亡くなったダイナモ様の政策とその意志を継いでくれたセフィリアちゃんには、感謝が尽きない。
「ダリア。お夕飯よ」
「お母さん、今行く」
今年の冬は、家族で美味しいお夕飯がたくさん食べられる。とても幸せだ。
「本当に今年の収穫は凄かったな。実は重たいし、何よりたくさんとれた」
「そうだな。このままの収穫量だったら、作る畑を減らしても生活ができるんじゃないか?」
「ねぇ、お金に余裕があるなら、次の行商が来たら何か買わない?」
お父さんと一番上のお兄ちゃんの話に、新しい物に興味がある二番目のお姉ちゃんが言う。
「いや、そこまで余裕はないな。だけど、来年も同じくらいの収穫だったら、家族一人一人に何か買ってやれるかもしれないな」
「ホントに、やった!」
「あなた、無理な約束はしないでね」
「無理な約束じゃないさ。これもダイナモ様のご加護だよ」
私の家族は冬に向かうのに今年は明るいです。この会話もセフィリアちゃんの手紙に書こうと思った。ああ、また会いたいな。セフィリアちゃんはダイナモ様程外には出てないらしいので、色々と心配もあります。
子ども視点での農家の風景。