彼と彼女のお仕事 中編
謎の地響きの正体とは!?
逃げまどう人々・・・どうなる、日和&銀百合!
「・・・うーん・・・おかしいな・・・」
液晶モニターとパソコンのキーボードを見ながら彼は呟いた。
「・・・なにかが足りない・・・」
その場でうんうんと唸り、しばらくして――――――
「・・・まぁ、いっか」
考えることを放棄した彼は、コントローラーを持つ手に力を込めた。
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一方。
「きゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
「だれかぁっ、アレをとめろぉっっ!!」
逃げまどう人々たちが指差すのは、なんか・・・
大きいロボット?のようなもの。
銀色に光る大型ロボットは、ドリルのついた手を振り回し、走り回っている。
「け、圭介先輩、これなんなの~?」
銀百合と日和を両腕に抱えながら走っていた圭介は、苦々しげに口を開いた。
「・・・僕たちの、探していた人の仕業だよ」
「ふーん・・・なんか、急展開でついていけないよぅ・・・。その人って何者なの?」
日和が迫ってくるロボットを見つつ、問いかける。
「うーん・・・表向きには『超天才エンジニア』って言われてる」
「本当は?」
「・・・『機械いじりの好きな馬鹿』」
まさに、ぴったりかもしれない。と、こうしている間にもロボットは追いかけてくる。
ドゴン、バキン、と物が壊れていく音と、人々の悲鳴が重なり、これは死ぬんじゃないかなーと
銀百合は考えていた。
「ところで、先輩」
「なっ、なっんだいっ・・・?銀・・百合くんっ・・」
2人も抱えて走っている圭介はかなり疲れてきたようだ。
結構楽だったんだけどなー、とか面倒臭がりの銀百合は思いながらも、このままでは倒れてしまいそうなので、とりあえず降ろしてもらった。
「あぁ・・・ありがとう・・・」
「いえ、別に。ところで、他の人たち危ないのでは?」
超級能力者の圭介や、上級能力者の日和や銀百合は、あのロボットを回避することができたとしても、
他の低級能力者たちは・・・下手したら踏まれたりして、死んでしまうのではないか。
しかし、そんな銀百合の心配を吹き飛ばすように圭介は笑った。
「その心配はないよ。・・・ほら」
圭介に言われて見てみると、確かに死んでいるものはおろか、気絶しているものもいない。
こんなに狭い建物の中で死傷者がいないなんて・・・
「ほらほら、皆さん出てー」
気づくと、もう出口の方まで来ていた。圭介が勢いよく扉を開け放つと、どっと人が押し寄せ、
そして出て行った。
「圭介、頼むぞ」
最後にでたおじさんは圭介の方をぽん、と軽くたたいた。
彼は、無言で頷いた。
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「あらららら・・・制御がきかない・・・どうしよ」
ぐわん、ぐわん、と大きく左右に揺れる視界。
彼はなんとなく、困っていた。
大型ロボットの内部。
そのほぼ中央にある空間は、このロボットを操縦する部屋になっている。
操縦席に座っている彼は液晶モニターに視線をうつした。
そこには、
『エラー発生、エラー発生。操縦者、周囲の人は直ちに VB16 から離れてください』
VB16 というのが、このロボットの名前。
しかし彼はそんな文字など見ていなかった。問題は、その後ろ・・・外の様子。
さっきまで大勢いた人たちは避難していたが、残っている人影が3つ。
そして、そのうちの1人が―――――――
「・・・けーすけ」
どうしよ。怒られる。どうしよ。どうしよ。
ゴーグルの奥の目を泳がせて、ようやく出した答えは
「・・・まぁ、いっか」
だった。
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日和と、銀百合、圭介。大型ロボットとその操縦者。
それが今、この部屋にいるメンバーである。
机や照明は全部粉々。部屋にはもうもうと土煙が立ち込めている。
何気なく隣に立つ圭介を見上げた銀百合はぎょっとした。
「・・・・毒殺。刺殺。絞殺。・・・・」
彼の瞳は殺意に濁り、唇からは呪文のように危ない言葉が紡がれている。
「け、圭介先輩・・・?」
声をかけると、さっ、とその異様なオーラは消し飛び、彼は爽やかな笑顔を2人に向けた。
「あぁ、こんなことになってしまって悪いね。ほんと、なんでこんなことに・・・
あぁ、あいつのせいか。あいつのあいつのあいつの・・・・」
またもや黒いオーラ出現。
「圭介くんが壊れちゃったよー・・・」
もはや先輩とも呼ばずに日和が呟く。
ずっと停戦?状態が続くかと思われたとき、
ガシャコン。
ロボットからそんな音が聞こえ、全ての動きを止めた。
「あ、もしかして、電源がおち――――」
ウィィィィィン・・・
「え」
ガゴンッ、バゴンッ、ドガーンッッ!!
爆発音とともにロボットがまた動き出した。目からビームを乱射。
さっきよりたちが悪い。どうやら故障したようだ。
「うわわわっ、銀くん!」
「ひよりっ、こっち!」
危うくビームの餌食になりそうだった日和の腕をひき、助ける銀百合。
「・・・そろそろ、説教でもしようかな」
圭介はそういって、軽く腕を前に突き出した。その手には銃。
「・・・?能力?」
その様子を見て、首を傾げる日和。
圭介の唇が小さく動いた。
「|罪人には罰、咎人には裁きを《The crime to the criminal and the judgment to [toganin]》」
その瞬間。
銃声が響き、視界が真っ白に塗りつぶされた。
次回は、操縦者の身元が判明します!
誤字脱字等ありましたら、教えていただけるとありがたいです!
読んでくださり、ありがとうございました。
次回もお楽しみに!