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エンゼ・エンゼ・エンゼ‼  作者: 角野&カンナキ
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第九話 はちゃめちゃ!エンゼ・トリガー!

エンゼ・トリガー。主に新潟で活躍しているエリートエンゼだ。トリガーは日本でも凄腕の銃使いで確認されているだけでも100丁以上の銃を完璧に使いこなせる。一番得意なのは猟銃だ。トリガー曰く猟銃は丁度いい射程距離で十分な威力が出るので自分に合っているとのこと。新潟にいるエンゼもトリガーのことを慕っている者は多く、トリガーの狙撃テクニックを学びたいと懇願している者は少なくない。しかしトリガーの姿そのものをしっかりと見た者はいない。トリガーは基本的に様々な山に移っては何か月も籠る生活スタイルだ。更にステルススキルが異常なまでに高いため全くと言っていいほど見つからない。姿を見たことがある者は協会と現在は茨城で活躍しているエンゼ・ストライカーしかいない。その他の人物は名前しか聞いたことがないため一部では存在しない架空の人物だと思っている人までいる。そんなトリガーだが彼女は現在新潟にいなかった。今は久しぶりの休暇を取り沖縄に旅行中だった。煌びやかな波の音が響くビーチに水着姿でベンチに寝転がっていた「……」結局のところ山籠もりもいいが海を見るのもいい。海は表面では見えない世界が水の奥底に広がっている。山とは違い穏やかで生命の糸をずっと張り詰める必要もない。海だけは気を楽にできる。誰にも邪魔されないバカンスだった。するとそこに人影が近付く。その人影が自分の前で止まりこちらの様子を伺う。ナンパか何かかと思いずっと無視したがいつまで経ってもその人影はどこかへと行こうとしない。流石に気が散るのでその人物を追い払おうと身体を起こすとその人物はエンゼ・ギルティだった「……カシオス」「あ~!やっぱ雪美ちゃんだ~!久しぶり~♡」トリガーも実は元第零班のメンバーでカシオスとはセックスフレンドだった「お前も来てたのか…」「来てるよ~!」カシオスはトリガーこと大城雪美を抱きしめる。雪美は暑かったので振り払うとカシオスは拗ねたような表情を見せ雪美を見つめる「も~!せっかく久しぶりに会えたのに~!」「もう……あの頃のような関係にはなれないさ…」「別にぃ~?より戻そうなんて思ってないけどぉ~?」雪美は体勢を整えるとサングラスを深くかける「私は疲れたんだ…」カシオスは雪美の脚に手を置きゆっくりと上へと動かしていく「ねぇ~久しぶりに会ったんだし相手してよぉ~?」「……やだ」雪美の膝の上に座ると顎を指で持ち上げる「あの頃のまんまだねぇ~雪美ちゃんは」「あなたもね」軽く口付けすると軽く手を振りどこかへと行ってしまった。唇を腕で拭くとホテルへと戻った。久しぶりに会うカシオスには調子を狂わされる。当時はカシオスに心酔しており心も身体も全てを許していた。何度も身体を重ねることもあったし将来のことも話していた。結婚まで考えていたくらいだ。しかしあの事件でカシオスが失踪してから全てに意欲を失い山に籠り自給自足の道を歩んだ。ぶつけようのない気持ちを全て野生動物にぶつけ肉を食らい吐いた。ずっとそんな生活をしていたものだからカシオスという刺激物に対する耐性が消えていた。ホテルに戻り銃のメンテナンスをしているときもずっとカシオスの感覚が身体にこびりついていた。一方カシオスは国際通りでジャスティスと再会し買い物をしていた「美咲ちゃ~ん!ごめん遅くなっちゃった♡てへっ」「もう心配しましたよ~」カシオスも雪美の感触がまだ残っており唇に残ったほのかな甘さを堪能していた「カシオスさん…?大丈夫ですか?」「ん~?大丈夫大丈夫~」国際通りの中のお店を周りながらお土産を買った。ちんすこうとか変な沖縄のお菓子とかほんと色々。ホテルに戻ると美咲は眠りについてしまった「あららぁ~可愛い子」美咲の頭を撫でベランダに出て海を眺める。普段のストレスだらけの都会とは違うこの光景に帰りたくないとまで思ってしまう。煙草を吸いながら海の音を聞くのはどんなものよりもストレスを減らす。3時間後、美咲は目を覚ましカシオスを探した。部屋にカシオスの姿はなかった。カシオスは雪美とビーチで話していた「誰あの子」「私の同居人でペアの子だよ~」「ふ~ん」「何?嫉妬してるの~?」「いえ……大変そうだなぁって」「も~何それ!」そこに美咲が現れた「カシオスさんこんなところにって……その方は?」「あ~この子はねぇ元第零班の子だよ~」「あぁ……あのエンゼ・トリガーです……たしかジャスティスさんですよね……よろしくお願いします」「あなたがあのトリガーさん何ですか!」雪美は照れくさそうに頷く「はい…まぁそうです」美咲は驚きのあまり声を裏返らせ、目の前に佇む女性をまじまじと見つめた。新潟の生ける伝説、100丁以上の銃を操る凄腕の狙撃手、そして誰もその姿を見たことがないという「幻のエリートエンゼ」。そんな人物がまさか沖縄の夜のビーチで水着の上に薄手のカーディガンを羽織りカシオスと親しげに話しているのだから無理もない。「……有名税というのは、あまり好きじゃないんだがな」雪美はきまり悪そうに視線を逸らし、かけていたサングラスのブリッジを指で少し押し上げた。山に籠り張り詰めた野生の世界で生きてきた彼女にとって美咲のような真っ直ぐで輝かしい「ジャスティス」の光は少し眩しすぎた。「美咲ちゃん、そんなに驚かなくてもいーじゃん。雪美ちゃんはね、こう見えてすっごくシャイなんだから。ね~?」カシオスがいつもの調子で雪美の肩に腕を回そうとする。しかし雪美はまるで気配を読むように一歩引き、それを鮮やかにかわした。「触るなと言ったはずですカシオスさん。……それとジャスティスさん。彼女のことは頼みました」「えっ? あ、はい……?」美咲がキョトンとする。雪美は少しだけ声音を落としかつて自分が全てを捧げそして傷つく原因となった『カシオス』という存在の危うさを目の前の純粋な少女に諭すように言葉を紡いだ。「こいつは……気まぐれで、調子が良くて、人を狂わせる。……だが完全に悪人になりきれるほど強くもない。面倒だろうが隣にいるなら目を離さないことだ」その言葉にはかつて第零班でカシオスを深く愛しその失踪によって深く傷ついた雪美だからこその重い実感がこもっていた。カシオスは一瞬だけ、煙草の煙の向こうで寂しそうな、あるいは全てを見透かしたような複雑な笑みを浮かべたがすぐにいつもの軽いトーンに戻る。「も~、雪美ちゃんったら人を聞き分けない野生動物みたいに言わないでよぉ。私はいつでも美咲ちゃんの一途なパートナーなんだから♡」「……どの口が言うんだか」雪美は小さくため息をつくと美咲に向き直った。「私はもう行く。せっかくのバカンスだ、これ以上、過去の幽霊に調子を狂わされたくない」そう言い残し雪美は波の音に溶けるように音もなくその場から歩き出した。ステルススキルが高い彼女の足取りは砂浜の上であるにもかかわらず、まるで最初からそこに誰もいなかったかのように静かだった。美咲はその背中を唖然と見送っていたが、ふと隣のカシオスを見る。カシオスは遠ざかる雪美の背中をただじっと見つめていた。その瞳には、いつものふざけた色はなくどこか遠い過去を懐かしむような切ない色が混じっているように見えた。「カシオスさん……。トリガーさんと、何かあったんですか?」美咲の問いかけにカシオスはハッと我に返ったように笑みを浮かべ、美咲の頭をぽんぽんと叩いた。「ん~? 何でもないよ~。ちょっと昔一緒に悪いことしてた仲間ってだ~け!さ、美咲ちゃん! 夜の国際通りもう一回ぶらぶらしよ? 美味しいアイス屋さん見つけたんだ~!」いつものカシオスのペース。けれど美咲はカシオスの唇にかすかに残る自分のものではない「ほのかな甘い香り」になんとなく気づかないフリをした。一方夜の浜辺を歩く雪美はホテルの部屋に戻る前に一度だけ立ち止まり夜の海を見つめた。唇に触れたあの感触がまだ消えない。山に籠り野生を喰らい感情を殺して生きてきた数年間がカシオスという劇薬の一吹きで簡単に揺らいでしまう。「……本当に調子が狂う」雪美は胸の奥の燻る想いを振り払うように深く息を吐き出した。沖縄の波の音はどこまでも穏やかで傷ついたエリートの心を静かに優しく包み込んでいた。

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